スズメバチ
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キイロスズメバチアブラゼミの死骸を食べるキイロスズメバチ(2005年7月 横浜)。セミの腹部にはミヤマキンバエもいる

キイロスズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)は、本州、四国、九州や朝鮮半島に分布する。北海道以北に分布するケブカスズメバチ(Vespa simillima simillima)の亜種とされる。体長は女王バチが25?28mm, 働きバチが17?24mm, オスバチが28mmで、日本に広く分布する5種のスズメバチ属のハチの中では最も小型である。他のスズメバチより小型で模様の黄色が多いことと、頭頂部の複眼間が黒いことで他のスズメバチと区別できる。また体全体がやや毛深く黄褐色の長毛で覆われる。攻撃性が非常に高く、巣の近くを通っただけで攻撃されることもある。特に一旦刺激を受けた巣では攻撃性が増して危険である。スズメバチ類の刺傷例では本種によるものが最も多く、この意味では最も危険なスズメバチといえる。

地中や樹洞に大型の巣を作るが、都会に最もよく適応し、家屋などにも営巣する。巣は日本に生息するスズメバチの中では最大規模で、直径は30-80cmで時に1m、育房数6,000-8,000で、時に1万以上。働き蜂・雄蜂とも数百頭から千体以上、新女王は200-800頭。活動期間は5-11月、個体数は9-10月に最大となり、人の刺傷例も秋に最も多い。

食性は幅広く、幼虫の餌として各種の昆虫・クモ類を狩るほか、カエルヘビの死体までほとんど何でも食べる。クヌギコナラなどの樹液、ブドウやカキなどの熟果、清涼飲料水の飲み残しなどにも飛来する。またミツバチ類、アシナガバチ類、クロスズメバチ類などの巣口付近でそれらの働き蜂も狩るが、狩りは常に単独で行われ、オオスズメバチのような集団での襲撃はみられない。

ニホンミツバチを狩る場合、主に帰巣する個体や集団から偶然離れた個体を狙って巣の周囲を滞空飛行していることが多い。このような巣では、ニホンミツバチが巣口周辺に多数集まって警戒態勢をとり、キイロスズメバチがおよそ15cm以内に近づくと、最も近くの個体を始点として、腹部をそり上げながら翅を震わすウェーブが起こり、集団全体がブーン、ブーンという断続的な羽音をたてる。このような大集団のすぐ近くでの狩りは、キイロスズメバチにとっても大変危険なものであるため、必要以上に集団に近づかないよう非常に注意深く行動するのが観察される。首尾よく働き蜂を捕獲できると、次の瞬間には獲物を抱えたまま非常な速さでその場を飛び去り、高い木の枝など、集団から十分に離れた場所まで運んでから改めて噛み砕く。逆に、ほんのわずかでも捕獲に手間取った場合には、それに気付いたニホンミツバチの集団に一斉に襲いかかられ、蜂球の内部で蒸し殺されてしまうことも多い。

基亜種のケブカスズメバチ(Vespa simillima simillima)は北海道、サハリン、東シベリア、千島などに分布し、黄色の部分が少なく、巣の規模もやや小さい。


左:巣口周辺を飛び回るキイロスズメバチと腹部を反り上げ翅を震わせるニホンミツバチ。
中:ニホンミツバチによる蜂球。中では2匹のキイロスズメバチが蒸されている。
右:約1時間後の「中」と同じ場所。蜂球は解体され、蒸し殺されたキイロスズメバチの遺骸が見える。
(いずれも2005年7月 横浜市内)


コガタスズメバチ

コガタスズメバチ(Vespa analis)は、スズメバチ属の主な5種の中では中型のハチである。体長は女王バチが25?30mm, 働きバチが22?28mm, オスバチが23?27mmで、名前ほど小さくはない。中型以下の昆虫を餌とする。特に他の蜂のよく集まる虫媒花で待機し、ハナバチなどを襲って胸部の筋肉を肉団子にし、巣に持ち帰ることが多い。攻撃性はあまり高くないが、巣に直接刺激を与えると激しく反撃するため、剪定作業中に巣を刺激して被害に遭うケースがしばしば見られる。営巣場所と餌の種類に柔軟性があるため、キイロスズメバチと並んで都会でよく適応している。


