239Puの中に1%の不純物として240Puが含まれると、ガンバレル型核兵器の中で分裂連鎖反応が受容しがたいほど早く始まり、その材料がほとんど核分裂しない間にその兵器をばらばらに吹き飛ばしてしまう。この240Puの混入が避けられないことが、プルトニウム武器ではインプロージョン方式の設計にしなければならない理由である。理論的には100%純粋な239Puならばガンバレル型装置を構築することができるかもしれないが、このレベルの純度は現実には達成し得ないほど困難である。
なお240Puの混入課題は核兵器開発において2つの側面をもつ。ひとつは混入のためにインプロージョン技術を開発する必要が生じ、マンハッタン・プロジェクトに遅れと障害をもたらした。もうひとつは同じくその障害は現在では核拡散に対する障壁になった。 なお239Puの同位対比が約90%を越えるプルトニウムは兵器級プルトニウム(Weapon Grade Plutonium)と呼び、 1972年に機密指定が解除された資料である「WASH-1037 Revised An Introduction to Nuclear Weapons」に基づくと,兵器級プルトニウムは三つの等級に分けられている。等級238Pu239Pu240Pu241Pu242Pu
Hanford0.05%以下93.17%6.28%1.54%0.05%以下
Savanna0.05%以下92.99%6.13%0.86%0.05%以下
Rocky Flats Soil極微量93.6%5.8%0.6%極微量
一般的な商用原子炉である軽水炉から得られたプルトニウムは少なくとも20%の240Puを含んでおり、原子炉級プルトニウムと呼ばれる。
原子炉級プルトニウムでも核兵器の製造は可能であるという主張もあるが、不安定な原子炉級プルトニウムでは爆発装置の製造が兵器級プルトニウムに比べて困難であり、兵器としての信頼性にも欠けるため、わざわざ原子炉級プルトニウムで核兵器を作るメリットは殆ど無いといえる。
福井県にあるもんじゅのような高速増殖炉は、兵器級プルトニウムを産出する。
プルトニウムの同位体および化合物はすべて放射性で有毒である。化学毒性についてはウランに準ずると考えられているが[5]、その化学毒性が現れるよりもはるかに少ない量で放射線障害が生じると予想されるため、化学毒性のみでプルトニウムの毒性を論ずることはできない[6][7]。
プルトニウムは重金属の仲間であることから、ウランと同様に腎臓への障害が予想され、その大きさは鉛と同程度と推定される(鉛はプルトニウムよりも人類に馴染みのある元素だが相当に有害な物質でもある。詳しくは鉛またはテトラエチル鉛を参照)。また、ランタノイド元素とアクチノイド元素の同じ順番にある元素は互いに似ている傾向があることから、プルトニウムはランタノイドで同じ順番にあるサマリウムと似ていると考えられている。
また、プルトニウムは一部報道によって、時に「人に知られているうちで最も強い有毒物質」とされているが、専門家からは誤りであるという意見もある。
プルトニウムの毒性は既知の毒物の中でも最悪レベルで、「角砂糖5個分で日本が全滅」するものであるという指摘がある[8][9]。これについては、電気事業連合会による、事実誤認であるとの反論がある[10]。電気事業連合会によれば、プルトニウムの年摂取限度量は国際放射線防護委員会の勧告では1人あたり0.3マイクログラムであり、1グラムは約300万人の年摂取限度量に相当するとなる。2006年時点の統計による日本国の人口は127767944人であるから、これを3000000で割ると約42.589グラムが、日本国民全てに年摂取限度量分のプルトニウムを吸入させる為に必要な量となる。しかし年摂取限度量とは、「この量までなら1年あたりに吸入してもまず問題はない」とされる量であるから、日本国民が全滅する為にはこれを大幅に越える量を摂取しなければならない。具体的には年摂取限度量が想定する、1年間で20ミリシーベルトではなくその350倍、一度の被曝で99%の人間が死亡するとされる7000ミリシーベルトを発するだけの量が必要となる。