ヨーロッパの各地で長期にわたって用いられていたため、国や地域、時代によって発音は異なるが、現代には大きく分けて古典式、イタリア式、ドイツ式の3つがある。イタリア式には、現代イタリア語の原則にのっとって発音するものと、それをもとにした教会式(ローマ式)の2つがある。後者は、フランスのソレム修道院で提唱された発音法であり、ピウス10世が推奨したことで広まった。
日本の大学で学ぶ発音は、原則として古典式である。一方、ラテン語による音楽作品の歌唱においてはイタリア式、ドイツ式が主流である。どのように異なるか、いくつか例を示す(実際には、地域や人によって発音の揺れがある)。
発音古典式イタリア式ドイツ式
ae (?)[ae][e][?]
oe (?)[oe][e][?], [?]
s[s][s]、母音間で [z][1][s][2]
sc[sk]a, o, u の前では [sk]、e, i の前では [?]a, o, u の前では [sk]、e, i の前では [sts]
z[z][dz][ts]
三ヶ尻正『ミサ曲・ラテン語・教会音楽ハンドブック?ミサとは・歴史・発音・名曲選』(ショパン、2001年)を元に作成
^ 教会式では [s]。たとえば Kyrie eleison(主よ憐れみ給え)の s
^ 母音間、あるいは単に s+母音 の場合に [z] と発音することもある
なお、日本語では古典式またはドイツ式の音をカタカナ表記するのが慣習となっている。ただし、古典式によっていると思われる場合でも、母音の長短の別を表記しない場合がほとんどである。「ユリウス・カエサル」はイタリア式では「ジュリオ・チェーザレ」、「スキピオ」は「シピオ」、「キケロ」は「チチェロ」にそれぞれ変わる。その一方、宗教音楽の題名を表記する際は、イタリア式に近い表記が多い。例えば、Agnus Dei の Agnus は、古典式とドイツ式では「アグヌス」と発音するが、イタリア式では「アニュス」(厳密には、gn は [?] という鼻音)となる。Magnificat も「マグニフィカト」ではなく、「マニフィカト」と表記される傾向が強い。
ラテン語の文法を参照
ラテン語意味
⇒salve(単数)/ ⇒salvete(複数)今日は
vale(単数)/valete(複数)さようなら
ut vales?御機嫌いかが?
optime valeo, gratias agoとても良いです。有難う。
bonum diem今日は
bonam vesperum今晩は
bonam noctemお休みなさい
mihi ignoscasごめんなさい
ラテン語意味
⇒aqua, aquae (f.)水
aranciata, aranciatae (f.)オレンジジュース
banana, bananae (f.)バナナ
botulus, botuli (m.)ソーセージ
bubula assa, bubulae assae (f.)ステーキ
butyrum, butyri (n.)バター
caseus, casei (m.)チーズ
cervisia, cervisiae (f.)ビール
citreum, citrei (n.)レモン
⇒cola, colae (f.)コーラ
Hammaburgensis, Hammaburgensis (m.)ハンバーガー
lactuca, lactucae (f.)レタス
oryza, oryzae (f.)米
panis, panis (m.)パン
pasta vermiculata, pastae vermiculatae (f.)スパゲッティ
perna, pernae (f.)ハム
⇒piscis, piscis (m.)魚
pitta, pittae (f.)ピッツァ
placenta, placentae (f.)ケーキ
poma terrestria assa (n. pl.)フレンチポテト
scriblita, scriblitae (f.)タルト
tomata, tomatae (f.)トマト
uva, uvae (f.)葡萄
⇒vinum, vini (n.)ワイン
現代も使われる表現、日本への影響AKIHITVM ET MICHIKAM IMPERII IAPONICI SERENISSIMOS PRINCIPES VNIVERSITAS LAETA RECEPIT 28 FEBRVARII MCMLXXXV(本学は、日本帝国の皇太子同妃両殿下なる明仁と美智子を喜びをもって迎えたり。1985年2月28日)
古典ラテン語の慣用表現は、現代の西洋諸語においても使われることが少なくなく、そのうち一部は日本語にも入っている。なお、ラテン語起源の英語などの単語が日本でも使われる例は、もちろん数多くある。
ad hoc アド・ホク:暫定の、臨時の(アドホック)
ad lib.(ad libitium(アド・リビティウム)の略):即興(アドリブ)
alius ibi (alibi) アリウス・イビ:「他の場所で」の意(アリバイ)
a priori ア・プリオリ:先天的に、(哲学)先験的に(ただし古典ラテン語法ではない)(アプリオリ)
cum () クム:ともに、英語の with
de facto デ・ファクト:事実上の(対義語は de jure(法律的には))、defact は誤り(デファクト)
et alli (et al.) エト・アリ:その他の者(論文の著者名省略などでしばしば用いられる)
et cetera (etc.) エト・ケテラ:その他(エトセトラ)
ego エゴ:私、自我
facsimile ファクシミレ:似せて作れ(ファクシミリ)
persona non grata ペルソナ・ノン・グラタ:(外交)好ましからざる人物
Quod Erat Demonstrandum (Q.E.D.):証明終わり(直訳は「証明されようとしていたもの」)
sine () シネ:〜なしに、ともなわず、英語の without
virus ウィルス:毒
missile ミッシレ:投げられるもの(ミサイル)
ラテン語由来の商号や固有名詞としては、例えば以下のようなものがある。
Audi(ドイツの自動車メーカー):audi は「聞け」の意。創業者ホルヒ(ドイツ語で「聞け」)に因む
『AERA』(朝日新聞社の雑誌):?ra は「時代」の意。英語の era
『SAPIO』(小学館の雑誌):sapio は「私は考える」の意(現在分詞は sapiens)