実験動物(ラット、マウス及びハムスター)による長期毒性試験ではダイオキシン類の発がん性を示唆する報告がなされている。 ラットにおいては、Kocibaら(1978)が肝細胞の過形成結節及び肝細胞がん、硬口蓋及び鼻甲介、肺の扁平上皮がんの有意な増加を報告している。NTP毒性評価試験(1982)では肝の腫瘍結節(NOAELで1ng/kg/day)、甲状腺濾胞細胞腺腫(NOAELで1.4ng/kg/day)の増加を報告している。
ラット及びマウスの肝臓、肺と皮膚の二段階発がんモデルによるとダイオキシン類のプロモーター作用が認められ、EGF受容体及びエストロジェン受容体との相互作用の関与が示唆されている。このような2,3,7,8-TCDDには間接的なDNA障害は認められるが、直接的な結合〈記事 インターカレーションに詳しい〉は認められないと考えられている。 各種の変異原性試験等においても陰性を示す結果が多く、ダイオキシン類自体がDNAに影響を与える遺伝毒性はないものと総合的に判断される。また、ダイオキシン類のプロモーター作用と併せて考慮すると2,3,7,8-TCDDの発がん機構には閾値があり、一定量以上の存在が作用発見に必要であることが示唆される。[12]。
WHOの下部機関であるIARCは1997年に2,3,7,8-TCDDの発がん性評価を「人に対する発がん性がある」とした(IARC発がん性リスク一覧・Group1に詳しい)、その一方、2,3,7,8-TCDD以外のダイオキシン類についてはGroup3(ヒトでの発がん性の有無は不明)と評価している。
ベトナム戦争時の枯葉剤に副産物として含まれており、散布地域での奇形出産・発育異常の増加に対し、ジャーナリズムでは強い催奇性がよく取り上げられる。ただし、ダイオキシンによる催奇性はマウスでの実験においては確認されているものの、ヒトに対する催奇形性は未確認である。
セベソでのダイオキシン類暴露事故後の疫学調査では、高汚染地域で14年間に198人の出生例があったが、奇形児は0人である。[24] 同調査では男子出生の低下が確認されている。事故後はじめの7年間(2,3,7,8-TCDDの半減期にあたる)では、出生数が男児26人に対し女児48人であった。次の7年間では男児60人に対し女児64人であり、既に有差はない。
ただし、事故から23年以上経過した後の、より広範囲・長期的見地での調査によれば、被曝市民や除染作業者を対象とした11の自治体の22万人の被曝者のうち、流産、奇形、腫瘍、死亡などの事例が報告がされている。[25] また事故翌年4?6月の妊婦の流産率は34%となった。[26] 周辺地域では癌発生率の増加、家畜の大量死、腫瘍、奇形出産などが報告されている。[27] [28] [29]
PCB及びPCB加熱から生じたPCDFが混入した台湾油症の事例からは子供の成長遅延、知能低下、運動機能の発達遅延、皮膚の黒皮化などが報告されている。[30] [31]
2,3,7,8-TCDDの生殖毒性は動物実験で胚や胎児の段階で強く現れることが知られており、代表的な催奇形性としてマウスにおける口蓋裂、水腎症などがある。[32] 動物実験で妊娠中及び授乳中の2,3,7,8-TCDDの暴露による仔の生殖機能、甲状腺機能、免疫機能への影響が低レベルで認められている。ラットを用いた3世代実験ではF0世代では100ng/kg/day、F1及びF2世代では、10ng/kg/dayより妊娠率の低下、出生仔の低体重及び性周期に影響を与えると考えられている。
生殖に影響するダイオキシン類レベル(NOAEL)はラットの3世代実験に基づくと1ng/kg/day程度、アカゲザルのデータに基づくと0.126ng/kg/day程度推定される。Mablyらによると64ng/kgのダイオキシンを含む飼料の一回投与した際に付属生殖器官の重量、精子形成の減少が見られたと報告しているが、この実験の追試は行われていない。
これらの作用は2,3,7,8-TCDDが酵素の誘導、成長因子、ホルモン及びそれらの受容体の変化を通して、通常のホメオスタシスとホルモンバランスを変化させ、内分泌攪乱因子としての作用を及ぼしている為と考えられている[12]。
動物実験では2,3,7,8-TCDDは未熟な胸腺細胞の減少を伴う胸腺の萎縮を生じさせることが知られている。マウスへの2,3,7,8-TCDD単回投与試験の結果では、NOAELが5ng/kg/dayで、ウイルス、細菌、寄生虫に対する感染防御機構が影響したと考えられる致死率増加や寄生虫排除の遅れが見られ、抗体産生の抑制や、リンパ球量の変動が見られた。、妊娠マウスへの2,3,7,8-TCDD投与により新生児マウスの胸腺細胞数の変化を示す結果もえられている。
ヒトに対する2,3,7,8-TCDDの免疫毒性は疫学調査ででT細胞レベルの変動を示唆する報告があるが、詳細はよくわかっていない。[12]。
環境省は土壌の環境基準(1,000pg-TEQ/g以下但し、250pg-TEQ/g以上の場合には、必要な調査を実施すること)を定めているが土壌汚染対策法の指定基準には定めが無い。なお、大阪府等の自治体は独自に条例を設けてダイオキシン類の調査・対策の手順を定めている。 ダイオキシン類は、木材などに含まれるリグニンという成分と分子構造が似ている。このため、リグニンを分解する酵素群を持つ白色腐朽菌等を使用してダイオキシン類に汚染された土壌を浄化するバイオレメディエーション技術が研究されている。