万年筆
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本体(軸胴部)

万年筆のうち、キャップや胴軸(筆記する際に手で持つ部分)は重量バランスひいては書き味を左右する部分であり、かつてはセルロイドエボナイト等の軽量な素材が主に使用された。現在は、プラスチックアクリル製、金属に塗装や鍍金加工を施したものがほとんどであるが、高級万年筆には、耐久性を重視してエボナイトを用いるもの、昔ながらの風合いを重視しセルロイドを用いるもの、黒檀カーボンファイバーなどの特殊素材を用いるものがある。

また、デザインも万年筆の評価、価値を決める重要な要素であり、高級万年筆には貴金属宝石で本体を装飾したものもある。日本では、漆塗蒔絵等の伝統工芸を生かした万年筆が戦前から製作され、特に戦前の並木製作所(現パイロットコーポレーション)の蒔絵万年筆は「NAMIKI(ナミキ)」のブランドで海外に輸出され、高い評価を得た。

吸入式タイプであるものの多くは、インクタンク内のインク残量を見るための窓(インク窓)が設けられている場合が多い。単に素通し、透明プラスチックがはめ込んであるだけというものも多いが、高級なものではデザインの中に取り込む工夫がなされており、万年筆の意匠を特徴付ける要素の一つともなっている。また完全に無色透明で中の機構を外側から見ることの出来るものもある。ただしカーボン系のインクの場合、表面張力が小さいのでインク窓表面全体にインクが広がり、且つインク自体透光性が低いので、インクの量を確認出来ない場合がある。


キャップ

万年筆のキャップはペン先を保護するとともに、インクが乾かないように密閉しておく役割ももつ。このため、気密構造になっている。キャップの固定方法は螺子式あるいはスリップ式になっているものが主流であるが、低価格のものを中心に嵌合式(パチンと音が鳴るまで嵌め込み固定するもの)のものも多い。嵌合式の場合、胸のポケットに入れて携行する場合、外れてインクが服に染み出すこともある。


キャップレス

万年筆からキャップを無くし、文字通りキャップレスにしたものがパイロットコーポレーションの発売しているキャップレスシリーズである。ペン先は極めて小さい。繰り出し式と、ノック式がある。クリップが一般的なペンとは逆向きに付いているため、胸ポケットに入れて携行する場合は、格納されたペン先が上方向を向く。


インクの補充方式

万年筆はインクを充填する方式により大きく2通りに分けられる。ひとつは、ビンに入ったインクを吸入する方式、もうひとつはカートリッジにつめられて小分けされた状態で流通しているインクをつかい、ペン軸内にカートリッジをセットして使用する方式である。


吸入式

ペン軸内にインクを吸入するための機構が内蔵されているものを吸入式と言う。 ビン入りインクを吸入して用いる方法専用のもので、後述するカートリッジ式や、コンバーター(吸入器)式のものよりも多くのインクを一度に充填する事が出来る。 万年筆が考案された当初から使われている形式で、現在でも高価格帯の製品を中心に多くのモデルが製造されている。

吸入装置は本体内を負圧にし大気圧でインクを本体内に送り込むもので、ピストン式のもの等様々な方式がある。使用出来るインクの種類が多い上、インクを出し入れするときに細かいゴミなどを掃除する事が可能である(なお、パーカー、モンブラン等の一部のメーカーは洗浄成分をインクに混入させている。)。 カートリッジ式を採用した製品では、コンバーターを装着しない限りこの掃除機能は望めない。しかし、後述のコンバーター(吸入器)式に比べると、インクの吸入機構が劣化した場合において、修理に出さなくてはならない場合がある上、ペン内部の洗浄がしづらいといった欠点がある。


コンバーター(吸入器)式

カートリッジ、コンバーター両用式と明記されているものが利用できる。 カートリッジを刺す部位にコンバーターと呼ばれる吸入器を装着し、インク瓶からインクを吸入出来る様にするものである。カートリッジ装着部に取り付ける構造上の都合から、吸入出来る量はカートリッジ式とほぼ同じか若干劣るものの、基本的には吸入式と同じく使用出来るインクの種類が多く、インク装填時にペン内部を掃除する事が出来る等の利点がある。そのため、昨今の主流であるカートリッジ式と違い、コンバーター購入等の初期費用が掛かる事が多いが、インクに掛かるコストを考慮に入れると長時間筆記し続けることが多い人には適した方式とも言える。

