テロメア
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テロメアに結合するタンパク質

テロメアDNAにはさまざまなタンパク質が結合して、テロメアの形成・保護・長さの調節に関わっている。テロメアに局在するタンパク質には、テロメアの修復に関わるものや二本鎖DNA切断を感知・修復するものなどが含まれており、細胞の状態に応じて、これらのタンパク質複合体の組成や酵素活性が変化することで、テロメアの制御を行っていると考えられている。

D-ループにはPot1と呼ばれるタンパク質(図の黄色の丸)が結合して安定化させており、これがT-ループの形成と保護に関与すると考えられている。ヒトの早老症ウェルナー症候群の原因遺伝子はD-ループ形成に機能するようである。また、TRFと呼ばれるタンパク質がループした二本鎖DNA部分に結合しており、これを介して他のタンパク質がテロメアに結合している。

姉妹染色分体のテロメアどうしを結びつけておくタンパク質もあり、細胞周期のM期(分裂期)に異常な染色体分配が生じないよう抑制する機能を担っていることがわかりつつある。このタンパク質はセントロメアや腕部の接着に機能するコヒーシンとは異なるものである。


クロマチン構造

染色体はDNAがヒストンに巻き付き、折り畳まれたクロマチン構造をとっている。テロメア付近ではヒストンが特徴的な化学修飾を受け、特に密な高次構造、すなわちヘテロクロマチンを形成している。テロメアのヘテロクロマチン形成にはRNAiに関わる因子が関与することが報告されている。ヘテロクロマチンは、テロメア付近の遺伝子の転写を抑制する。テロメアが短縮するとこのヘテロクロマチン構造が緩み、この領域の遺伝子発現が起こるようになる。テロメア短縮による細胞老化の原因に、この転写抑制解除が関与しているという説がある。


テロメラーゼとテロメアの複製

染色体の最末端部はプライマーがセットできないため複製されず、テロメラーゼによって延長が行われる。テロメラーゼがない場合、染色体は複製のたびに50から200塩基対ずつ短くなる。これはプライマーの長さよりも長く、「新しい」末端複製問題としてとりあげられたが、現在では複製の際にT-ループごと切断されるためだと考えられている。

テロメラーゼはテロメア配列の鋳型となるRNA逆転写酵素、その他の制御ユニットからなる複合体である。RNA要素はTERC (Telomere RNA Component)、逆転写酵素はTERT (Telomere Reverse Transcriptase) と呼ばれる。このRNAの長さはテトラヒメナで159nt、哺乳類で450nt、出芽酵母で1.3kntと様々である。逆転写酵素の活性部位はRNA型トランスポゾンがコードするそれと相同性がある。過剰発現の実験から、テロメラーゼ活性自体はRNAと逆転写酵素の二つの構成因子で十分であることがわかっているが、テロメラーゼは生体内において巨大な複合体 (1MDa以上) を形成しており、正常な機能には他の構成因子も必要である。テロメラーゼ自体もテロメアの維持に機能すると考えられている。

この酵素はヒトでは通常の体細胞には見られず、生殖細胞で発現している。ただし体細胞でも、細胞分裂を繰り返して娘細胞を供給する幹細胞では若干の活性がみられる。卵巣精巣などの生殖細胞では恒常的に発現している。生殖細胞は生物個体を越えて連綿と引き継がれていくものであり、ある意味では不死細胞ということができ、この性質にテロメラーゼが関わっている。またガン細胞でも大量に存在しており、ガン細胞の不死化の原因の一つと考えられている。一方、マウスでは体細胞でもテロメラーゼの発現がある。

テロメラーゼは細胞周期のS期(DNA合成期)にテロメアに誘導されて機能する。出芽酵母の研究では、テロメラーゼは細胞内で最も短いテロメアから優先的に伸長させていくことがわかりつつあり、長すぎるテロメアには抑制的に働く機構が見いだされている。

テロメアの分子機構に関する実験には均一な細胞群を用いることが求められるため、主に出芽酵母やテトラヒメナといった単細胞生物、および哺乳類では培養細胞を用いて研究が行われている。


細胞の老化と不死化、がん化への関与

テロメアやテロメラーゼは、細胞の老化や不死化と呼ばれる現象に重要な役割を担っており、これを介して生体の恒常性維持やがん化とも密接に関連していると考えられている。

ヒトなどの動物組織から取り出した初代培養細胞は分裂回数が制限されており、一定数の分裂を行うと細胞周期が停止してそれ以上は分裂できなくなる。この現象を細胞老化と呼ぶ。これに対して、がん化した細胞などは際限なく分裂することが可能であり、この形質を細胞の不死化と呼ぶ。ここでいう「不死」とはその細胞自体が死なないという意味ではなく、細胞が分裂の永続性を獲得しているという意味である。ゲノムの安定性という点から考えると、老化と不死化は相反する現象ということができる。つまり不安定になったゲノムは老化によって不安定化を抑制したり、一時的に老化状態にすることで修復する猶予を与える仕組みを備えており、がん細胞のような不死化細胞はそれらの監視機構を逃れた状態にあると言える。ここにテロメアやテロメラーゼが大きく関与していると考えられている。


細胞老化

テロメア短縮が細胞老化の十分条件であることは広く受け入れられている。これは、分裂を繰り返すことで老化した細胞ではテロメアの短縮が認められることと、実験的にテロメアを短縮させることで細胞老化を誘導できることから支持されている。ただし、テロメア短縮はすべての細胞老化に関与する必要条件ではない。外部からのストレスやゲノムの損傷、がん遺伝子の活性化などの刺激が細胞老化(未成熟細胞老化)を誘導することや、体細胞でもテロメラーゼ活性がみられるマウスの初代培養細胞では、テロメア短縮が見られないにも関わらず細胞老化によって分裂回数が制限されていることなどから、テロメア短縮以外にも細胞老化の原因がある。

テロメア短縮が細胞老化を起こす原因については、まだ解明されていない点も多いが、いくつか説得力のある説がある。テロメアが短縮するとT-ループが形成できなくなり、その部分に二本鎖DNA切断のときに見られるタンパク複合体が形成されることが判っており、DNA損傷時に修復を行うために細胞周期を停止させる機能が、細胞老化による細胞周期の停止にも関わっているという説が提唱されている。

早老症の一つであるウェルナー症候群の患者や、ドリーのように体細胞の核から作られたクローン動物においてテロメア短縮が見られることから、テロメアによる細胞老化は個体の老化と関連することが示唆されている。


細胞の不死化とがん化

細胞がん化には、(1) 増殖能の亢進、(2) 不死化、(3) アポトーシスからの回避、の三段階の変化が生じることが必須であると考えられている。テロメアとテロメラーゼは細胞老化と不死化を制御することによって、がんの発生にも関与していると考えられている。

テロメラーゼによるテロメアの伸長修復は、染色体を維持することで、永続的な細胞分裂、つまり細胞の不死化に重要な役割を担っている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki