キリスト教圏では、姓についての慣習は各国語圏で異なるが、名については聖人・天使に由来する名前が好んで付けられる。例えば、「マイケル」(英語)・「ミシェル」(フランス語)・「ミヒャエル」(ドイツ語)・「ミケーレ」(イタリア語)・「ミゲル」(スペイン語)・「ミハイル」(ロシア語)・「ミカ」(フィンランド語)は、すべて大天使ミカエルに由来する名である。その他、聖書に登場する人物の名が多い。ポール・パウル・パオロ・パブロ・パヴェル(聖パウロ)、ルイス・ルートヴィヒ・ロドヴィコ・ルイージ・ルドヴィクス(聖ルイ)、ジョン・ハンス・ヨハン・ヨハネス・ジャン・ジョヴァンニ・フアン・ジョアン・イヴァン・ヨアニス・ヤン・ショーン(使徒ヨハネ)などなど。
また、古代ローマ人の名を由来とすることも多い(例:ジュリアス←ガイウス・ユリウス・カエサルの「ユリウス」の英語読み)。女性については、花などの名前を付けることも多い(例:ローズ←バラ)。
⇒Counterparts of given namesの項(英語)も参照のこと。
スラヴ系の諸民族では個々の民族によって異なるが「名・ミドルネーム・姓」の3つの部分から成りミドルネームは父親の名前を基にして作るという人名の付け方を持つ民族が多く見られる。ここでは一例としてロシア語名を取り上げる。
ロシア人の名前をフルネームで表記する時は原語での順序は「名・ミドルネーム・姓」となる。但し公式文書等では「姓,名・ミドルネーム」と書かれる。公式な場(例えば大統領へのインタヴュー等)での呼び掛け、あるいは目上の人に対する呼び掛けでは「名・ミドルネーム」が使用される。それ以外では、呼び掛けには専ら名の愛称形が使用される。ミドルネームは父称(ふしょう;Отчетество)といい父親の名前を基にして作るので性別を同じくする同父兄弟のミドルネームと姓は必ず同一となる。性別を同じくすると特にことわるのは、ロシア語には文法上の性として男性、中性、女性の三性がありロシア人のミドルネーム・姓は殆ど全ての場合個人の生物学上の性に依って男性形・女性形の異なる語尾を採る為である。
ロシア人の父称の付け方父の名の語尾父称
男性形女性形
-a/-ja-ich-ichna/-inichna
-i/-ji-jevich-jevna
(子音)-ovich-ovna
父称は父親の名前にその語尾の音に応じた適切な語尾を付加して作られる(右表参照)。父称の男性形は男性のミドルネーム・女性形は女性のミドルネームに用いられる。
例えば父の名が1)"Илья"(Ilija、イリヤ)、2)Николай(Nikolaji、ニコライ)、3)Иван(Ivan、イヴァン)の三つの場合で父称男性形はそれぞれ、1)Ильич(Iliich、イリイチ)、2)Николаевич(Nikolajevich、ニコラエヴィチ)、3)Иванович(Ivanovich、イワノヴィチ)とそれそれ変化し、一方父称女性形は、1)Ильинична(イリイニチナ)、2)Николаевна(Nikolajevna、ニコラエヴナ)、3)Ивановна(Ivanovna、イヴァノヴナ)となる。現代男性名では「---イチ」の形が父称に多くなってはいるが、中世までは「-ш、-シ」(「?の息子」という意味合い)という語尾を採る父称が多かった。これらは南部スラヴ人種(ブルガリアなど)に一部残っている傾向がある.
