慎重投与
小児、および青年期(18才未満) ? 処方は、けいれんの治療、及び周術期の鎮静を除いては通常指示されない。この世代への臨床投与データは不足している。(従って、不安、不眠などについては)精神療法を第一選択とすることが多い。
アルコール乱用、および依存の既往を持つ患者:使用(処方)する場合、注意深くこれらの患者を観察する必要がある。
低血圧、およびショック状態の患者への経静脈投与
ジアゼパムのアメリカ合衆国FDA・胎児危険度分類 (pregnancy category) はカテゴリー「D」である。これは、「胎児に対する明確なリスク」があることを意味する。ただし、注意が必要であるが、これはあくまでもリスクであり、絶対禁忌「ではない」。(この分類では、カテゴリー「X」が絶対禁忌である。)妊娠した者にジアゼパムが処方される場合、処方者はリスクと利益の兼ね合いで、「それでもジアゼパムの処方が必要である」と考えている。従って、自己判断で中止すると、かえって母体・胎児を危険にさらす可能性があることに常に留意することが望ましい。むしろその場合、不安を感じるならば、適宜専門医に対してセカンド・オピニオンを求めるべきであろう。
ジアゼパムのアメリカ合衆国FDA・授乳危険度分類 (breast-feeding category) はカテゴリー「3」である。これは、「適切なデータがなく危険性についてはよくわかっていないが懸念される (unknown with concern)」ことを意味する。もっとも、新生児・乳児にもジアゼパムは(けいれんなどの治療で)よく処方される。こちらも禁忌「ではない」。
ジアゼパムはアルコール、および他の睡眠鎮静薬(例:バルビツール系)・麻薬・筋弛緩薬の中枢神経抑制作用を増強する。 オピオイドの多幸感を増強し、精神的依存のリスクを増すかもしれない。
シメチジン(タガメット)、オメプラゾール(オメプラール)、ケトコナゾール(ニゾラール)、フルオキセチン(プロザック)はその排泄を遅延させ、作用時間を延長させる。ジスルフィラム(ノックビン)も同様の作用を持つかもしれない。したがって、長期投与ではジアゼパムの投与量を下げる必要がある。
経口避妊薬(ピル)は、重要な活性代謝産物であるデスメチルジアゼパムの除去を遅延させる。
シサプリド(アセナリン)はジアゼパムの吸収を促進し、その鎮静作用を増強するかもしれない。
喫煙はジアゼパムの排泄を促進し、作用を減弱させうる。
低容量テオフィリン(テオドール・テオロング)はジアゼパムの作用を阻害する。
ジアゼパムは、パーキンソン病の治療におけるレボドパの作用を阻害することがある。
ジアゼパムはまれに、フェニトイン(アレビアチン)の代謝を阻害し、その作用(と副作用)を増強する。
そのほか、以下の集団に属する患者は、乱用の徴候や依存の進展がないか、注意深く観察されるべきである。これらの徴候が少しでも見られたならば、治療は中止されなければならない。こうした患者群へのジアゼパムの長期投与は、それが(通常)求められたり、必要とされる場合にもめったに行われない。
薬物乱用・依存の既往歴の有る患者
感情の不安定な患者
境界性人格障害など、重症の人格障害を伴う患者
慢性痛や、その他の身体疾患を伴う患者
(注意)状況、重症度、そして体重・年齢などによって処方は変化する。
一般に高齢者・肝機能が低下した人では作用が増強され、作用時間は延長する。ジアゼパムとその主な代謝産物の代謝時間は2倍から4倍になる。従って、1回投与量を減らし、かつ/または、投与間隔をあけるべきである。
不眠症 ? 5?10 mg 入眠時、経口。20 mg 必要になることはほとんどない。日本では熟眠薬としてのセルシンに保険適用が無いので、この用途ではエスタゾラム、フルニトラゼパムなど、その他のベンゾジアゼピン類が用いられる。早朝覚醒型睡眠障害については、漫然と抗不安薬を投与せず、必要に応じてうつ病を除外診断することが必要となる。
不安障害、パニック障害 ? 5?10 mg、経口(5 mg ないし 10 mg 錠など)より必要に応じ増量。ないし、ゆっくりとした静脈投与。呼吸抑制のリスクのある薬剤なので、ジアゼパムの経静脈投与には、最低1分はかけるのが望ましい。
術前・術後の鎮静 ? 5?10 mg 経口、(ないし経腸)、あるいはゆっくりと経静脈投与。(0.2?3 mg/kg) 術後に 5?10 mg を追加しても良い。
けいれん発作重積状態 ? 30分以内に停止させること。注射剤、痙攣が制御されるまで、ないし総量20mgまで。(英語版ではもう少し総量を上に見ている。資料にもよる。)1、2分で効果が発現する。効果がなければフェニトイン(アレビアチン)などを追加する。正確には、ジアゼパムで稼いだ時間に次の治療法を考える形になる。
破傷風 ? 注射剤 10 mg/回、5% ブドウ糖液 20 mL に希釈しゆっくりと静脈投与。30?60分毎。(通常は大量投与が必要になる。無効ならICU管理。)
筋肉痛 ? 日本では非ステロイド性の消炎鎮痛薬、そして各種の湿布類が用いられることが多い。ただしこむらがえりには、芍薬甘草湯などと並んでジアゼパムが特効的に用いられる。
熱性痙攣 ? 痙攣が続いていて、静脈ラインが迅速に確保できる場合注射剤、0.3?0.5 mg/kg を3?5分かけて静注。不可能な場合はダイアップ坐剤、0.4?0.5 mg/kg/回を経腸投与する。効果発現には数分かかる。効果がなければ小児科専門医への紹介が必要となる。
熱性痙攣の発症予防 ? 複数回の熱性痙攣の既往がある小児、熱性痙攣はまだ1回しか起こしていないが家族歴濃厚なため反復の可能性が高い小児、てんかん患者のうち発熱に伴い痙攣のコントロールが不良になる患者などで適応がある。発熱に気づいたとき(体温は、各患者の痙攣の起こりやすさや起こるタイミング、平熱などを勘案して決めておく)にダイアップ座薬を1回、8時間後に発熱が続いている場合(解熱剤を使用している場合を含む)にもう1回挿肛する。投与量は上記と同じく0.4?0.5mg/kg/回。
実際に使用(処方)する場合、添付文書が各剤形ごとに、インターネット上に日本語・無料で公開されているので、原則としてそれを参考にするべきであろう。
長期投与時のルーチン検査は、通常は指示されない。(検査例:心電図・脳波・血液検査など)
なお、数週間を越える服用後は、ゆっくりした離脱なしに、急にジアゼパムを中止してはならない。ジアゼパムの離脱には数週間、時に数ヶ月を要する。最初の 50% は比較的急激に減量でき、次の 25% はかなりゆっくり、最後の 25% は極めて緩徐に減量する。これは、不快であったり、ときに重大な問題になる離脱症状を避けるためである。時に、50% の減量後に一時的な休薬が指示されることもある。