上記のようなタンパク質の高次構造は、X線結晶構造解析、NMR(核磁気共鳴)、電子顕微鏡などによって測定されている。また、タンパク質構造予測による理論的推定なども行われている。タンパク質の立体構造と機能は密接な関係を持つことから、それぞれのタンパク質の立体構造の解明は、その機能を解明するために重要である。いずれ、ほしい機能にあわせてタンパク質の立体構造を設計し、合成できるようになるだろうと考えられている。
これまでの研究により構造が解明されたタンパク質については、蛋白質構造データバンク (PDB) ⇒[1]によりデータの管理が行われており、研究者のみならず一般の人でもそのデータを自由に利用、閲覧できる。
タンパク質の例: カゼイン、コラーゲン、ケラチン、フィブロイン、プリオン
タンパク質はそれぞれのアミノ酸配列に固有の立体構造を自発的に形成する。このことから、タンパク質の天然状態は熱力学的な最安定状態(最も自由エネルギーが低い状態)であると考えられている( ⇒Anfinsenのドグマ)。
タンパク質の立体構造安定性は天然状態と変性状態の自由エネルギーの差 ΔGd(変性自由エネルギー)で決まる。なお、温度依存性を議論する場合には、安定性の指標として exp( − ΔGd / kT) が用いられることもある。通常、タンパク質の安定性は、温度、圧力、溶媒条件等に依存する。従って、それらの条件をある程度変化させると、タンパク質は変性する。
タンパク質の安定性を決める要因として、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン結合、鎖エントロピー、ジスルフィド結合などがある。これらの寄与の大きさは、温度等により変わる。
多くのタンパク質は、 室温近傍で数十 kJ/mol 程度のΔGdをとる。この非常に小さなΔGdは変性状態に対して天然状態が絶妙なバランスで安定であることを示しており、この性質はmarginal stability と呼ばれている。
温度が変化すると、変性エンタルピーΔHdや変性エントロピーΔSdは急激に変化するが、それらの変化の大部分は相殺して ΔGd に寄与しない(エンタルピー・エントロピー相殺)。変性熱容量変化ΔCp,dは正の値を持ち、タンパク質内部のアミノ酸残基(疎水性アミノ酸が多い)の水和に伴う水和水の熱容量変化によるものであると考えられている。
タンパク質はその変性の途中で、二次構造はあまり変化しないのに三次構造が壊れた状態を取ることがある。これをモルテン・グロビュール(molten globule)状態とよぶ(東京大学の和田昭允教授の命名)。この状態は高塩濃度下かつ低pHの条件で安定に存在することがあり、タンパク質の折り畳みの初期過程を反映したものであると考えられている。
タンパク質は高温になると変性する。これは熱変性と呼ばれる。また、低温でも変性を起こすが、通常のタンパク質が低温変性を起こす温度は0 ℃以下である。タンパク質の安定性は変性自由エネルギーΔGdで決まる。変性熱容量は室温付近でほぼ一定値であるため、ΔGdの温度依存性は上に凸の曲線になる。この曲線とΔGd = 0の交点が低温変性と熱変性の温度である。
タンパク質はpHの変化によっても変性する。pHが極端に変化すると、タンパク質の表面や内部の荷電性極性基(Glu、Asp、Lys、Arg、His)の荷電状態が変化する。これによりクーロン相互作用によるストレスがかかり、タンパク質が変性する。
タンパク質は圧力変化によって変性することが知られている。通常のタンパク質は常圧(0.1 MPa)近傍でもっとも安定であり、数100MPa程度で変性する。キモトリプシンは例外的であり、100 MPa 程度でもっとも安定である。そのため、温度によっては変性状態にあるものが加圧によって巻き戻ることがある。圧力変性は天然状態よりも変性状態の体積が小さいために起こるものであり、ルシャトリエの原理で説明できる。
尿素やグアニジン塩酸は水素結合によるタンパク質の構造安定性を、結合間に割り込むことで低下させる作用を持つため、その溶液中でタンパク質は変性する。このようにタンパク質を変性させる作用をもつ物質は変性剤と呼ばれる。また通常は変性剤とは呼ばれないが、界面活性剤もタンパク質を変性させる作用がある。
タンパク質は生物に固有の物質である。その合成は生きた細胞の中で行われ、合成されたものは生物の構造そのものとなり、あるいは酵素などとして生命現象の発現に利用される。また、類似のタンパク質であっても、生物の種が異なれば一次構造が異なることは普通である。タンパク質はアミノ酸が多数結合した高分子化合物であるが、人工的な高分子のように単純な繰り返しではなく、順番がきっちりと決定されている。これは、そのアミノ酸の種と順番がDNAに暗号で記述されていることによる。遺伝子暗号は往々にしてその形質に関係するタンパク質の設計図であると考えられる(一遺伝子一酵素説)。エンゲルスは「生命はタンパク質の存在様式である」と言ったが、故のないことではない。
タンパク質の生体における機能は多種多様であり、たとえば次のようなものがある。
酵素:代謝などの化学反応を起こさせる触媒である。
生体構造を形成するタンパク質:コラーゲン、ケラチンなど
生体内の情報のやりとりに関与するタンパク質:タンパク質ホルモン、受容体や細胞内シグナル伝達に関わるものがある。酵素作用を持つものも多い。
運動に関与するタンパク質:筋肉を構成するアクチン、ミオシンなど
抗体:抗原に対し特異的に結合することで免疫に重要な役割を果たす。