すなわち42.589×350=14906.15で、およそ14.9キログラムのプルトニウムである。これを5で割った約3キログラムが、問題の角砂糖1個あたりの質量に相当する。体積で考えると、プルトニウムの比重はおよそ19.8なので3キログラムの立方体の体積はおよそ152立方センチメートル。一辺の長さはおよそ5.32センチメートルである。なお、上記の計算は放射線による人体への悪影響のみを前提とした計算であり(プルトニウムの化学毒性を明確に示した研究は存在していないとされる)、また年齢や体格による誤差も無視した、非常に大雑把な数字である。また1個3キログラムの角砂糖や一辺の長さが5.32センチメートルの立方体の角砂糖が製造販売されているかどうかは、未確認である。
プルトニウムを嚥下し消化管に入った場合、そのおよそ0.05%程度が吸収され、残りは排泄される。[11]吸収されたプルトニウムは、骨と肝臓にほぼ半々の割合で蓄積される。皮膚との接触については、傷が無い限り吸収されない。
最も重要な取り込み経路は、空気中に粒子状になったプルトニウムの吸入である。気道から吸入された微粒子は、大部分が気道の粘液によって食道へ送り出されるが、残り(4分の1程度)が肺に沈着する。沈着した粒子は肺に留まるか、胸のリンパ節に取り込まれるか、あるいは血管を経由して骨と肝臓に沈着する。[12]
プルトニウムは一度吸収されると体外へ排出されにくいのが特徴である。生物学的半減期はウランやラジウムと比べても非常に長く、骨と肝臓でそれぞれ20年と50年である。吸収線量あたりの有害さは核種や同位体によらずラジウム等と同程度であるが、プルトニウムの扱いに特に注意が必要なのは、まさに排出されにくいという特徴によるものである。
プルトニウムは人体には全く不必要な元素である。毒性の強い元素の中には必須ミネラルで微量は人体にとっても必要なものもあるが(例:ヒ素、セレン)、プルトニウムは必須ミネラルでさえない。
プルトニウムの臨界量はウラニウム-235のそれの3分の1しかないので、臨界量に近い量のプルトニウムが蓄積しないように注意しなければならない。形状が重要である。すなわち球体のようなコンパクトな形にしてはならないのである。溶液状のプルトニウムは固体より少ない量で臨界量に達する。それが単に溶けるか破片になるのではなく爆発するためには超臨界を大きく越える量を必要とするので、兵器級の核爆発は偶然に生じることは有りえない。しかしながら、ひとたび臨界量に達すれば致死量の放射線が発生する。
臨界事故は過去に何度か起きており、それらのうちのいくつかで死者を出している。1945年8月21日、ロスアラモスで致死量の放射線を発生させた事故は、6.2kgの球状プルトニウムを囲んだタングステン炭化物レンガの不注意な取り扱いに起因していた。このとき科学者ハリーDaghlianは推定510 rem(5.1Sv)の被曝をし4週間後に死んだ。その9か月後に、別のロスアラモスの科学者ルイスSlotinは、ベリリウムの反射材、および以前にDaghlianの生命を奪ったのとまさに同じプルトニウムコア(いわゆる「デーモンコア」)による同様の事故で死んだ。これらの出来事は、1989年の映画「ファットマンとリトルボーイ」でかなり正確に描写された。1958年には、ロスアラモスのプルトニウム精製工程で、混合容器の中で臨界量が形成され、クレーン操作員が死亡した。この種の他の事故が、ソ連、日本および他の多くの国々で起こった(詳しくは原子力事故を参照)。1986年のチェルノブイリの事故は、大量のプルトニウムの放出を引き起こした。
さらに、金属プルトニウムには発火の危険がある。特に素材が微粒子に分割されている場合が危険である。金属プルトニウムは酸素および水と化学反応し、水素化プルトニウム、ピロリン酸化合物が蓄積するかもしれないが、これらは室温の空気中で発火する物質である。プルトニウムが酸化してその容器を壊すとともに、プルトニウムが相当に拡散する。