様々な技術革新をベースとして、マイクロプロセッサが実現される要素がそろったのは1970年ごろのことである。三つのプロジェクトでほぼ同時に完全なマイクロプロセッサが生み出された。インテルの4004、テキサス・インスツルメンツ (TI) のTMS1000、Garrett AiResearchのCentral Air Data Computer (CADC) である。
1968年Garrettはアメリカ海軍のF-14トムキャット戦闘機向けのフライト制御用コンピュータとしてデジタルコンピュータの開発を要請された。設計は1970年に完了した。MOSベースの複数チップからなるCPUである。そのデザインは従来の機械システムに比較して小さくて信頼性が高く、初期のトムキャットで採用された。しかしその先進性ゆえ、米海軍はこれを商用として一般に売り出すことを禁止し、その措置は1997年まで続いた。そのため、CADCとMP944チップセットは最近までほとんど知られていなかった。
TIは4ビットのTMS 1000を開発。電卓向けプログラムを内蔵したTMS1802NCを登場させたのが1971年9月17日である。インテルが開発した4004型4ビットCPUは1971年11月15日にリリースされた。開発者は、テッド・ホフ、フェデリコ・ファジン、そして嶋正利らであった。
TIはマイクロプロセッサに関する特許を出願した。ゲイリー・ブーンはシングルチップのマイクロプロセッサアーキテクチャに関する特許を1973年9月4日に獲得した(米国特許番号 : 3,757,306)。どの企業が最初に研究所レベルでマイクロプロセッサを動作させたのかは定かではない。1971年と1976年、インテルとTIは包括的なクロスライセンス契約を締結し、インテルはTIの持つマイクロプロセッサの特許に対してロイヤリティを支払った。この間の経緯は、サイリックスとインテル間の訴訟に関する法廷文書に記述されている。この訴訟においてTIはマイクロプロセッサに関する特許の所有者および仲裁人として関与した。
チップ上のコンピュータという考え方はマイクロプロセッサのバリエーションである。マイクロプロセッサのコア (CPU) とメモリとI/O(入出力)をひとつのチップに詰め込むというこのアイデアに関する特許(当時はマイクロコンピュータ特許と呼ばれた)は、TIのゲイリー・ブーンとマイケル・J・コクランに与えられた(米国特許番号 : 4,074,351)。
インテルはComputer Terminals Corporation(後のDatapoint)から端末向けチップの設計を請け負った。Datapointは結局そのチップを使わないこと決め、インテルはそのチップを8008という名前で1972年4月に売り出した。これが世界最初の8ビットマイクロプロセッサである。これを使ってMark-8というコンピュータキットが販売された。8008とその後継である8080はマイクロプロセッサ市場を創造したのである。
4004の後継である8008は世界初の8ビットマイクロプロセッサである。これらのプロセッサはインテルの8080、ザイログのZ80、他のインテル製派生プロセッサの先駆者である。対抗するモトローラのMC6800アーキテクチャをコピーして強化したのがモステクノロジーの6502であり、Z80と覇を競った。1980年代前半のことである。
Z80も6502もシステム全体のコストを低減することに注力しており、パッケージを小さくし、要求されるバスを単純なものにし、それまで外部に別チップで持たなければならなかった回路(例えばZ80はメモリコントローラ)を内蔵した。これにより1980年初頭にホームコンピュータ市場が新たに生まれ、それなりに使えるマシンが、99USドルで売られるようになった。
モトローラが切り札としてリリースしたMC6809は命令セットに直交性があり美しい設計が特徴の、事実上最もパワフルな8ビットマイクロプロセッサであり、当時製品化されたマイクロプロセッサの中で最も複雑な回路から成っていた。これ以降マイクロコードが複雑な回路に取って代わるようになる。よりパワフルなプロセッサを設計するにあたって、回路だけでは複雑になりすぎるようになってしまったためである。
他の初期の8ビットマイクロプロセッサとしてSigneticsの2650がある。その一風変わったパワフルな命令セットは一時関心を集めた。
航空宇宙分野での最初のマイクロプロセッサはRCAのRCA 1802(別名 CDP1802、RCA COSMAC)は、1970年代のNASAの宇宙探査機ボイジャーとバイキングに使われた。木星探査機ガリレオにも搭載されている(1989年出発、1995年到着)。CDP1802が使われた理由は、消費電力が極めて小さいことと、製造プロセス (Silicon on Sapphire) が宇宙線や放電に他のどんなプロセッサよりも強いからであった。したがって1802は最初の放射線耐性マイクロプロセッサと呼ぶにふさわしい。
最初の複数チップで構成された16ビットマイクロプロセッサは1973年に登場したナショナル セミコンダクターのIMP-16である。8ビット版のチップセットはIMP-8として1974年に登場した。1975年、ナショナル セミコンダクターは最初の16ビットマイクロプロセッサPACEを開発、後にNMOS版のINS8900を開発した。
その他の初期のマルチチップ16ビットマイクロプロセッサとしてはDECのOEM用ボードセットのLSI-11とミニコンピュータPDP-11/03、フェアチャイルドセミコンダクターのMicroFlame 9440があり、これらは1975年から1976年に登場した。