1961年にレオ・スターンバックらのグループは以下の方法によるジアゼパムの合成を報告した。ジアゼパムのスターンバックらによる合成
p-クロロアニリンに過剰量の塩化ベンゾイルを加えて、アミノ基をベンゾイル化し、そこに塩化亜鉛を添加して、そのまま連続的にフリーデル・クラフツ反応を行なう。ここで反応物はもう1分子の p-クロロアニリンが一つのカルボニル基とイミンを形成し、もう1つのカルボニル基とはアザアセタールを形成して6員環化合物になっている。硫酸-酢酸-水による反応で、この余計な p-クロロアニリンを除去すると同時にアミノ基上のベンゾイル基を脱保護する。
続いてヒドロキシルアミン塩酸塩との反応でオキシムを得る。この際に得られるオキシムは主に (Z)-体であるが、後の反応に必要なのは (E)-体であるため、異性化を行なう。ギ酸によりオキシム窒素をホルミル化すると、異性化が起こると同時にギ酸のカルボニル基がアミノ基とイミンを形成した6員環化合物が得られる。水酸化ナトリウムによりこのホルミル基を除去すると、(E)-体のオキシムが得られる。
次にクロロ酢酸クロリドとのショッテン・バウマン反応によりアミノ基をクロロアセチル化する。さらに水酸化ナトリウム存在下で反応させると、オキシム窒素のクロロアセチル基への求核置換が起こり、ベンゾジアゼピン骨格が形成される。なお、スターンバックらはこの化合物の合成法について、同じ文献上でいくつかの別法も報告している。
ナトリウムメトキシドにより、アミド窒素上のプロトンを引き抜いた後に、ジメチル硫酸によりメチル化する。ラネーニッケル触媒を用いて1気圧の水素ガスにより N-オキシドを還元すると、ジアゼパムが得られる。なお、メチル化と N-オキシドの還元の順番は逆でも問題ない。
参考文献
Sternbach, L. H.; Reeder, E.; Keller, O.; Metlesics, W. J. Org. Chem. 1961, 26, 4488.
Sternbach, L. H.; Reeder, E. J. Org. Chem. 1961, 26, 4936.
逸話
ゲーム「メタルギアソリッド」には、狙撃時の手ぶれを少なくする効果で、ジアゼパムがアイテムとして登場する。
ローリング・ストーンズにはジアゼパム (Valium) に捧げられた曲『マザーズ・リトル・ヘルパー』があり、その中で "little yellow pill"(小さな黄色い丸薬)として登場する。
ジャガイモなどのように、ある種の植物にはごく微量のジアゼパムやテマゼパムが含まれている。
1975年、ニュージャージー州在住であったカレン・クィンランはアルコールとともにジアゼパムを摂取し、意識障害と呼吸停止をきたした。その後彼女は昏睡状態となり、遷延性意識障害と診断された。患者の家族は彼女の死ぬ権利を主張したが、彼女が入院していたカトリック系の病院はこれを認めなかった。このため法廷闘争となり、州の最高裁判所によって家族の主張を支持する判決が下された。そして彼女の人工呼吸器は取り外されたが、クィンランはなお9年間にわたって生き続けた。これは患者の自己決定権としての「死ぬ権利」が法的に認められた最初の事例であると考えられている。
中島らもの自伝的作品「今夜全てのバーで」にはアルコール依存症で入院した主人公が不眠症になり、医者にジアゼパムの注射を要求する場面がある。
映画「スペースボール」(1987年、メル・ブルックス監督)に登場するナルコレプシーを患ったValium王子の名は、このジアゼパムの米国での商品名に由来している。なお、日本語字幕などではValiumの名が全く知られていないため、「アクビ王子」に改名されている。
内容は主として英語版に拠り、処方例、適用などについては日本の事情に即して若干書き加えた。英語版のリンクも参考になる。
まず、ジアゼパムの利用者は、以下のサイトから各ジアゼパム製剤の添付文書をダウンロードすると良い。副作用などについての速報も、全てここで入手できる。
⇒医薬品医療機器情報提供ページ
その他、以下のような文献が利用できる。
今日の治療薬2002(南江堂) ? 定評ある製剤集成。隔年改訂なので、できれば最新版を用いること。
薬の処方ハンドブック(羊土社) ? 類似の処方集に「今日の処方」(南江堂)などがある。なるたけ新しい版(少なくとも5年以内)を用いるべきである。
カッツング薬理学(丸善)、グッドマン=ギルマンの薬理書(廣川書店) ? 前者については、可能ならば原著を用いることを薦める。薬理学的な内容については、医薬系の大学図書館などで後者にあたると良い。
小児の薬の選び方・使い方(南山堂) ? 小児科領域の処方に関する丁寧な概説書。
⇒おくすり110番
Harriet Lane Handbook 16ed. (Mosby) ? 最近版が上がった。小児科領域の代表的なハンディガイドであるが、頻用薬の欄に米国における胎児危険度分類・授乳危険度分類・腎機能低下時の容量変更の必要性が3つ組で記載してあり便利である。
※なお、本項目では、基本的に強調体で商品名を表示した。そのため、処方とその他の部分で語順が逆になっているが、これは処方集の一般的な慣習に従ったためである。注意されたい。 カテゴリ: 出典を必要とする記事 | ベンゾジアゼピン系 | 獣医薬理学
更新日時:2008年6月17日(火)14:59
取得日時:2008/08/18 02:02