モンスズメバチモンスズメバチ

モンスズメバチ(Vespa crabro)は、コガタスズメバチに近い大きさの中型のスズメバチで、体長は女王バチが28?30mm, 働きバチとオスバチは21?28mm。ヨーロッパから日本まで幅広く分布している。天井裏や樹洞といった閉鎖空間に外被の下部が大きく開口した巣を作る。攻撃性はやや強い。腹部の黄色と黒の縞模様は波形をしており、変異が大きい。

幼虫のおもな餌はセミで、その他バッタやトンボなどの大型昆虫も餌にする。日本では初夏のハルゼミから初秋のツクツクボウシまで営巣期を通じて多様なセミを狩猟できる環境でないと生息できないため、近年減少している。ヨーロッパにおいて蜂を獲物とする大型のスズメバチはこの種のみである上に、蜂を襲うことも稀であるため、セイヨウミツバチにはスズメバチ類の狩猟に対抗する行動の進化が見られなかったと考えられている。スズメバチ属としては珍しく、夜間も数時間活動する。


チャイロスズメバチ

チャイロスズメバチ(Vespa dybowskii)は体長17-27mm、全身が黒-茶色の深い色に覆われている。 北方系の種で、日本では中部地方以北に生息している。個体数は少なく「幻のスズメバチ」と呼ばれることもある。

モンスズメバチ、キイロスズメバチ等の巣を乗っ取ることから「社会寄生性スズメバチ」と呼ばれている。他のスズメバチより遅めに冬眠からさめた女王蜂は、女王蜂しかいない他のスズメバチの初期の巣を襲い、相手の女王蜂を刺し殺す。その後、自分の働き蜂が羽化するまで、乗っ取った巣の働き蜂に働いてもらう。

他のスズメバチの巣を乗っ取るスズメバチは、他にヤドリホオナガスズメバチ(Dolichovespula adulterina)とヤドリスズメバチ(Vespula austriaca)が知られているが、こちらは自分の働き蜂を作らない。


クロスズメバチツツジの葉陰で休むクロスズメバチ

クロスズメバチ(Vespula flaviceps)は、体長10-18mmのクロスズメバチ属。小型で、全身が黒く、白または淡黄色の横縞模様が特徴である。北海道、本州、四国、九州、奄美大島に分布。多くは平地の森林や畑、河川の土手等の土中に多層構造の巣を作り、6月ごろから羽化をする。小型の昆虫、蜘蛛等を餌とし、ハエなどを空中で捕獲することも巧みである。その一方で頻繁に新鮮な動物の死体からも筋肉を切り取って肉団子を作る。食卓上の焼き魚の肉からも肉団子を作ることがある。攻撃性はそれほど高くなく、毒性もそれほど強くはないが、巣の近くを通りかかったり、また缶ジュース等を飲んでいる際に唇を刺される等の報告例がある。同属で外観が酷似するシダクロスズメバチは、海抜約300m以上の山林や高地に好んで生息し、クロスズメバチよりもやや大きく、巣は褐色で形成するコロニーもやや大型になることが多い。

地方によってヘボ、ジバチ、タカブ、スガレなどと呼ばれて養殖も行われ、幼虫や蛹を食用にする。長野県では缶詰にされる。クロスズメバチを伝統的に食用とする地方の一部では「ヘボコンテスト」等と称し、秋の巣の大きさを競う趣味人の大会も行われている。


キオビホオナガスズメバチ

キオビホオナガスズメバチ(Dolichovespula media)は体長14-22mm、ホオナガスズメバチ属。小型の昆虫を餌とし、樹上に巣を作る。ホオナガスズメバチ属の中では最も攻撃性が高い。ホオナガスズメバチ属のスズメバチは一見クロスズメバチ類に似るが、クロスズメバチ属や大型のスズメバチ属のように、巣材を枯れ木や朽木の木部繊維中心にではなく、アシナガバチ類と同様に枯れ木、枯れ枝の靭皮繊維から採集するため、巣はもろくなく強靭である。


ヤミスズメバチ属

ヤミスズメバチ(Provespa属)は、東南アジアに生息する。和名のとおり夜行性である。上記のスズメバチと違い、ミツバチのように分蜂して繁殖する。


脚注

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^ スズメバチ女王を不妊化させる線虫が発見された。 ⇒スズメバチの女王を不妊化する寄生線虫を世界で初めて発見(独立行政法人 森林総合研究所)
^ “しびれて感覚がなくなること。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki