蔑称(べっしょう)とは、特定の人物や、特定の特徴をもつ人や物事を蔑んで(馬鹿にして、見下して)呼ぶ言葉である。特に、別に正式名称のある場合の別名をこう呼ぶ。
社会的立場が弱い人に対して使われる蔑称は差別語とされ、排除の対象になることがある。しかし、差別語の排除が過剰である場合、それを言葉狩りという蔑称で揶揄することもある。
社会的立場が平均的ないし強い人に対して使われる蔑称は揶揄として取り扱われる場合が多い。
現代では「お前」は敬称ではないが、親密な相手に使われる場合もある為蔑称とも言い難い。しかし、目上の人や全くの他人に使うと蔑称となる。「貴様」や「てめえ」、「あんた」も同様である。「君」も場合によれば例外ではない。
一般的な蔑称
小僧は年少の僧侶ないし奉公人を指す言葉だが、現在ではもっぱら年少者に対する蔑称として用いられる。呼掛け語として用いられる場合が多い。子供に対する蔑称としては、他に餓鬼(ガキ)・砂利・小娘・こわっぱ・わっかなどがある。
ジジイ、ババアは老年の男女を罵って呼ぶ言葉であり、基本的に蔑称である。また中年の、特に女性にも使われることもあり、場合によっては20代後半でも対象になりうる。丁寧に呼ぶ場合は「おじいさん」「おばあさん」「御老体」を使うとよい。儒教圏に含まれる国々では高齢者を侮辱することはタブーとされている。欧米のメディアにはこのように高齢者をからかう場面が多々見られるが、日本や韓国ではまずありえないといっていいだろう。TBSラジオで毒蝮三太夫が観覧に集まったお年寄りをクソジジイ・クソババア呼ばわりして笑いをとっているのは、生放送の帯番組で20年以上にわたり高齢者に対する想いを参加者と共有してきた土壌があってこそ成立する芸であり余人に真似のできない例外的蔑称用法と理解される。
おっさん、おばはんは中年の男女を罵って呼ぶ言葉である。おじさん・おばさんが正しい言葉であるが、これらも文脈によっては蔑称となるので注意を要する(年齢、年代を指摘することが侮辱にあたることがある)。ただし、「おっさん」は関西圏を中心に、行動がおじさんくさい人に対しても使われる事が多い。また、「大阪のオバチャン」「難波(なにわ)のオバチャン」という場合は「元気がある」、「図太い」ことの代名詞になる。さらには、小中高生が10代後半から20代の人をおじさん・おばさんなどと呼ぶケースさえある。
上記と同じ意味でオヤジ(親父ではない)もあるが、他人の中年女性を「オフクロ」とは呼ばない。「オヤジ」の語が侮蔑の意を帯びだしたのは1990年代以降のことであり、それ以前は「おっさん」が1990年代以降の「オヤジ」に相当する侮蔑表現だった。オヤジの前に侮蔑表現をつけた「変態オヤジ」などの複合語はそれ以前から侮蔑語として使われていたが、単独での使用が侮蔑表現となることはかつてはなかった。
自分は物事を良く知っていると錯覚したものが他者に対して、「よく勉強してください」等と言う場合、遠回しに「お前はどうせこんな事も分からない馬鹿(低脳)なんだろうが。」と言っているのと同義である。
特定の思想・宗派に対する蔑称
アカ(紅、Red)は共産主義者への蔑称。
非国民、国賊は、日本においては戦前の大日本帝国の体制に対して批判したり、非愛国主義者、変革を求める者に対する蔑称。転じて、現代でも日本の伝統的な物事を変革しようとする者(左翼・過激派等)に対する蔑称として使われることもある。
反日は、現代の日本において、主に保守派が、政治思想・国益観の違う者に対して、日本の国益に反するとして非難・侮蔑する際にしばしば用いられる。近年では韓国・中国・北朝鮮のことを「反日国家」と呼ぶケースが多い。
売国奴は私益を図るという目的から、自国を害し他国を利する者のことを指す蔑称。法的にも最大限の非難を加えられる行為とされ、売国行為により日本国への武力行使をもたらしたものに対しては外患誘致の罪に問われ、必ず死刑が適用される。
フェミナチは、フェミニストやその共感者への侮蔑語。人工妊娠中絶をホロコーストと同一視することによって、フェミニズムとナチズムを強引に結びつけたもの。フェミ、フェミナチストとも称される。アメリカ合衆国で生まれた表現で、日本では一般に使われることは少ないが、インターネットの掲示板などでは広く使用されている。
キリスト教徒への侮辱として耶蘇(ヤソ)と呼ぶ事があったが、近年はあまり使われない。なお、耶蘇はイエスを音訳したもの。
集団や職業に対する蔑称には、その属性そのものが侮蔑の対象となるものと、個人や職業を貶める目的で用いられるものに大別される。また、本来は蔑視の意図のない言葉でも、旧称を用いることで侮蔑と取られる場合もあるので注意が必要である。
「**屋」
特に本来「屋」がつかない名称の職業を「**屋」と呼ぶ場合、一般的には特定の職業を安っぽく軽んじて呼ぶ場合、ないし金銭にあざとい人への蔑称として用いられることがある。
「政治屋」は政治家の蔑称で、特に金権政治に対する揶揄として用いられる。
「ブンヤ」は新聞屋の略で、新聞記者などマスコミ人に対する蔑称である。主に戦前に用いられた。同義語としては一部のジャーナリストが使いまたインターネット上を中心に用いられる「マスゴミ」などがある。類義として「トップ屋(正社員でないフリーランスジャーナリスト)」。
行政書士を「代書屋(もしくは書き屋)」と蔑視する事も。書類を作成する以上の行為は法で禁じられている事から。
公務員やサラリーマンも大きく分類すると事務系と技術・技能系に分けられ、それぞれが「事務屋」・「技術屋」と呼ばれることがある。自身と同じ職種の者を「**屋」と呼ぶことは自嘲になるが、事務系職員が「技術屋」と相手を呼んだ場合は「視野が狭く自分の殻に閉じこもって融通が利かないため専門分野以外の知識に疎く、他の職域では使えない奴」、反対に技術・技能系職員が「事務屋」と相手を呼んだ場合は「快適な部屋の中で数値化された結果だけしか見ず、何でも規則で縛って現場の実情を何一つ知らない奴」という意味などで蔑称になる場合もある。
技術者(エンジニア)に対して技術屋(メカニック)と呼ぶ。これは技術者自身も使う表現だが、上記と同様に事務職員(事務屋)が使った場合侮蔑と受け取られることがある。
畜産農家に対し、「牛屋」・「豚屋」・「鶏屋」を用いると蔑称になることがある。