1958年の国籍法を下敷きにして、1985年に公民権法(国籍法)が制定されたが、その際、定住歴の浅い住民に対する国籍付与条件が厳しくなり、国籍を実質的に剥奪された住民が特に南部在住のネパール系住民の間に発生した。そもそも、ブータン政府は彼らを不法滞在者と認識しており、これはシッキムのような事態を避けたいと考えていたための措置だったと言われる。
その一方で、ブータンの国家的アイデンティティを模索していた政府は、1989年、「ブータン北部の伝統と文化に基づく国家統合政策」を施行し、チベット系の民族衣装着用の強制(ネパール系住民は免除)、ゾンカ語の国語化、伝統的礼儀作法(ディクラム・ナムザ)の順守などが実施された。1988年以降、ネパール系ブータン人の多いブータン南部に於いて上記「国家統合政策」に反対する大規模なデモが繰り広げられた。この件を政府に報告し、ネパール系住民への対応を進言した王立諮問委員会のテクナト・リザル(ネパール系)は、反政府活動に関与していると看做され追放される。
この際に、デモを弾圧するためネパール系ブータン人への取り締まりが強化され、取り締まりに際し拷問など人権侵害行為があったと主張される一方、チベット系住民への暴力も報告されている。混乱から逃れるため、ネパール系ブータン人の国外脱出(難民の発生)が始まった。後に、拷問などの人権侵害は減ったとされる。国王は国外への脱出を行わないように呼びかけ現地を訪問したが、難民の数は一向に減らなかった。この一連の事件を「南部問題」と呼ぶ。後に、ネパール政府等の要請によりブータンからの難民問題を国連で取り扱うに至り、ブータンとネパールを含む難民の流出先国、国連(UNHCR)により話し合いが続けられていたが、2008年3月、難民がブータンへの帰国を拒んだため、欧米諸国が難民受け入れを表明し、逐次移住が始まる予定である。
ブータンでは近年、地球温暖化による氷河湖決壊大災害が危惧されている。1994年10月にはラフストレン氷河湖付近のルゲ氷河湖が決壊し、古都プナカに土石水流が押し寄せた。
ヒマラヤ地域では毎年0.1度ずつ気温が上昇しており、このままでは28年後にはヒマラヤの氷河がすべて融解するとした国連報告書が2007年に公表された。ブータン北部には氷河湖が約2670あり、早期の決壊危険性がある湖は25ある。決壊した氷河湖は、河川沿いに高度差7千メートルで一気に、インド東部やバングラデシュなど周辺国にも流れ落ちる。
ブータンのキンザン・ドルジ首相は、「ヒマラヤの氷河がこれまでにないスピードで解け始めている。わが国北部の氷河湖が決壊する危険も高まっており、決壊を防ぐための早急な技術・財政支援を先進国に求めるほかない」と、2007年インドネシアで開催された気候変動枠組条約COP13会議に期待を寄せた。
詳細はブータンの文化を参照
ブータンは、気候・植生が日本とよく似ている上に、仏教文化の背景も持ち合わせており、日本人の郷愁を誘う場合も多い。これは、モンスーン気候に代表される照葉樹林地帯(ヒマラヤ山麓〜雲南〜江南〜台湾〜日本)に属しているためで、一帯では類似の文化的特徴を見出す事ができる[要出典]。
食文化においては、ブータンはトウガラシの常食と乳製品の多用という独自の面を有しつつ、赤米、蕎麦の栽培、納豆、酒文化(どぶろくに似た醸造酒「シンチャン」や焼酎に似た蒸留酒「アラ」)などの日本人の琴線に触れる習慣も多い。また、伝統工芸においては、漆器や織物などの類似点もある。
習俗の面では、ブータン東部では最近まで残っていた「夜這い・妻訪い婚」や「歌垣」などが比較的注目される点であろう。ブータンの男性の民族衣装「ゴ」は日本の丹前やどてらに形状が類似していることから、呉服との関連を指摘する俗説もあるが、「ゴ」の起源は中央アジアとされており、日本の呉服とは起源が異なる。男性の民族衣装がチベット系統であるのに対して、女性の民族衣装「キラ」は巻き衣の形式を取り、インド・アッサム色が濃い。北から流入したチベット系文化と元来存在した照葉樹林文化が混在しているといえる。
伝統的な競技としては、国技の弓術が代表的である。子供はダーツのような「クル」、石投げなどで遊ぶ。武器の扱えない僧侶は石投げに興じる事が多いが、近年では聖俗問わずサッカー人気も高い。特にサッカーや格闘技はケーブルテレビの普及以降、爆発的に人気を獲得した。
近代化の進む中、チベット仏教は現在でも深くブータンの生活に根ざしている。ブータン暦の10日に各地で行われるツェチュという祭は今でも交際の場として機能している。その他、宗教的意匠が身近なところに溢れ、男根信仰も一般的である。宗教観や古い身分制度に基づく伝統的礼儀作法(ディクラム・ナムザ)は厳格で、国家公務員の研修や学校教育に取り入れられている。公的な場所に出るときは、正装が義務付けられる。
ブータンの大学は、タシガン県にある ⇒シェルブツェ・カレッジ(英文表記:The Royal University of Bhutan,通称:カンルン大学)が唯一の大学である。
日付日本語表記現地語表記備考
2月21−23日現国王誕生日太陽暦
5月2日第3代国王誕生日太陽暦
6月2日現国王戴冠記念日太陽暦
7月30日第3代国王逝去日太陽暦
9月22日安雨居Blessed Rainy Day太陽暦
11月11日第4代国王誕生日太陽暦
12月17日建国記念日太陽暦
1月1日-2日新年Losarブータン暦
4月15日花祭りLord Buddha’s Parinirvanaブータン暦
5月10日パドマサンババ生誕記念日ブータン歴
6月4日初転法輪The First Sermon of Lord Buddhaブータン歴
ダサインDashainネパール暦
9月22日神降祭 ラパウトゥーチェンDecending Day of Lord Buddhaブータン歴
11月5日Meeting of Nine Evilsブータン歴
12月1日Traditional Day of Offeringブータン歴
この他、ツェチュなど各ゾンカク独自の祝祭日がある。また、ティンプーでは初雪の日は休日になるという慣例がある。