覆面パトカーは平時の外観は一般車両と同じ様相をしており、緊急走行開始時や対象者検挙時にのみ赤色灯を露出させサイレンを鳴らすパトカーの事。パトカーであると気づかれずに不審車両や不審人物への職務質問が出来るので、不審者を取り逃がす割合が低い。正式には取締りに用するものを「私用概態警邏車」、要人警護に用するものを「警護車」、犯罪の捜査の用に供するものを「捜査車両」といい、総称してこの3種を覆面パトカーと呼び単に「覆面」や「覆面車」と略される時もある。但し捜査車両の中には緊急自動車指定(騒音走行認定)を受けておらず、着脱式赤色回転灯とサイレンを装備していない一般車両も存在する。また覆面パトに乗務する警察官は必ずしも警察の制服を着ているとは限らず、「私服警察官」として一般人と同様にスーツを着てパトロールを行う場合もある(警ら・交機の覆面パト隊員は制服・ヘルメット着用、機捜の覆面パト隊員はスーツ着用というのが一般的)。
私用概態警邏車は、警護車同様に赤色警光灯が車内天井部に格納されており、緊急時にはルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせり上がって来る(かつて180度反転して収納されていた構造から「反転式」と呼ばれるが、現行製品は格納スペースの中で横倒しになっており、蓋が開く動きに連動するアームによって外部に露出させる)。
私用概態警邏車は交通機動隊(交機)や高速道路交通警察隊(高速隊)、また警察署(所轄署)の交通課などに配備されて主に交通取締りを行なっている。交通機動隊など交通違反取締りを行う車両には、屋根中央部分から格納されている赤色灯がスイッチ操作により自動的にせり上がるようになっている。そのため、車内天井には反転灯を収納する場所の窪み(その形状から“洗面器”と呼ばれる事がある)がある。また、車内に乗っている警察官は原則として交通機動隊の青色制服または合皮製黒色制服を着用することになっているので、車内をよく観察すれば警察車両であると判別できる。 例外として静岡県警のローレルクラブS(2台)や各地の暴走族(マル走)対策車両などには、捜査用車両と同様にマグネット式の赤色灯を使うものが存在し、マル走対策などでは交通機動隊であっても私服で出動する場合もある。 リアトレイに設置された電光表示板に「パトカーに続け」や「速度落とせ」などと表示される機能の付いた車両もある。
私用概態警邏車は白黒パトカーと同じく、各自動車メーカーにグレードが存在する。しかし白黒パトカーに比べて需要台数が少ないために車種も少なく、現在はトヨタクラウンのみカタログモデルとして設定されている。しかし白黒での記述にあるように県警単位で購入したり、警察庁が直接入札するケース、寄贈されるケースが主流となっているため、普通車仕様の覆面パトカーも多数存在する。バブル期には貿易黒字を減少するために、国費でメルセデス・ベンツ300EやBMWが購入され、覆面パトカー(私用概態警邏車)として主要県警に配備されたが、目標車を追尾していても非常に目立ち、また、あたかも暴力団(マル暴)のような様相であると不評であったために新たな配備はなく、現在その数は全国で10台未満になっている。なお、現在、警視庁では一部のメルセデス・ベンツ300Eが交通機動隊から警備部警護課に移管され、予備の警護車となっている。
輸入車覆面が配備された都道府県警
ベンツ
警視庁
大阪府警
福岡県警察
神奈川県警察
兵庫県警察
茨城県警察
BMW
警視庁
千葉県警察
警護車は、主に総理大臣を初めとする閣僚や官公庁の上官、都道府県知事など国内外の要人警護を目的に使用され、ベース車にはトヨタセンチュリー、トヨタセルシオ、日産フーガ、日産ティアナ、ホンダレジェンド、三菱デボネアなどの国産の高級車が採用される場合が多い。
私用概態警邏車同様に、赤色警光灯が車内天井部に格納されており、ルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせりあがってくる。前面赤色警光灯は、フロントグリルの中に取り付けられているのが一般であるが、近年はオートカバータイプのものを採用している。近年、警視庁の一部の警護車には、視認性を高める目的でLEDの前面赤色警光灯を装備しているものもある。
警護車は各都道府県警の警備部に配備され、私服(多くは背広にネクタイ)の警護警察官が乗務する。
警護車を使った警備については、警護車を1台ないしは2台利用して車列をつくり(車列警護)、警護対象者の乗る対象車(一般の普通乗用車)の前で先導するか、対象車の後から追尾するスタイルが一般的である。
なお、この場合では警護車は緊急自動車とならず、車列の走行に障害となる一般の交通を一時停止させるため、乗務するセキュリティポリス(警護警察官、SP)が、警護車から身を乗り出し(暴走族の行う“ハコ乗り”と同一)誘導灯を振るなどして一般車などを排除しながら走行する。
捜査車両は機動捜査隊や警察署(所轄署)の刑事課や生活安全課などに配備され、私服の刑事警察官が乗務する。国費購入の場合には機動捜査用車、私服用セダン型無線車、私服用ワゴン型無線車などとカテゴリーが分けられて入札により調達されるが、時には数百台単位での台数となる。白黒パトカーと比較すると改造箇所が少なく、近年市場人気が下落傾向のセダン型車を多く販売できるため、メーカーやディーラーはマイナーチェンジやフルモデルチェンジ直前のモデルや、不人気モデルであるとかなり安値で入札することがある。調達する警察側としては結果的に一番安いときに大量購入することになることが多い。近年ではセダン型の自動車が市場でも人気が落ち、ステーションワゴンやミニバンタイプの乗用車が販売台数を飛躍的に伸ばしているため、捜査上秘匿性を重要視する覆面パトカーにとっては、セダン型ではかえって目立ってしまう事態もあり得るため、ステーションワゴン型やミニバン型の車種を導入することが多くなってきた。
私服用ステーションワゴン型無線車、私服用ワゴン型無線車、私服用ワゴン型車などとカテゴリー分けされ、いずれも2000cc級や2400cc級などど排気量によっても分別している。また、狭い道路での活動(被疑車両の追尾など)などでは排気量が小さめな車種も必要とされることから、1500cc級のセダン型やステーションワゴン型が調達されることもある。刑事ドラマやサスペンス系の2時間ドラマによく登場するタイプのもので、緊急時にはマグネット吸盤式の大型流線形赤色警光灯をルーフに貼り付けて走行する。ただし必ずしも捜査車両=覆面パトカーではなく、特に地方の所轄警察署などでは緊急走行のための装備を持たない車両が多く、以前は1500ccクラスのセダン型が多く見られた。ナンバーを外部に知られると用を為さなくなるので、必要に応じてレンタカーを借りたり、捜査員などの私有車(マイカー)を使うようなケースもある。場合によっては、警邏課や鑑識などが覆面車を使用する事もある。 また、一部の県警では所有者がリース会社名義の捜査車両もある。
捜査車両は主にセダン型の市販車両が多い。 トヨタではクラウン、マークII、キャバリエ、ビスタ、コロナ、プレミオ、カリーナ、アリオン、カローラなど、日産ではセドリック、グロリア、スカイライン、ローレル、セフィーロ、ブルーバード、ブルーバードシルフィ、プレセアなど、マツダではルーチェ、カペラ、アクセラ、アテンザなど、スバルではレオーネ、レガシィなど、ホンダではアコード、シビックなど、三菱ではギャラン、ランサー、いすゞではジェミニなどが採用されている。