「撫でし子」と語意が通じることから、しばしば子どもや女性にたとえられ、和歌などに多く参照される。古く『万葉集』から詠まれる。季の景物としては秋に取り扱う。『枕草子』では、「草の花はなでしこ、唐のはさらなり やまともめでたし」とあり、当時の貴族に愛玩されたことがうかがえる。また異名である常夏は『源氏物語』の巻名のひとつとなっており、前栽に色とりどりのトコナツを彩りよく植えていた様子が描かれている。
ナデシコ属は古くから園芸品種として栽培され、また種間交雑による園芸種が多く作られている。中国では早くからセキチクが園芸化され、平安時代の日本に渡来し、四季咲きの性格を持つことから「常夏」と呼ばれた。
ヨーロッパではフランス南部及び東部に自生していたディアンスス・カリオフィルスが15世紀頃から栽培され始めたものがカーネーション(Dianthus caryophyllus)の元とされる。17世紀にはイギリスで多数の品種が生まれ、オーリキュラやチューリップ等と共にフローリスツ・フラワーの一つとして大きく進展を見た。19世紀の主流は「ショウ・カーネーション」で、これは花弁の縁の鋸歯をなくし、幾何学的な整形に近づけたもので、現代のカーネーションとは異なっている。その後フランスのダルメイスが「パーペテュアル系」を1840年に作出、また1857年に同じくフランスで「マルメゾン系」が生まれ、これらが現代の営利用カーネーションに繋がっている。またカーネーションは江戸時代中頃までにオランダを通じて日本にも伝来している。
またイギリスでは18世紀の中頃からタツタナデシコ(英名ピンク)の栽培が盛んとなり、1770年にはショウ・ピンクが出現してフローリスツ・フラワーの仲間入りし、19世紀にはランカシア地方でことに愛好された。
江戸時代は平和な時代が続いたためもあり、史上空前の「園芸ブーム」を日本にもたらした。大きくの花卉が栽培、育種され古典園芸植物と呼ばれるが、ナデシコもその例にもれず観賞の対象となった。中国からのトコナツと在来のカワラナデシコが自然に交雑して豊かな変化を生じたともいわれ、一層の品種改良が進められ、宝暦年間にでた『絵本野山草』には「めづらしきなでしこ一重八重十重百重千重数百種あり。筆につくしがたく又なでしこにて撫子をはなれ物有」と記され、無数の品種が紹介されている。1838年には江戸でナデシコの花合せ(品評会)が開かれた記録があり、1863年には長谷静香によりナデシコの専門書「撫子培養手引草」が著わされるなど、ナデシコ栽培はキクやサクラソウ、ハナショウブ、アサガオなどと共に非常に盛んであった。
江戸時代後期以降、ナデシコには2つの流れが生まれた。一つは「伊勢ナデシコ」であり、背丈は比較的高く、花弁が長く延びるもので、品種により20センチ以上にもなり下垂する。もともと伊勢では18世紀後半からナデシコ栽培が流行していたが、1841年に継松栄二が作出したと言われている。伊勢では伊勢ハナショウブ、伊勢ギクと共に松坂藩士を中心に古くから愛好されて来た。これらはいずれも花弁が下垂するのが特徴であり、特に伊勢ナデシコは京都や江戸でも広く栽培されていた。もう一つは「トコナツ」で、比較的矮性のものが多く、花型は一重咲き、八重咲きを含め色々あり、伊勢ナデシコと区別のつかないような花弁の長いものもあった。明治時代に入り1895年に大流行があり、更に1909年頃に再び流行を見た。以後番付表や専門書が出版されたが、太平洋戦争時に壊滅的な打撃を受け、現在ではほとんど当時の品種は残っていない。ただし一部の品種が、いわゆる「三寸セキチク」など、こんにちの営利用品種の元となった。
この他日本に自生するフジナデシコの園芸化も進んだ。
庭植え、鉢植え、根洗いなどに利用される。
原種
Dianthus alpinus L.Dianthus alpinus
Dianthus amurensis Jacques
Dianthus anatolicus Boiss.
Dianthus arenarius L.
Dianthus armeria L. - Deptford Pink
Dianthus banaticus (Heuffel) Borbas
Dianthus barbatus L. - Sweet William
Dianthus biflorus Sm.
Dianthus brevicaulis Fenzl
Dianthus callizonus Schott et Kotschy
Dianthus campestris M. Bieb
Dianthus capitatus Balb. ex DC.
Dianthus carthusianorum L. - Carthusian Pink
Dianthus caryophyllus L. - カーネーション or Clove PinkDianthus caryophyllus seed heads
Dianthus chinensis L. - セキチク
Dianthus collinus W. et K.
Dianthus cruentus Griseb.
Dianthus deltoides L. - Maiden Pink
Dianthus erinaceus Boiss.
Dianthus freynii Vandas
Dianthus fruticosus L.
Dianthus furcatus Balb.
Dianthus gallicus Pers. - French Pink or Jersey Pink
Dianthus giganteus d'Urv
Dianthus glacialis Haenke
Dianthus gracilis Sm.
Dianthus graniticus Jord.
Dianthus gratianopolitanus Vill. - Cheddar Pink
Dianthus haematocalyx Boiss. et Heldr.
Dianthus hungaricus Pers.
Dianthus imereticus (Rupr.) Schischk.
Dianthus integer Vis.
Dianthus knappii Asch. et Kanitz ex Borbas
Dianthus lumnitzeri Wiesb.
Dianthus lusitanus Brot.
Dianthus microlepsis Boiss.
Dianthus monspessulanus L.
Dianthus myrtinervius Griseb.
Dianthus nardiformis Janka
Dianthus nitidus Waldst. et Kit.
Dianthus pavonius Tausch
Dianthus petraeus Waldst. et Kit.Dianthus superbus
Dianthus pinifolius Sm.
Dianthus plumarius L. - Wild Pink
Dianthus pungens L.
Dianthus pyrenaicus Pourr.
Dianthus repens Willd. - Boreal Carnation
Dianthus scardicus Wettst.
Dianthus seguieri Vill.
Dianthus serotinus Waldst. et Kit.
Dianthus simulans Stoj. et Stef.
Dianthus spiculifolius Schur.
Dianthus squarrosus Bieb.
Dianthus subacaulis Vill.
Dianthus superbus L. - Large Pink
Dianthus sylvestris Wulfen
Dianthus viscidus Bory et Chaub.
Dianthus waldsteinii Sternb.
Dianthus zonatus Fenzl
関連項目
カーネーション