吸入式に比べ、コンバーターを買い換える事で吸入機構を新しく出来るため、吸入機構が劣化しても修理に出す必要が無く簡単に交換できる点や、ペン内部の洗浄がしやすいといった利点がある。しかし、吸入式に比べるとインクを保持できる量が少ないといった欠点がある。最近は、吸入式と違い後述のカートリッジ式と機構を共用できる事から、コスト面からこの方式を吸入式の代わりとして用いているメーカーが増加傾向にある。


カートリッジ式

現在は、インクの補充を簡単に行うため、インクを詰めたカートリッジが広く使われている。カートリッジの形状は原則としてメーカーごとに異なっており、ペンの製造メーカーから供給されるカートリッジを購入し使用するのが一般的である。 ヨーロッパのメーカーの多くでは欧州共通規格のカートリッジが採用されており、この場合は欧州共通規格を採用する他のメーカーのインクを使用することが可能である。 ただし欧州のメーカーであっても独自規格のカートリッジを採用するメーカーも多く、またペンの種類によって利用可能なカートリッジが異なっている場合もある。また、カートリッジ式の場合、インクに掛かる費用が吸入式の5倍近くになると言われている。

カートリッジ専用(コンバーター不可)の万年筆においてインクにかかる費用を抑えるために、使用後のカートリッジに注射器スポイト等で瓶のインクを詰めれば瓶のインクを使えるが、カートリッジが劣化した時や、カートリッジの差し込み口が緩くなってしまうと、インクが漏れてしまい危険である。もちろん、メーカーの保証外行為のため自己責任となる。また、他社のコンバーターが偶然装着できることもある。


インク止め式

昭和30年頃までは主流の方式であった。また、海外では同様の構造は見られず、日本独自の方式である。なお、海外のアイドロップ方式とは異なる。

構造は大きく分けてキャップ、首軸、胴軸、尻軸に分かれている。首軸、尻軸はねじが切られており、首軸を外してスポイトでインクを直接胴軸に入れる方式である。 筆記の際には尻軸を緩めペンを縦に振ってから筆記する。もしくは、尻軸を完全に緩め、引いた後押し込む。これによりペン芯にインクが供給され筆記可能となる。 前者の方法では、インクが飛んでしまう事が多い。しかし、後者の方法では、加減によりボタ落ちを防げる。 また、尻軸を緩めるのは、胴軸の中にあり、尻軸と直結しているエボナイトの棒状の栓を緩め、インクがペン芯に行き渡るようにするためである。尻軸を閉めている時は、胴軸内のエボナイトの棒がペン芯へのインクの供給路を塞いでいる。

胴軸全体がインクのタンクとなるため、他の方式と比べインク容量は非常に多い。 軸の素材としてはエボナイトまたはセルロイドが殆どである。


万年筆のインク


インクの種類と組成

一般に万年筆用のインクとしては染料系のインクが用いられており、耐光性・耐水性に乏しい場合が多い。

旧来、万年筆を使用してそれらの性質を必要とする公文書などを書き記す場合、化学反応によって紙に定着するタイプのブルーブラックインクが使われてきた。このインクはイオンの状態で鉄を含んでおり、これが酸化されて黒色の沈殿を生じる事によって紙に定着する。これの反応が進む様子はインクの色によって知ることができ、筆記直後には比較的青い色をしているものが、日にちが経って反応が進むと次第に黒ずんでくる。このタイプのインクは、強い酸性を示し、金属を冒す事でも知られる。万年筆のペン先として金が多用される理由の一つは、酸性のインクに冒されない耐薬品性の強さである。

顔料系のインクは鮮やかな色彩を醸し出し、耐水性、耐光性はあるが、インクが乾くと目詰まりを起こし万年筆が使えなくなるので敬遠されてきた。製図漫画の製作その他によく使われるインディアインク(インディアンインク)も詰まりやすいことから使えない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki