保守
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政治的保守主義・近代保守主義


思想の歴史

政治思想としての保守主義は、政治的保守主義ないしは近代保守主義と呼ばれ、コモン・ローの法思想を中心として発展してきた。17世紀に、イギリスのエドワード・コークは中世ゲルマン法を継承したコモン・ローの体系を理論化した。18世紀には、バークがコモン・ローの伝統を踏まえて『フランス革命についての省察』という書物を公表し、保守主義を大成した。この書は、フランス革命における恐怖政治に対する批判の書でもある。バークが英国下院で革命の脅威を説いた1790年5月6日が近代保守主義生誕の日とされる。こういった次第でバークは近代保守思想の祖と呼ばれている。

ちなみに、バークは「保守する」という言葉は用いたものの、「保守主義」という用語は使っていない。保守主義という言葉は、シャトーブリアン王政復古の機関紙を、Le Conservateurと名付けたことに由来する。

アメリカでは、コモン・ローの法思想が、ウィリアム・ブラックストンの『イギリス法釈義』を通じて、そのままアメリカの保守主義としてアレクサンダー・ハミルトンら「建国の父」たち(ファウンディング・ファーザーズ)によって継承された。そして、この法思想はアメリカの憲法思想となった。

このように保守主義はもともと英米の政治思想であるが、その影響からか、フランスオランダスペインドイツロシア、そして日本などにも保守思想家が点在する。


思想の特徴

保守主義者たちは、基本的には人間思考に期待しすぎず、「人は過ちを犯すし完全ではない」という前提に立ち、そして謙虚な振るまいをする。さらに、彼らは「先祖たちが試行錯誤しながら獲得してきた知恵が伝統的価値観(慣習、宗教、美徳、道徳、政治体制など)の中に凝縮されている」と考え、この価値観を尊重する。また彼らは、「国家は祖先からの相続財産であるから、現在生きている国民は相続した国家を大切に維持し子孫に相続させる義務がある」と考える。その結果、彼らは過去・現在・未来の歴史的結びつきを重視する。このように保守主義は懐古趣味とは異なる未来志向の要素も含んでいる。また、彼らは「未来を着実に進むためには、歴史から学ばなければならない」と考える。これは、歴史とは先人たちが試行錯誤してきた失敗の積み重ねの宝庫だからだという。

さらに彼らは、「権利も、国家と同様に、先祖が獲得したものであり、先祖から譲り受けたもの、つまり相続財産である」と考える。すなわち、彼らは権利の根拠は相続したことにあると考える。このように、保守主義はただ人間であるということが根拠となって権利が発生すると考える人権思想とは異なる。

また西洋の貴族出身の保守派の多くは、自らを騎士道精神の継承者と自負しているので、共産主義ファシズム、そして国粋主義などの思想に対して、祖先から相続した郷土を踏みにじるものとして反発する。

保守主義は基本的に伝統的価値観を肯定し、過去と現在との歴史的結びつきを重視する。ただし伝統的価値観の内実はさまざまであるため、保守主義者たちがいつどの価値観を保守するととなえるかによって主張の内容が異なってくる。

保守主義者たちは理性を懐疑する。フランス革命で理性主義を掲げたジャコバン派議会を暴走させ、道徳を退廃させ、そして自由を軽視したという過ちが、彼らがそのように懐疑する理由の一つである。同様の過ちはロシア革命など多くの革命にも見られる。

こうして保守主義者たちは伝統擁護や漸進的変革をとなえ、左翼革命を否定的に見る。

日本ドイツイタリアなどの旧枢軸国スペインなどの後進資本主義国では外圧によって伝統的な暮らしや文化などが失われた。そのためにかえって、それらの国では国家への帰依(国粋主義)を求める声が強く起こり、20世紀前半のファシズム全体主義の台頭につながった。現在でも日本の保守主義者の中には戦時中の全体主義国体を評価する者が多い。ただし、戦時中は右翼内部においても国体を強化するための国家革新を唱えた「革新右翼」の動きがあり、そのことが日本において革新およびこれと対をなす保守の概念を混乱させる一因となっている。英仏の貴族や特権階級などを中心とする保守主義は、逆に国粋主義を否定する。

保守主義は、伝統的価値観との親和性が高い農業などの第一次産業にたずさわる人たちが多く住む農村部や、キリスト教などの土着の宗教組織を支持母体とすることが多い。また、資本主義化した社会では大企業資本家も既得権益を持つものとして保守主義を支持する傾向がある。

イラン革命後のイランのようなイスラム法社会では、保守主義とはウラマーなどの宗教的指導者による政治を支持する立場のことを指す。


ハンティントンによる定義

サミュエル・P・ハンティントンによると、保守主義には次の3つの定義がある。
貴族的定義歴史の中の特殊な運動として定義。保守主義は、フランス革命、自由主義、あるいは18世紀の終わりから19世紀前半のブルジョワジー勃興に対する、封建的勢力・貴族階級・地主階級による反動であるとする。この解釈では保守主義は封建主義、地位、そして旧体制と結びつき、中間層、労働者商業主義、産業主義、民主主義自由主義、そして個人主義と対立する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki