一般向けの書物やマスメディアによって、ダイオキシンが「史上最強の猛毒」と扱われることがあるが、異論も存在する。たとえば、生物毒のように直接の即死効果を持つ毒素との比較において、ダイオキシン感受性の高い(後述)モルモットのデータから見積もっても、ボツリヌス毒素はダイオキシンに比べ、少なくとも数千倍の毒性を有する[19]。また以下に示すようなヒトに対する暴露事例において、死亡例についてはほとんど確認できない。また、環境中からヒトが摂取可能なダイオキシン量はさらに少量であり、即死効果という点において、サリンや青酸カリなどと急性毒性を比較するのは不適切である。
ダイオキシン類のヒトへの暴露の事例としては[12][20]
米国で発生した工場廃液の環境の汚染に伴う事例
工場や研究室における汚染事故
イタリアのセベソにおける汚染事故(セベソ事故)
ベトナム戦争における枯葉剤作戦による退役軍人らに見られる影響
台湾でのPCB及びPCDF中毒汚染
日本のカネミ油症事件
などが挙げられる。
ダイオキシン類の毒性は一般毒性、発がん性、生殖毒性、免疫毒性など多岐にわたりそれぞれの毒性発現量は異なると考えられている。動物実験や疫学調査によりダイオキシン類のヒトでの体内半減期は約7.5年と考えられている。
特に問題となるのは妊婦の胎児への影響である。さらに、母乳には脂肪が多く含まれており、ダイオキシン類は脂肪分に多く含まれることが知られており、ダイオキシン類を摂取した授乳期の母親は食事について十分注意する必要がある[12]。
急性毒性試験結果を見ると、致死毒性は、生物種差が極めて大きく現われる。感受性の最も高いモルモット(雄)の半数致死量は600ng/kgであるのに対してハムスター(雄)では5,000,000ng/kgである。すなわちモルモットとハムスターとでは半数致死量は8000倍も異なっている。その為ヒトに対する致死毒性量はよくわかっていない。また急性毒性の発現は雌雄差があり雌の方に毒性が現れやすい傾向がある[12]。
2,3,7,8-TCDDに暴露したヒトや実験動物の事例よりダイオキシン類に暴露すると急性・亜急性に次の現象・症状が現れると考えられている。
体重減少(消耗性症候群)、
胸腺萎縮
肝臓代謝障害
心筋障害
性ホルモンや甲状腺ホルモン代謝
コレステロール等脂質代謝
皮膚症状(クロロアクネ)
学習能力の低下をはじめとする中枢神経症状
ダイオキシン類の残留濃度が高い場合、糖尿病を発症するリスクが上がることが国外の研究[21][22]や、厚生労働省による研究[23]で分かった。
台湾におけるPCDFの事例からは子供の成長遅延、知力の不足、頭蓋骨の石灰沈着異常、舟底踵、歯肉の肥厚、異物性結膜炎の水腫様の眼症状等が認められている。
実験動物(ラット、マウス及びハムスター)による長期毒性試験ではダイオキシン類の発がん性を示唆する報告がなされている。 ラットにおいては、Kocibaら(1978)が肝細胞の過形成結節及び肝細胞がん、硬口蓋及び鼻甲介、肺の扁平上皮がんの有意な増加を報告している。NTP毒性評価試験(1982)では肝の腫瘍結節(NOAELで1ng/kg/day)、甲状腺濾胞細胞腺腫(NOAELで1.4ng/kg/day)の増加を報告している。
ラット及びマウスの肝臓、肺と皮膚の二段階発がんモデルによるとダイオキシン類のプロモーター作用が認められ、EGF受容体及びエストロジェン受容体との相互作用の関与が示唆されている。このような2,3,7,8-TCDDには間接的なDNA障害は認められるが、直接的な結合〈記事 インターカレーションに詳しい〉は認められないと考えられている。 各種の変異原性試験等においても陰性を示す結果が多く、ダイオキシン類自体がDNAに影響を与える遺伝毒性はないものと総合的に判断される。また、ダイオキシン類のプロモーター作用と併せて考慮すると2,3,7,8-TCDDの発がん機構には閾値があり、一定量以上の存在が作用発見に必要であることが示唆される。[12]。
WHOの下部機関であるIARCは1997年に2,3,7,8-TCDDの発がん性評価を「人に対する発がん性がある」とした(IARC発がん性リスク一覧・Group1に詳しい)、その一方、2,3,7,8-TCDD以外のダイオキシン類についてはGroup3(ヒトでの発がん性の有無は不明)と評価している。
ベトナム戦争時の枯葉剤に副産物として含まれており、散布地域での奇形出産・発育異常の増加に対し、ジャーナリズムでは強い催奇性がよく取り上げられる。