ロックにおいてはサウンドの洗練化がある程度まで進むと、それへの反動としてプリミティヴなパワーを持ったギター・サウンドの復権が起きるという流れが何度か繰り返されている。その最初の例が、ブリルビルディング・サウンドに対するサーフィン・ホットロッド・サウンドの登場である。
ロックはボーカルを中心とするサウンド作りを基本とするが、ロックンロール黎明期からインストルメンタルの作品も存在した。その場合に中心となる楽器はエレクトリックギター、サックス、オルガンなどだが、次第にエレクトリックギターが主役の座に着く傾向が強まった。この傾向は1958年に登場したデュアン・エディと1960年に登場したベンチャーズによって確定的になった。
こうした流れを受けてカリフォルニア州の若者たちの間で1961年頃から流行したのが、サーフィンをしている時の感覚をエレクトリックギターを中心としたインスト音楽で表現したサーフ・ミュージックである。当初はインストであったサーフ・ミュージックにボーカルを付けたのがビーチ・ボーイズである。ビーチ・ボーイズの登場によってサーフ・ミュージックは一挙に全米に広がった。また、間もなく歌詞のテーマはサーフィンだけでなくホットロッド・レース(アマチュアによる公道での自動車レース)にも及んだ為、これらの音楽をサーフィン・ホットロッド・サウンドと呼ぶ。
一方のイギリスでロックンロールの影響は徐々に広がっていった。1950年代のイギリスではスキッフルが流行していたが、スキッフルのミュージシャン達は、次第に自分達のサウンドにロックンロールの要素を取り入れていった。スキッフルと呼ぶよりはロックンロールと呼ぶ方が適切であるようなイギリスの音楽は1958年にデビューしたクリフ・リチャードを源泉とする。そして、1962年に登場したビートルズによってその流れは確実なものとなった。彼らの登場後、次々とフォロワー的なビート系バンドが登場した。その多くがビートルズの出身地であるリバプールのバンドだったため、リバプールサウンド(もしくはリバプールを流れる川の名前からマージー・ビート)と呼ばれている。
ブリティッシュ・インヴェイジョンとフォーク・ロック(1964年-1965年)
1964年、ビートルズはロックンロールの本場であるアメリカへの上陸をはたし、そのサウンドは全米を席巻することになった。ビートルズ以外にも、エリック・バードン率いるアニマルズやローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクスといったイギリスのロックバンドなどがこの時期つぎつぎとアメリカでヒットしたことから、これをブリティッシュ・インヴェイジョン (British Invasion: イギリスの侵略)と呼ぶ。
アメリカでもブリティッシュ・インヴェイジョンの影響を受けて、後にガレージロックと呼ばれるグループが次々と登場し、一部のバンドは成功を収めた。
また、時を同じくしてブリティッシュ・インヴェイジョンの影響を受けたフォーク・グループも次々と登場した。これらのグループの多くは元々はフォークを演奏していた若者たちによって結成されたものであり、彼らの音楽性もフォークからの影響を消化したものだった為、この動きはフォーク・ロックと呼ばれる。フォーク・ロックの代表的アーティストは、ボブ・ディラン、バーズ、タートルズ、ママス&パパス、ボー・ブラメルズ、グラスルーツ、(カントリーロックの範疇かも知れないが)バッファロー・スプリングフィールドなどがある。
ここで大切なのは、アメリカにおいてロックンロールやロカビリー以降死滅していたロックというジャンルがフォーク・ロックをもって復活したことである。それは、ロックがほぼ完全に白人音楽へと移行したという意味合いを含むのかもしれない。また、この時期はカウンターカルチャーとしてのロックが数多く誕生した時期でもある。
また、この時期に、その後のロックサウンドを決定付けるギターのフィードバックサウンドやエフェクターの一種であるファズが生まれている。それまでは、真空管アンプによるナチュラルに歪んだ音で演奏されていたものが、よりヘヴィな音で表現可能となった。そこで生まれたジャンルの一つに、クリーム、ジミ・ヘンドリックスに代表される強烈にハードなブルースを演奏するブルースロックがあった。これらはファズより少し遅れて流行したエフェクターであるワウをファズと一緒に使用した。
実験的なサウンド作りという手法は次第に他のアーティストにも波及していった。中でも、音楽によってドラッグで起きるトリップ体験を表現するムーブメントが起こった。その幻惑的なサウンドはサイケデリック・ロックと呼ばれた。ドアーズ、初期ピンク・フロイド、ホークウインドなどが代表格として知られる。