2007年末から実施した東ヨーロッパ諸国と同時に調印したキプロスは、異なる予定で動いている。スイスにも実施が求められており、従って未実施は計4ヶ国、現在残りの24ヶ国がシェンゲン協定実施中となる。
シェンゲン加盟国以外に、特記すべきいくつかの国がある。正式にはシェンゲン地域には入っていないが、既に国境検問所が撤去されており実質的に加盟しているとみなせる国にモナコ、サンマリノ及びバチカン市国がある。他方アンドラには、国境検査所が残っている。
以上の国はこれまで伝統的な欧州共同体での人の自由移動について合意しておらず、また本協定の加盟国でもない。しかし、これら各国は隣接する国との間で、国境検査の廃止に関わる合意が存在する。地中海に接するモナコの場合、フランス当局がモナコ海港の国境管理を行っていることから、シェンゲン協定締結国であるフランスの一部ともみなせ実質的な加盟国といえる。
リヒテンシュタインもまたシェンゲン地域に含まれない。協定調印は済ませたが未実施であるスイスとの国境は自由に行き来できる。しかしオーストリアとの間では国境検査を行っている(同国内には空港がないため、国外からの移動は陸路に限られる)。また欧州経済地域(EEA)の一部として、伝統的な欧州共同体での人の自由移動を批准している。リヒテンシュタインはシェンゲン協定の調印へ向けて、2005年8月に交渉を開始した。
シェンゲン協定の規定シェンゲン加盟国の国境の風景。ドイツ(バイエルン)とオーストリア(チロル)の国境には検問所は無く、ここからドイツであるという内容の看板だけがたっている
シェンゲン協定が制定される前、西ヨーロッパ諸国民は国民IDカード又はパスポートを国境で提示することで隣国へと移動することができた。他地域の国民はパスポートに加えて査証が必要な場合には、訪れたいヨーロッパの各国別々に取得せねばならなかった。国境検査所の膨大なネットワークが大陸を張り巡らされており、必要な書類作成並びに審査によって人の流れや運輸及び貿易に時間的な遅れや費用が余計に生じていた。
シェンゲン協定により加盟国間での国境検査は廃止するが必要な取り決めはそれだけに留まらず、加盟国のシェンゲン外に対する国境検査政策を統一することも意味する。これは、ある国が受け入れ可能であっても他国には入れなかった人物が片方が認めてさえいれば両方に入国可能になるために欠くことができない。例えばまた、もし入国基準が統一されていなければ移民者は最も入り易い国境を通過し、直接は入国しづらい国へと向かうこともできてしまうこととなる。
加盟国がもし自国国家の安全に関わるとみなせる状況と判断したときに短期的に国境検査所を設置することは、条約の2.2項により認められている。
ポルトガルがサッカー欧州選手権2004開催時に設置。
フランスがD-Day(第二次世界大戦において連合国がフランスのノルマンディーに上陸した日である1944年6月6日)の60周年記念式典で設置。
フランスが2005年7月のロンドン同時爆破事件の後、一時的に設置。
イギリスはシェンゲン地域でなく、つまりフランス-イギリス国境検査所は事件前から常に稼動していたにもかかわらず、設置されることとなった。爆破犯の一人は常にフランスを通じて各国と行き来しており、ローマで初めて捕えられた。
フィンランドは2005年8月ヘルシンキ・オリンピックスタジアムで実施された2005年世界陸上選手権開催時に設置。
オーストリアがサッカー欧州選手権2008開催時に設置。
シェンゲン地域内での犯罪捜査に対抗するため、加盟各国警察はストラスブールに設置されたシェンゲン情報システムを通じて犯罪者、行方不明者等の情報を共有している。これにより互いの国が登録人物の背景についての情報を持つことで、ある加盟国から別の国へと移動することで消息をくらませることができなくなる。
以前には警察によって緊急追跡を受けている犯罪者は、何とか国境を渡ってしまえば警察があきらめざるを得なかったために逃げおおすことが可能であった。しかしシェンゲン協定の下では警察はそのまま国境を渡り追跡を続けることが可能となる。
シェンゲン協定は犯罪者による緩やかな国境検査の悪用を最小化するため、いくつかの関連政策領域で各国法令を一致させることを目指している。例えば麻薬に関するオランダとフランスの政策とは異なっていることから、オランダ国内で麻薬を購入しフランスへと運び込みブラックマーケットなどで売り捌こうと企むことは、2国間に国境検査所がなければ非常に簡単なことである。この麻薬関連政策の違いからフランスは条約の実施後もある期間、ベネルクス諸国からフランスへの入国者に対しての国境検査所を維持すると主張していた。
ノルウェー、アイスランド及びスイスを除く全てのシェンゲン協定加盟国はEUのメンバーでもある。一方EU加盟国のうちの2ヶ国(イギリス及びアイルランド)は、シェンゲン協定に調印しないことを決めた。イギリスは国境検査所を維持し続けることを望んでいる。アイルランドはシェンゲン協定と同様な内容を持つCommon Travel Area(仮訳:共通旅行区域)に関する協定をイギリスと結んでおり、もしイギリスがシェンゲン協定に調印するならばアイルランドも同調すると述べている。またどちらも国民IDカードを発行していないこともあって、協定に加盟することはほとんど利点がないのである(デンマークも国民IDカードを発行していないが、全国民は付与されたCPR(Central Person Register)番号により様々な行政サービスを受けることができる)。