落下物などから作業者の頭部を保護するために着用する、合成樹脂を主なる原料に製作された帽子のうち、規定の国家検定を通過したものに対していう。通常は、単に保護帽、若しくは安全帽・保安帽とよばれ、英語ではscalp guard(頭皮保護具)と称する。その構造としては、“殻”の部分である「帽体」と「内装体」から成り、内装体はさらに、保護帽を着用者の頭周サイズに合わせるための「ヘッドバンド」、保護帽の頭部への当たりを良くしたり衝撃吸収の役目をもつ「ハンモック」、保護帽の脱落防止の役目をもつ「あご紐(特に、耳の部分にあたるV字の紐を「耳紐」と呼ぶが、通常はセットで扱う)」、そして墜落時保護用(後述)のものには乗車用安全帽に同じく、帽体と内装との間に衝撃吸収ライナー(発泡スチロール製)が入れられる。
加えて、帽体内部には検定試験(後述)に合格した証として「労・検ラベル」が貼付され、型式・検定取得年月・合格番号・製造業者名・製造年月・検定区分 が表示されている。ハンモックに合繊テープを使用している型式の一部においては「環ひも」も存在するが、これは内装組み立ての際、補助的に使われるパーツである。ちなみに、保護帽の規格では環ひもについて「調節できないこと」としているが、これは使用者が勝手に環ひもの内径を変えることによる危険を防止するためのものである。環ひもを緩めると被りは深くなる反面、頭頂部と帽体との距離は近接することになるが、そのような状態で物体が帽体に衝突すると、その衝撃でハンモックが「伸びきる前」に頭部が帽体と接触するという事故が生じて大変危険である。
一方、国家検定上の区分としては、物体の飛来・落下による危険を防止する「飛来・落下物用」、墜落・転落による危険を防止する「墜落時保護用」、電気による危険を防止する「電気用」の三種類に分類されるが、現在の墜落用保護帽は飛来落下物用も兼ねるのが普通である。併せて、近年では 折り畳めることや子ども向けであることを特徴とした製品が国家検定も取得し販売されるなどしており、これまで専ら作業現場で使用されるものでしかなかった保護帽の防災用品としての地位も築きつつある。
なお、保護帽は内装を組み付けた直後の何もデザイン加工されていない状態で使用される事が余り無く、メーカーや加工業者に名入れ(ロゴマーク・社名など)を依頼したり、使用者自身がラベルに記名・貼付した状態で使用することが一般的である。また使用者が事故に遭ったりしたときのために、血液型を書いておくことも多い。名入れはシルクスクリーンによって行われるほか、作業者の階級表示を兼ねた反射ラベルを帽体周囲に貼付したり、玉掛作業員を判別しやすくするための緑十字(帽体上面に120~150mm四方)の表示を行ったり、オプションとして用意されているデザインステッカーを貼付するといった加工も行われ、保護帽の納入後に使用者側で 新規入場者教育修了証・担当業務・保有資格などのラベルを貼付することもある。
下記の作業において、使用者は労働者に保護帽を着用させなければならない。また、労働者は指示された場合に保護帽を着用しなければならない。
飛来・落下物用
物体の飛来落下の恐れのある場所における作業型枠支保工の組み立て作業足場の組み立て等の作業クレーンの組立・解体作業建設用リフトの組立・解体作業ずい道等の掘削作業採石作業時船内荷役作業港湾荷役作業造林作業時木馬または雪そりによる運材の作業木造建築物の組み立て作業コンクリート造工作物の解体等の作業
※上記は労働安全衛生規則における代表例。詳細は ⇒保護具と安全衛生法令
墜落時保護用
最大積載量5t以上の大型貨物自動車における荷の積み卸し作業(ロープ・シート掛け等を含む)。最大積載量5t以上の不整地運搬車における荷の積み卸し作業(ロープ・シート掛け等を含む)。床面から2m以上の はい(積荷)の上における作業。2m以上の高所作業(囲い・手摺などを設けられない場合は安全帯も使用)。
※ 荷役作業における墜落用保護帽の使用規定は、「保護帽の規格」の前身である「荷役用安全帽」の名残と思われる。
電気用(7000V以下)
高圧活線作業低圧活線作業
※ 電気作業においては、FRP製および通気孔のある保護帽の使用が禁止されている(コーナン商事の店舗においてPB商品として販売されている保護帽はこれに当て嵌まらないが、コスト削減の為に電気用としての検定試験は取得していない)。通気孔や鋲固定のための穴を通して感電する恐れのあること、またFRP帽については、材質の性格上存在する極小さな隙間から通電する恐れがあるためである。加えて「帽体の縁3cmを残して水に浸し、内外より20kVの電圧を1分間印加し、絶縁破壊の有無を見る」という電気用保護帽の試験法ゆえに、通気孔が存在するとそもそも試験が行えない、という事情もある。
