B-47とB-52で大型ジェット機の基本型を確立したボーイングは、アメリカ空軍初の大型ジェット輸送機として採用される事を見込んで、1950年頃から自社資金で開発に着手し、1954年に原型機367-80(ダッシュ80)を初飛行させた。パイオニアにつきものの初期トラブルを克服した後、当時需要が切迫していた空中給油機仕様のKC-135として先ず大量発注を受けた。
KC-135の成功を見て、ファン・トリップ率いるパンアメリカン航空などの大手航空会社を中心に旅客型への要望が高まり、707の開発が正式に開始した。世界最初のジェット旅客機であるイギリスのデハビランド社が開発したDH.106 コメット Mk.1 の初就航(1952年5月2日)に遅れること6年、ソ連のツポレフTu-104の就航(1956年9月1日)に遅れること2年の1958年10月26日に、パンアメリカン航空のニューヨーク-パリ線に就航した。ライバルのダグラスDC-8に先立つこと1年弱、コンベア880に先立つこと1年であった。
人気パンアメリカン航空のボーイング707-120エル・アル航空のボーイング707-320B
コメット、カラベル等のヨーロッパ勢に先行された707だったが、その後の運用と競争では大きくリードした。コメットMk.1 は、1952年から1954年にかけて機体構造上の問題で連続事故を起こし、4年近く旅客運用が停止された。また初期のコメットは航続距離が短く、乗客数もダグラスDC-6やDC-7C、ロッキード・コンステレーション等の従来のプロペラ機と同等かそれ以下であったが、その一方で高速性のみならず快適性もジェット機はプロペラ機の比ではない事が明らかになり、過渡的なターボプロップ機よりむしろ、本格的なジェット旅客機の登場が待たれるようになっていた。
乗客数も速度も標準的なプロペラ機の約2倍の707は、コメットMk.1 の事故調査で得られた教訓を採り入れ入念な安全対策が図られる傍ら、アドバイザーとして(多分に宣伝効果を狙って)チャールズ・リンドバーグを招聘し、初めから大西洋無着陸横断が可能な仕様で設計され、デビュー前から圧倒的な人気を誇った。巨大企業ボーイングがFAAに対する政治力を発揮して、対策改良型コメット Mk.4 に対する耐空証明再発行を先延ばしし続けさせたとも言われており、その間に十分な開発期間が確保された。
1958年にコメット Mk.4 が大西洋路線に漸く再就航した時には、707の進空は間近の情勢で、殆どの航空会社が完全に第2世代の707やDC-8を選択した。懸念された燃費も旺盛な旅客需要で相殺されることが分かり、その後も順調に受注数を伸ばして、1991年に生産中止(民間型は1982年に生産中止)されるまでの33年間に、軍用型を含めると1,010機が製造された。処女作にしてベストセラーになった707は、大型機の老舗ボーイングの声価を更に高めた。
1980年代後半頃より老朽化や騒音規制の強化により引退する機材が増えてきたものの、持ち前の堅牢性から幾度かの近代化改修を受け今なお世界中で活躍しており、他にもアメリカ空軍を始めとする世界中の空軍・政府で軍用型が使用されている。これら軍用型にはエンジンを高バイパス比、低騒音型のCFM56に換装したアップデート版も含まれる。
なお、大手航空会社においては、より大型のマクドネル・ダグラスDC-10型機やロッキード L1011トライスターの他、座席数は同等ながら、双発で燃料消費が少ない上に、長距離路線への就航が可能なボーイング767型機やエアバスA310型機などがその代替となった。
-120カンタス航空のボーイング707-138型(ジョン・トラボルタ所有機)
最初に作られた707が、プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のターボジェットエンジン「JT3C」型を搭載した-120である。しかし、燃費が悪く航続距離が短かったため、大西洋横断飛行を行う場合はアイルランドのシャノンやカナダのガンダー、グースベイなどに給油のため着陸せねばならず、せっかくのスピードを存分に生かすことができなかった。また、垂直尾翼の構造に問題があり、ダッチロール(尻を振るような横揺れ現象)傾向も指摘されたが、その後改良され、その知識は後の-320の設計時でも活かされた。
変種として、当時から長距離路線を多く運航していたオーストラリアのカンタス航空の要望により、航続距離延長を目的に胴体を短縮したタイプ「-138」がある。後にエンジンをJT3Dターボファンエンジンに換装され、他社に転籍した後も1980年代初頭まで活躍した。
-120の機体に「JT3C」型エンジンのパワーアップ版の「JT4A」型を搭載したのが-220である。燃費効率が悪く航空会社からの評判が悪かったため、わずか5機がブラニフ航空に納入されたにとどまった。
-220の胴体と翼を延長し搭載量を増した発展型で、燃料搭載量が増加し航続距離が延びたことを誇示するために「Intercontinental(インターコンチネンタル=大陸間飛行)」の愛称が付けられた。