朝日放送がネットチェンジを拒絶した理由
NETは教育専門局に過ぎず、同局をキー局とすると営業面で制約が生じて不利となる。
NETをキー局に全国朝日系テレビネットワークを構築すると言うが、そのNETには朝日新聞社以外にも日本経済新聞社の資本が入っている。逆に現在のキー局であるTBSにも、毎日新聞社や読売新聞社と共に朝日新聞社の資本が入っており、こうした資本構成ではネット変更をする理由にはならない。
そもそもNETの経営状態が悪いので、まず同社の再建が先決である。
朝日放送と毎日放送との間の営業成績にも格差がある(これはNETをキー局とすれば、必ず営業成績が落ちる事を意味する)。
KBCはフジテレビとの、名古屋テレビは日本テレビとのそれぞれクロスネットである。テレビネットワークは最低「東名阪九」が完全に繋がらないと商売にならない。
「NETニュース 朝日新聞製作」は朝日テレビニュース社が製作する外注番組であるが、テレビニュースはJNNの様にテレビ局が主体となって製作すべき物である。従って外注を止めて欲しい。
要は「朝日系列だから」という理由だけで、わざわざTBS系列といった盤石な基盤を捨ててまで脆弱なNET系列に移るという事は不可解である。朝日放送は「朝日」放送と名乗ってはいても、朝日新聞社以外にも近畿日本鉄道、阪神電気鉄道、大阪ガス、高島屋、住友銀行(現・三井住友銀行)など大口出資者が多数存在する一般企業である。従って朝日新聞社一社のために企業価値が損なわれ、他の株主に迷惑をかける事はあり得ない。「それでも親会社の言うことを聞け」と言うのであるならば、それなりの大義名分が必要だと言うことである。
朝日放送がTBS系列からNET系列にネットチェンジする事で「腸捻転」が解消した実際の要因が、1974年11月18日にTBSから業務提携の解除とネットワークの打ち切りを通告された事から判るように、朝日放送は最後まで「腸捻転」解消に消極的(それから、元々のキー局であったTBSも)だったが、その理由は既述した6つの拒絶理由の他にも、いやその拒絶理由が無くなったとしても朝日放送側にはまだ以下の不安要因があったからである。
JNNに比べ、ANNは系列局がクロスネットを含めても少ない(1974年の時点でJNNが25局なのに対しANNが9局)。系列の力が弱いため、地方によっては自社番組がフルネットから遅れネット、あるいは打ち切りになる可能性が高い。こうした系列変更に伴う地方局への営業力低下を懸念していた。
JNNからANNに移る事によって、当時高視聴率が多く営業成績の高かったTBSの番組を失い、相対的に芳しくなかったNETの番組を受け容れる事になる。これらの事から、ネットチェンジで朝日放送の営業収益は必ず減少すると見込まれていた。
上記のような不利な条件下であったにも拘わらず、毎日放送が好成績を上げていたのは番組製作力や企画力、営業販売に関する総合力で他局を圧倒していたからである。毎日放送はキー局が弱かったため、自社制作番組の強化でこれを克服。在阪カラーの強い局として評価を高め、またこれら自社制作番組を地方局に売り込み営業成績を上げていた。実際、NETテレビ系列局が編成上の都合で放送しなかった場合は、ラテ兼営局であった強みを生かし同地域内の他系列局に販売またはスポンサードネットした事もあった[8]。一方の朝日放送は番組制作力には定評があったが、キー局や系列局が圧倒的に強かったため、毎日放送のように積極的に動かなくとも十分に採算が取れていた。このため、TBS系列に依存する体質が染みついていた当時の朝日放送は、毎日放送よりも体力が不足していた。これがいきなりANNに移ることによって、ローカル枠と全国向け発枠が急増し、その結果関西ローカルの自社製作番組や(現在放送されている『おはよう朝日です』など)、毎日放送が制作していた枠(現在放送されている『パネルクイズ アタック25』はその実例)を代わりに制作しなければならないという頭の痛い問題が生じる。毎日放送も相当な年月を掛けてようやくこの体制を確立してきたのに、朝日放送がすぐさまこれに取って代わることは困難だと思われた。
但し、同局の制作現場は逆にこれを自社番組制作能力を向上させるチャンスと捉えていて、その努力が後々繋がる結果になった。
朝日新聞社が腸捻転を問題視した理由
TBS系列時代の全国ニュースは排他協定の影響もあり、自主制作の「JNNニュース」を放送していた。朝日新聞制作のテレビニュースは僅かに夕方の3社ニュース枠での朝日新聞ニュースが、NETからの裏送りで放送された程度で、肝心の「NETニュース 朝日新聞制作」は朝日放送では放送されず、しかもそれを毎日放送が「MBSニュース」と題名を差し替えて放送していた。つまり、「朝日新聞制作」のニュースが大阪では「毎日新聞系」の毎日放送から放送され、また「朝日新聞製作」のクレジットで全国に放送される関西発のニュースは朝日放送ではなく毎日放送が取材した物であるといったちぐはぐな状態が続いていたのである。