姓の部分は形容詞の変化に準じて男性形・女性形となる。-ский(-skij)、-ин(-in)、-ев(-jev)、-ов(-ov)等は地名などについてその場所に帰属する、又は出身である等を示してスラブ人の姓を造る接尾辞であるが、これらは形容詞男性形で対応する形容詞女性形語尾は、-ская(-skaja)、-ина(-ina)、-ева(-jeva)、-ова(-ova)等となる(-in, -jev, -ovは姓に限らず一般に名詞に付けて物主形容詞を造る接尾辞である)。こうして自分の名がニコライ、姓がカレーニンで父の名がイヴァンという男性の場合はニコライ・イヴァノヴィチ・カレーニンが正式なフルネームとなる。この人の姉妹で、アンナという女性の場合は、アンナ・イヴァノヴナ・カレーニナがフルネームとなる。またストラヴィンスキーなどの姓は女性の場合ストラヴィンスカヤとなる。ロストフ(Rostov)というような姓は女性だとロストヴァ(Rostova)となる。なお注視すべきはウクライナ系やグルジア系ロシア人の姓名に付いては歴史的経緯から、同姓で男性のみ格変化を起こす場合と性差関係無く無変化の場合があるなど、個々の相違点が見られる。
ロシア語以外での人名の規則や傾向についてはロシア語名と異なる部分も少なくないが、基本概念は同じである。
スペイン語圏では、姓は他の多くの国と同じ様に、基本的に父方から子へと父系相続で伝えられるのが基本となるが、個人の姓名を構成する部分の数は人によって異なる。名が最初に来る点では共通で、それに続く部分は父方の姓と母方の姓の一部または全部からなる。例えば「名、父方の祖父の姓、母方の祖父の姓」と3つの部分からなる名前がある。あるいは「名、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖父の姓」「名、父方の祖父の姓、父方の祖母の姓、母方の祖父の姓、母方の祖母の姓」と4つまたは5つの部分からなる姓名を持つ場合もある。また、女性は結婚すると「名、父方の祖父の姓、 de+夫の父方の祖父の姓」で名乗るのが一般的となる。
ポルトガル語圏では、姓名の構成はスペイン語圏によく似ているが、姓名に父方の姓と母方の姓を並称する場合は「名、母方の祖父の姓、父方の祖父の姓」の語順となり、スペイン語圏と反対である。
18世紀ドイツにおいては、洗礼の際にミドルネームが与えられることがあった(必ず与えられたわけではない)。もしミドルネームが与えられた場合には、その人はそのミドルネームで知られることになり、ファーストネームは余り用いられなかった。しばしば教会の記録などでもファーストネームが省略され、ミドルネームとラストネームだけが用いられた。また、ある一家の男の子達が全員ヨハネスというファーストネームを持つ、というようなこともあった。この場合でも、洗礼と共に各人に別々の名前が与えられ、その名前が用いられるようになるため、問題がなかったとされる。また、女性のファミリーネームを記録する際には元の名前の最後にinを付す習慣があった(例えば「Hahn」が「Hahnin」と書かれる)。また、一家で最初に生まれた男の子には父方の祖父の名を、一家で最初に生まれた女の子には母方の祖母の名をつけることがしばしば見られた。「花の咲く土地」を意味すると思われる姓Floryに、他にもFlori、Florea、Florey、Flurry、Flury、Florie、など似た姓が数多くある。これはその姓を持っていた人々が文字を書くことができず、名前を発音することはできても綴ることができなかったため、筆記を行った人によって異なる綴りになったと考えられる。
英語圏の姓名は多くの場合、3つの構成要素からなる。ファーストネーム、ミドルネーム、ラストネームである。ファーストネームはギブンネーム(given name)とも呼ばれ、ラストネームはサーネーム(surname)、ファミリーネーム (family name)などとも呼ばれる。
ラストネームは、日本における姓とほぼ同じもので、父系の家系を通じて受け継がれる。稀に、母のラストネームが父のラストネームとハイフンでつながれて子に受け継がれることなどもある。
ミドルネームはファーストネームと同時に親が名付けるもので、多くの場面でイニシャルだけの省略系が用いられる(ミドルイニシャルと呼ばれる)。稀に、ミドルイニシャルだけを持ち、ミドルネームがない場合もある。ハリー・S・トルーマン大統領はその一例であり、このようにイニシャルだけを与えることはアメリカ南部に見られた風習だとされる。なお、ミドルネームが無い場合もある。
西欧社会では女性は結婚と共にそれまでの姓を夫の姓に換えることが普通であったが、アメリカでは、20世紀中ごろから女性が結婚後も姓を変えない風習がひろまりつつある。また、両者の姓を併記するカップルもいる。