行政指導通達による保護帽の着用規定も存在する。
S50.4.10 基発第218号 荷役、運搬機械の安全対策について
コンベヤ、フォークリフト、ショベルローダ、移動式クレーン、ダンプトラック等の機械を使用する作業
S60.2.19 基発第91号 「林業における刈払機使用に係る安全作業指針」
刈払機の刈刃破損、反発、および転倒による災害を防ぐ。
S60.4.5 基発第185号の3 ストラドルキャリアーによる労働災害の防止について
夜間にストラドルキャリヤーの稼動区域内で作業をさせる場合は、夜行塗料を塗布した保護帽を着用させる。
H5.3.2 基発第123号 清掃事業における総合的労働災害防止対策の推進について
ごみの積替え作業、焼却時の攪拌作業等。
H5.5.27 基発第337号の2 建設業における総合的労働災害防止対策の推進について
木造家屋建築工事等小規模建築工事における墜落、木造加工用機械、飛来・落下物による災害を防止するため。
H8.11.11 基発第660号の2 木造家屋等低層住宅建築工事における労働災害防止対策の推進について
高所作業に従事する作業者に対しては墜落用保護帽を着用させること。
検定試験法
飛来・落下物用
衝撃吸収性試験人頭模型にヘッドバンドが密着しないよう装着したのち、5kgの半球を1mの高さから自然落下させる。人頭模型に加わる衝撃荷重が4.9kN(約500kg)以下であれば合格。耐貫通性試験人頭模型にヘッドバンドが密着しないよう装着したのち、3kgの円錐(先端角度60°)を、帽体頂部を中心とする円周100mmの範囲内に1mの高さから自然落下させる。その際、先端が人頭模型に接触しなければ合格。
墜落時保護用
衝撃吸収性試験衝撃点が保護帽の前頭部及び後頭部となり、且つヘッドバンドが密着しないよう人頭模型(中心線が水平に対し30度傾斜)に装着したのち、5kgの平板を1mの高さから自然落下させる。その際の衝撃荷重が9.81kN以下であり、且つ 7.35kN以上の衝撃荷重が 3/1000秒以上継続せず、4.90kN以上の衝撃荷重が4.5/1000秒以上継続しなければ合格。耐貫通性試験1.8kgの円錐(先端角度60°)を0.6mの高さから自然落下させた際、帽体内面への先端の突出量が15mm以下であれば合格。試験は前頭部・後頭部・両側頭部それぞれについて行う。
電気用
帽体の縁3cmを残して水に浸し、内外より20kvの電圧を1分間印加する。その際、漏えい電流が10mA以下であり、且つ絶縁破壊がなければ合格。
特記事項
何れの検定試験も有効期限は3年間であり、期限到来の折は同等の試験を再度行わなければならない。
試験に用いる人頭模型は、いちょう・かえで・なら・ぶな・ほう を材料とし、重量は2.8kgから3.2kgとする。
衝撃吸収性試験の前には高温処理(48℃?52℃の場所に継続して2時間置く)、低温処理(-12℃ ? -8℃の場所に継続して2時間置く)、浸せき処理(20℃?30℃の水中に継続して4時間置く)を施し、飛来・落下物用は処理後1分以内、・墜落時保護用については3分以内に試験を終了するものとする。このような処理は、種々の作業条件を考慮して行われるものである。
電気用保護帽については、労働安全衛生規則第351条において「六月以内ごとに一回、定期的にその絶縁性能について自主検査を行わなければならない」と定めている。特例として、六月を超える期間使用しないものに関してはその当該期間の検査規定が免除されるが、使用再開時にはやはり同等の検査を行う必要が生ずる。また、検査時は「検査年月日」「検査方法」「検査箇所」「検査の結果」「検査を実施した者の氏名」「検査の結果に基づいて補修等の措置を講じた場合の内容」を記録し、これを三年間保存しなくてはならない。
着用方法について
ヘッドバンド(後頭部の調節具)は、自身の頭部サイズに調節すること。
2000年以降、ラチェット式のヘッドバンドが普及している。片手で操作できる製品も存在するが、そうでないものであっても、これまでより簡便に調整が可能。共通点は、被った状態で調節できることだ。
後ろに傾けないで、真っ直ぐに被ること(内装の下辺が眉の上に来るぐらいが適当)。