ラテン語
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つまり、用語の統一にラテン語が用いられたのである。そのため、日本解剖学会により刊行されている『解剖学用語』も基本的にはラテン語である(ラテン語一言語主義)。ただし、臨床の場面では、医師が患者に自国語で病状説明をするのが当然であるため、各国ともラテン語の他に自国語の解剖学専門用語が存在する(ラテン語・自国語の二言語主義)。近年では、医学系の学会や学術誌の最高峰が英語圏に集中するようになったため、英語の解剖学用語の重要性が上がった。日本では、ラテン語(基本)・英語(学会用)・日本語(臨床現場用)の三言語併記の解剖学書も増えている(ラテン語・英語・自国語の三言語主義)。

ウイルス(virus)」など、日本語でも一部の語彙で用いている。森鴎外小説『ヰタ・セクスアリス』は、ラテン語の vita sexualis(セクシャル・ライフ)のことである。ただし日本語では、元の母音の長短の区別が意識されない場合がほとんどである。

日本語版Wikipedia内での表記についてはWikipedia:外来語表記法/ラテン語を参照


歴史ERRARE HUMANUM EST
「誤るのが人間である」
古代ローマの金言


古ラテン語

ラテン語が属するイタリック語派は、インド・ヨーロッパ語族内ではケントゥム語派に分類され、インド・ヨーロッパ祖語の *k および *g はラテン語でも K、G として保たれた。イタリック語派の話者がイタリア半島に現れたのは紀元前2千年紀後半と見られており、ラテン語の話者がラティウム地方で定住を開始したのは紀元前8世紀だった。現在発見されているラテン語の最も古い碑文は紀元前7世紀に作られたものである。この時期から紀元前2世紀頃までのラテン語は、のちの時代のラテン語と区別され古ラテン語と呼ばれる。この時代のラテン語は、語彙などの面で隣接していたエトルリア語などの影響を受けた。

古ラテン語では以下の21文字がしばらく使われた。ABCDEFZHIKLMNOPQRSTVX

このうち、C は [g] の音を表し、I は [i] と [j]、V は [u] と [w] の音価を持った。五つの母音字は長短両方を表したが、文字の上で長短の区別はなかった。紀元前3世紀になると C は [k] の音も表すようになり、K はあまり使われなくなった。また [g] の音を表すために G が使われるようになり、使われなくなっていた Z の文字と置き換えられた。

古ラテン語は、古典ラテン語に残る主格、対格(直接目的格)、与格(間接目的格)、属格(所有格)、奪格、呼格に加え、場所を表す依格があった。名詞の曲用では、第二変化名詞の単数与格および複数主格が o? だった。古典ラテン語における第二変化名詞単数の語尾 -us、-um はこの時代それぞれ -os、-om だった。また、複数属格の語尾は -?sum(第二曲用)であり、これはのちに -?rum となった。このように、古ラテン語時代の末期には母音間の s が r になる「ロタシズム」という変化が起きた。


古典ラテン語

紀元前1世紀以降、数世紀にわたって用いられたラテン語は古典ラテン語と呼ばれる。のちの中世、また現代において人々が学ぶ「ラテン語」は、通常この古典ラテン語のことをいう。

古典期においては、scriptio continua(スクリプティオー・コンティーヌア、続け書き)といって、分かち書きにする習慣がなかった(碑文などでは、小さな中黒のようなもので単語を区切った例もある)。また、大文字のみを用いた。さらにそれまで用いられていた文字に加え、Y と Z が新たに使われ始め、この時代に盛んに用いられたギリシャ語起源の外来語が表記された。以下が古典期のアルファベットである。ABCDEFGHIKLMNOPQRSTVXYZ

古典ラテン語では C および G はそれぞれ常に [k] および [g] であり、現代のロマンス諸語とは違い、 [s] や [t?]、[?]、[d?] などのように発音されることはなかった。Y を含めた6つの母音字は長短両方を表したが、ごく一時期を除き表記上の区別はされなかった。

古典ラテン語のアクセントは、現代ロマンス諸語に見られるような強勢アクセントではなく、現代日本語のようなピッチアクセント(高低アクセント)だった。文法面では、古ラテン語の依格は一部の地名などを除いて消滅し、呼格を含めれば六つの格が使用された。また以前の時代の語尾 -os や -om は、古典期には -us、-um となった。

この時代の話し言葉では、文末の -s は後ろに母音が続かない限り発音されない場合があった。また au は日常では [o?] と読まれた。このように古典期には、話し言葉と古風な特徴を残した書き言葉の乖離が起きていた。現在古典ラテン語と呼ばれるものはこの時期の書き言葉である。


ラテン文学の黄金期

紀元前1世紀頃。

マルクス・トゥッリウス・キケロ

ガイウス・ユリウス・カエサル

ウェルギリウス

オウィディウス


ラテン文学の白銀期

1世紀頃。

セネカ

タキトゥス

マルティアリス


俗ラテン語

古典期が終わると、人々が話すラテン語は古典語からの変化を次第に顕著に見せるようになっていった。この時代に大衆に用いられたラテン語は俗ラテン語と呼ばれる。2世紀、あるいは3世紀頃から俗ラテン語的な特徴が見られるようになっていたが、時代が下るにつれ変化は大きくなり、地方ごとの分化も明らかになっていった。

古典ラテン語には Y を除けば5母音があり、長短を区別すれば10の母音があったが、俗ラテン語になるとこれらは以下の7母音になった。[a] [?] [e] [i] [?] [o] [u]

古典期の長母音 [e?] は [e] に、[o?] は [o] に変化した。また短母音 [e] と [o] は、俗ラテン語ではそれぞれ [?] と [?] になった。古典期の V は、子音としては [w] と発音されたが、俗ラテン語の時代には [v] に変化していた。さらにアクセントはピッチアクセントから現代ロマンス諸語と同様の強勢アクセントに置き換えられていった。古典期の [k] と [g] も変化を起こした。これらは前舌母音([i] や [e])の前では軟口蓋音化し、それぞれ [t?]、[d?] の音になった。

俗ラテン語では動詞などの屈折にも変化が起きた。動詞の未来時制では、古典期の -bo に代わり habere(持つ)の活用形を語幹末に付した形式が用いられ始めた。指示詞 ille は形が変化し、次第に冠詞として用いられるようになっていった。名詞の曲用では格変化が単純化され、主格と対格は同一になり、属格と与格も統合された。単純化した名詞の格に代わって前置詞が発達していった。例えば属格に代わり de が、与格に代わり a が用いられ始めた。

イタリアやイベリア半島ではやがて名詞の格変化は消滅し、フランスでも12世紀頃には使われなくなり、ダキアで使用されたのちのルーマニア語を除いて格変化はなくなった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki