その後キング牧師は、泥沼化が進むベトナム戦争反対運動にも立ち上がったが、時代の中で「黒人社会」からも「白人社会」からも徐々に孤立していき、キング牧師を邪魔だと考える「敵」が増えていった。爆弾テロや刺殺(犯人は精神障害のある黒人女性)未遂もあったが、奇しくも命をとりとめている。
その様な状況下でも精力的に活動を続けていたものの、1968年4月4日に、遊説活動中のテネシー州メンフィスで"I've Been to the Mountaintop"(私は山頂に達した)をメイソン・テンプルで遊説後、メンフィス市内のロレアンヌ・モーテルのバルコニーで、白人男性のジェームス・アール・レイに撃たれる。弾丸は喉から脊髄に達し、病院に搬送されたが、間もなく死亡した。葬られた墓標には「ついに自由を得た」と穿たれている。
暗殺の前日にキング牧師がおこなった最後の演説は、詳しくは以下のようなものであり、自らの死を予見したかのようなその内容は、“I Have a Dream”と共に有名なものとなった。
…前途に困難な日々が待っています。 でも、もうどうでもよいのです。 私は山の頂上に登ってきたのだから。
皆さんと同じように、私も長生きがしたい。 長生きをするのも悪くないが、今の私にはどうでもいいのです。 神の意志を実現したいだけです。 神は私が山に登るのを許され、 私は頂上から約束の地を見たのです。
私は皆さんと一緒に行けないかもしれないが、 ひとつの民として私たちはきっと約束の地に到達するでしょう。
今夜、私は幸せです。心配も恐れも何もない。 神の再臨の栄光をこの目でみたのですから。
アメリカではキングの栄誉を称え、ロナルド・レーガン政権下の1986年より、キングの誕生日(1月15日)に近い毎年1月第3月曜日が「マーティン・ルーサー・キング・デー (Martin Luther King, Jr. Day)」として祝日になっている。なお、アメリカにおいて祝日となった故人は他にクリストファー・コロンブスとジョージ・ワシントンの2人である。
アメリカ国内において、アングロサクソン系を中心とした白人によるアフリカ系アメリカ人やネイティブ・アメリカン、日系アメリカ人をはじめとする少数民族に対する人種差別は未だなくなっていないものの、運動の結果、公民権法が施行されたことによる法的側面からの人種差別撤廃の動きを、平和的な手段によって大きく前進させた意味は大きいといえる。公民権運動に携わった時期及び凶弾に倒れた際の話は、日本の中学校3年英語教科書の教材として使用されている。
「人は兄弟姉妹として共に生きていく術を学ばなければならない。さもなくば、私たちは愚か者として滅びるだろう」は、キングがメンフィスで語った言葉である。
楽曲
吹奏楽曲であるJ・ホセイ作曲の「ひとつの声に導かれる時」はキング牧師の公民権運動がテーマとなっている。
スティーヴィー・ワンダーの楽曲「ハッピー・バースディ」(『Hotter Than July』に収録)はキング牧師の誕生日に捧げた曲である。
U2の楽曲「MLK」「PRIDE(IN THE NAME OF LOVE)」(『The Unforgettable Fire』に収録)はキング牧師に捧げた曲である。
マイケル・ジャクソンの「Man in the Mirror」のショートフィルム(ビデオクリップ)には、マハトマ・ガンディーらと共に、一瞬ではあるがマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの映像が登場する。
参考文献
『マーティン・ルーサー・キング自伝』 日本基督教団出版局 ISBN 4818404306
『私には夢がある――M・L・キング説教・講演集』 新教出版社 ISBN 4400421228
『汝の敵を愛せよ』 新教出版社 ISBN 4400520099
『自由への大いなる歩み――非暴力で闘った黒人たち』 岩波書店[岩波新書] ISBN 4004150035
『良心のトランペット』 みすず書房 ISBN 4622049406
『黒人はなぜ待てないか』 みすず書房 ISBN 4622049392
『キング牧師とマルコムX』 講談社[講談社現代新書]ISBN 4061492314
関連項目
クー・クラックス・クラン
公民権運動
非暴力
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
マハトマ・ガンディー
マルコムX
フレデリック・ダグラス
南部バプテスト連盟
外部リンクウィキメディア・コモンズには、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアに関連する ⇒マルチメディアおよび ⇒カテゴリがあります。
⇒スタンフォード大学 マーティン・ルーサー・キング・プロジェクト(英語)