中華人民共和国の現行制度下では、第一級行政区画として省、自治区、直轄市が、その下に位置する地級(地区級)行政単位として、地区、地級市、アイマク(盟)、自治州が、さらにその下の県級の行政単位として県、県級市、旗(ホショー)が、さらにその下の行政単位として郷、スムがある。
「民族区域自治」単位は、その規模の大小に応じて自治区、自治州、自治県、自治郷などがある。アイマク(盟)、旗(ホショー)、スムは、清代に主としてモンゴル人に対して施行された盟旗制以来の呼称を踏襲した内モンゴルのみに見られる民族区域自治単位である。また、自治区内には、民族区域自治単位でありながら「○○族自治-」を冠しない「地区」や「地級市」、「県」が、自治区内の地区や自治州、地級市には民族区域自治単位でありながら「○○族自治-」を冠しない県が存在する。
2005年現在、自治区としては、内モンゴル自治区(内蒙古自治区)、広西チワン族自治区(広西壮族自治区)、西蔵自治区、新疆ウイグル自治区(新疆維吾爾自治区)、寧夏回族自治区が存在する。中華人民共和国の建国初期には、「自治区」という名称を有する民族自治行政単位が多数存在したが、それらの多くは小規模なもので、行政制度が整うにつれ、多くが「自治州」と改称した。現存する5つの「自治区」はすべて「省級」の行政単位である。
これらの自治区の日本語名として流布している呼称として、「内モンゴル自治区」「広西チワン族自治区」「チベット自治区」「新疆ウイグル自治区」「寧夏回族自治区」がある。これらは中国政府が日本語で発信する文章のなかで用い、また日本社会においても中国について言及する官公署やマスコミにより広く用いられる呼称である。
日本語における外国語固有名詞の慣用は、中国語の固有名詞 (非中国語を漢字で音写したものを除く) は漢字表記そのまま漢音で発音する、非漢語の固有名詞は原音にもっとも近いカナ表記で写すのが原則で、「西蔵自治区」を除く4自治区の日本語表記はすべてこの原則にのっとったものとなっている。
自治区名の構成と上記説明に基づく日本語訳中国名(地名)中国名(民族名)中国名(所在)非漢語名属性日本語訳
西蔵自治区チベット自治区
新疆維吾爾自治区新疆ウイグル自治区
内蒙古自治区内モンゴル自治区
広西壮族自治区広西チワン族自治区
寧夏回族自治区寧夏回族自治区
「西蔵自治区」における「西蔵」という名称は、中国人が、清朝康熙時代の末期より、中央チベットを中心とするチベットの西南部の呼称として、烏斯蔵という呼称にかわって用い始めた地域名称であり、上記の他の自治区における新疆、寧夏、広西などの地名部分に相当する。中国人民政府がなぜこの自治区の呼称を「西蔵蔵族自治区」もしくは「博蔵族自治区」(博は「プー」の音写)としなかったのかは不明であるが、中国政府が「西蔵自治区」の日本語として、原表記とははなれた別の名をつけるという立場をとり、しかも「西蔵チベット族自治区」せずに、「西蔵」という固有名詞自体を消す名称を採用しているのは、上述の外来語の固有名詞表記に冠する日本語の原則からはかなり隔たっている。
中華人民共和国の地区級の行政単位としては、地区、地級市、州、アイマク(盟)の四種がある。アイマク(盟)は清代以来、モンゴルに設けられていた行政単位、州は1950年代半ば以降、地区級の民族区域自治行政単位のみに用いられた行政単位の呼称であるのに対し、地区、地級市は、中国の全土に設けられている行政単位である。
地級市
省級の行政単位と県級の行政単位の中間にある地区級の行政単位の一種で、従来より各省、自治区の中核都市に設置されていたが、近年、各種の地区級行政単位の地級市への転換が大規模に推進されている。
アイマク(盟)
アイマクは、清代にモンゴルを中心に施行された「盟旗制」に由来する行政単位の呼称で、盟はアイマクに対する中国語の呼称である。内蒙古においては民国期、人民政府期を通じてこの呼称が使用されつづけ、現在にいたっている。モンゴル国でも行政単位としてアイマクという呼称が用いられており、そのまま「アイマク」とカナ書きされるほか、「州」や「県」などと和訳されることがある。中国の現行制度では、アイマク(盟)は地区、ホショー(旗)は県に相当し、二十世紀末から今世紀初頭にかけ、盟の地級市への再編が進行している。
州
州は、数県を管轄する行政単位として、中国において古くから使用されてきた行政単位の呼称であるが、現行制度では、州と名のつく自治体は、すべて民族区域自治行政単位である自治州である。中華人民共和国の建国初期、中国人民政府の掌握地域の各地で「○○族自治区」として発足し、1950年代半ばに「○○族自治州」と改称されて現在に至るものが多い。各省と、自治区のうち、新疆ウイグル自治区に設置されている。
地区
地区は、元来は数県を管轄し、中国の全省、自治区内にもうけられていたが、近年地級市への転換がすすみ、現在では黒龍江、貴州、甘粛、青海の各省の一部分と、西蔵自治区内に残るのみとなった。