万年筆はペンとともに1960年代頃まで、手紙やはがき、公文書など改ざん不能[2]な文書を書くための筆記具として主流であったが、徐々にボールペンに取って代わられ、1970年代に公文書へのボールペンの使用が可能になり、また書き味に癖がなく安価な低筆圧筆記具である水性ボールペンが開発されたことにより、万年筆は事務用・実用筆記具としてはあまり利用されなくなっている。役所によってはサインペンと同等と看做されて使用禁止にされているところもある。しかし、近時万年筆の希少性・独自性が見直され、趣味の高級文具として復権の兆しが見られてる。また、万年筆のデザイン性、希少性に着目し、コレクターズアイテムとしても注目されている。このため、万年筆を扱った書籍や雑誌が刊行されるようになっている。
長所
構造上低筆圧で筆記可能である。
万年筆の名の通り、半永久的と言える程長期に渡って使用する事が出来る。
使用するうちに使用者の癖に応じてペン先の形状などが変化し、使用者に合った書き心地(いわゆる「馴染む」状態)になる。
万一ペン先が曲がるなどして使用不能になった場合でもある程度修理が可能である。
構造上独特の筆跡を表現できる。
短所
ペン先が常時空気に触れているため、乾燥に弱い。
温度や気圧の変動、衝撃や振動に弱いためしばしば不慮のインク洩れ・インク飛散事故を起こす。
ペン先の構造上、にじみや引っかかりが起こりやすく、粗悪な用紙に弱い。
頻繁なインク補充・ペン先の手入れ等、取り扱いが少々面倒である。
使用者の癖が付き、更に粗雑な取り扱いや衝撃に弱いため貸し借りや共用に不向きである。
構造上手作業の工程があったりと製造に手間がかかるため同一メーカーの、同一モデルのボールペンや、シャープペンシルに比べると高価である。
近年は、安価でメンテナンスを廃した使い捨てタイプの万年筆や、安価であってもカートリッジの交換が出来るものが製造販売されている。 現在では従来の欠点を克服・解消している万年筆も多く存在し、また字の発色に濃淡が生まれ独特の風合いをもった筆跡が生まれることや物珍しさから一時期に比べ使用者が増え、復権を果たしてきたと見る傾向もある。 一時期は弛廃した筆記具ではあるが上記の理由から一部では万年筆を尊ぶ風習も残っている。 古くから使用されてきた筆記具であり、高価なイメージや正式なイメージを持たれることから契約書・履歴書等の重要書類にサインする際万年筆を使用することが推奨される場合もある。
構造カートリッジ式万年筆のパーツ。一番上が全部を組み合わせた状態。以下、上から順にキャップ、本体、カートリッジ、コンバーターである。本体には窓があり、インク残量を視認できる。左からペン先、ペン芯、首軸。
万年筆はいくつかのパーツを組み合わせて作られている。
ペン先(ニブnibともいう)には常時インクが接触していることから耐酸性が、強弱のある書き心地を実現するために適度な柔らかさが、長年使用することから耐磨耗性が必要となる。そこで、尖端にイリジウム合金をつけた金ペンが伝統的に使用されてきたが、1970年代からは合金を使用した白ペンも普及する。
現在主にペン先に使われているのは、以下の素材である。
金及び白金
1万円を越える比較的高級な万年筆に使われる。どちらも、ペン先の材質に好都合な要素である耐酸性・耐磨耗性、弾性・靭性が共に優れている。 使用される金の純度は14〜18Kが一般的。 耐久性の面では14Kが最も優れていると言われるが宝飾用途も兼ねて18金が使用されることも多い。
鉄及びステンレス
比較的安価な万年筆に使われる。特に、ステンレスは錆に強く安価な事から、安価な万年筆製造には好都合な金属である。 金を使用したペン先に比べ耐久性は劣るがコストパフォーマンスが優れており量産にも向くため低価格な商品では多用される。 デザイン優先で金メッキを施した商品もあるが、メッキの有無の違いは防錆加工の違いであり、一般に信じられているように書き味に差がある訳ではない[要出典]。 また、鉄製のペン先は金メッキされたものよりも何もメッキされていない方が腐食に強いとも言われている。 (ブリキを参照。)
プラスチック
ぺんてるがプラマンと言うブランド名で発売している商品に使われている素材。上記の金属系と比べ安価で且つ加工性に優れており、当シリーズの人気の原動力となっている。ただし、金属系と比べ耐久性が劣るため、使い捨てる部分が多いという欠点がある。そのため、ペン先をカートリッジ式にしたトラディオ・プラマンが発売されている。
ペン先(ニブともいう)には常時インクが接触していることから耐酸性が、強弱のある書き心地を実現するために適度な柔らかさが、長年使用することから耐磨性が必要となる。そこで、尖端にイリジウムをつけた金ペンが伝統的に使用されてきたが、1970年代からは合金を使用した白ペンも普及する。
価格が1万円前後の比較的安価な万年筆の場合は、ペン先にステンレスや鉄を使用した物が多い。一方、2万円を越える比較的高級な万年筆には、14金から21金の金が使用されている。また、デザインを考慮し、ロジウムで銀色にコーティングした金や、逆に金メッキしたステンレスが使用されることがある。
ペン先の形状は、その万年筆の書き味の決め手となる。一般的には、ペン先が細長く、薄く、ハート穴[3]が大きいほどペン先は柔らかくなり、書き味は滑らかになる。逆に、幅が広く、短く、厚みがあり、ハート穴の小さいペン先ほど硬く、書き味も硬いものとなる。
多くのメーカーでは、ペン先の種類によって異なる線の太さを示すために、アルファベット1文字から2文字の略号が使われる。代表的な表記としては、EF(極細)、F(細字)、M(中字)、B(太字)、BB(極太)など。ただし、同じ表記であっても統一的な基準があるわけではなくメーカー、製品ごとに実際の太さは異なっている。特に日本メーカーのものは欧米メーカーよりも半段階から一段階程度細いとされている。これは一説によると、日本メーカーがアルファベットに比べ込み入っている漢字を書く際の利便性を考えているためだといわれる。
ただし、線の太さはペン先の形状のみによって決まるものではなく、インクの流れ(インクフロー)や紙とインクの相性等にも大きく左右される。同じペン先であってもフローの良いインクを使えばフローの悪いインクを使った場合より当然太い線となり、インクと紙の組み合わせによって紙にインクが染み込みやすい場合はそうでない場合に比べて線は太くなる。
特殊な形状としてカリグラフィ用や楽譜用(ミュージック)、サイン専用のペン先なども存在する。
インクタンクからペン先へとインクを導くための部品をペン芯と呼ぶ。かつて、素材はインクになじみやすいエボナイトが使用された。現在ではエボナイト製のペン芯を使用しているメーカーは皆無に等しい。合成樹脂を使用するものが多く、また、その方が精度が高いものを容易に大量生産することが出来る。 インクタンクから、ペン先のハート穴の部分まで細い溝が掘られており、毛細管現象によりインクが常に供給される。ペン芯には、前述の細い溝とはべつに、多数の溝が掘られ、過剰に供給されたインクを一時的にためておく構造となっている。