また、1個の電子が量子数nの定常状態から量子数n'の定常状態に移るとき、そのエネルギー準位の差のエネルギーを、1個の光子として吸収または放出する。すなわち、量子数nにおけるエネルギー準位および量子数n'におけるエネルギー準位をそれぞれ、とすると
ここで、νは光子の振動数であり
のときは光子を吸収し、
のときは光子を放出する。 これを振動数条件という。
この量子条件に、1924年にルイ・ド・ブロイによって提唱されたド・ブロイ波の式を導入することによって、量子条件のもつ意味がより明瞭になる。 ド・ブロイ波の理論では粒子に波動としての性質をみとめ、その波長は粒子の運動量pを用いて
と表される。これを量子条件に導入すると
すなわち、電子を物質波としてみた場合、電子の軌道は電子の物質波としての波長の整数倍になることを示している。 電子が波として軌道を一周したときに位相がもとの位相と重なればその波は定常波として永続的に残ることになる。つまりボーアの量子条件は電子が波としてふるまっていることを示唆しているのである。
ボーアの原子模型は水素原子の輝線スペクトルに関する実験結果を説明することができる。
量子数nにおける水素原子の電子の速さをvn、軌道半径をrnとすると、 クーロン力が等速円運動の向心力となるので
また、ボーアの量子条件より
以上の2式より、
ここで、量子数nにおけるエネルギー準位Enは次のように表される。
これに上で求めたvnおよびrnを代入すると
この式からわかるように、量子数が大きいほどエネルギー準位は高い。
ここで振動数条件より、n>n'とすると、量子数nの定常状態から量子数n'の定常状態に移るときに放出される光の波長λは次の関係を満たす。
よって
ここで
とすると
となり、バルマー系列等、水素原子のスペクトルが満たす関係式と同様の表式が得られる。
このRがリュードベリ定数と同値ならば、この式はそれまでに行われた水素原子の発光スペクトルの実験結果からヨハネス・リュードベリが導いた式と一致する。実際に各物理定数を代入するとこのRはリュードベリ定数の値を見事再現し、理論の正しさが実証された。
水素原子の電子はn=1の状態が通常の安定した状態であり、その状態を基底状態という。基底状態からよりエネルギーの高いの状態に移ることを励起といい、の状態を励起状態という。 基底状態の水素原子の電子の軌道半径a0をボーア半径と呼ぶ。 ボーア半径は上で求めた
にn=1を代入することにより求まる。
ボーア半径の値は
である。
ここで、電子と原子核が無限に離れた状態を考えると、そのときの電子のエネルギーは
となる。電子と原子核が無限に離れた状態とはすなわちイオンになった状態のことである。したがって水素の第一イオン化エネルギーは
であり、En < 0より、基底状態におけるエネルギーの絶対値が第一イオン化エネルギーとなる。よって
であり、その値は13.6eVとなる。
表・話・編・歴水素原子のスペクトル
線スペクトル系列1:ライマン系列 2:バルマー系列 3:パッシェン系列 4:ブラケット系列 5:プント系列 6:ハンフリーズ系列
関連用語ボーアの原子模型 ・ リュードベリ定数 ・ ラムシフト ・ シュタルク効果 ・ ライマンα
カテゴリ: 量子力学 | 原子
更新日時:2008年8月23日(土)23:36
取得日時:2008/10/07 00:40