武器としての使用を主眼においたナイフはファイティングナイフと呼ばれる。バタフライナイフ、スイッチナイフ、トレンチナイフ、銃剣[9]などがここに含まれる。
宗教的な象徴としての意味を持つナイフもある。例えばイエメンをはじめ中東〜中近東といったアラビア世界では、ジャンビーヤと呼ばれる湾曲したナイフがあるが、これは遊牧民が家畜をさばくような日常生活でも利用される一方、成人した証でもある。大人になった男子はこのナイフを与えられ、一人前とみなされる。こういった儀礼的ナイフは世界各地に見られ、その多くは美しく宝飾されていたり、あるいは彫金されているなど、一種のアクセサリー的な側面もある。
その一方で宗教的な行為に使用されるナイフも見られ、神秘主義の中には儀式において所定のナイフを使用するものがあるほか、ヒンドゥー教では新生児の枕元にマッチと共にナイフを置いて魔除けとするなどといった風習も見られる。北欧のブラウニー伝承がある地域では妖精による「取替え子」を防ぐために妖精の嫌うナイフなど鉄製品を赤ん坊の傍に置く風習が見られる。他にも大航海時代より西欧の船員は一種の護符としてナイフを携行したという話もある。ナイフは身近で汎用性のある便利な道具であったため、このような用法も発生したと思われる。
21世紀初頭の現在、ナイフの多くは炭素鋼もしくはステンレス鋼のものが多い。炭素鋼は焼入れによって高い硬度を得られる反面、脆く、錆に弱い。ステンレス鋼は錆に強く粘りがあるが、そのために加工しにくく、また炭素鋼ほどの硬度は得られない。近年開発の進むファインセラミックス系の素材は、欠けやすく加工しにくいという扱いにくい所もあるが、将来的には有望視されている素材ではある。いずれにしても耐久性の面を別にすれば、加工しやすい硬質な素材はほぼ全て、ナイフの材料として用いる事が出来る。
黒曜石や火打石などは打製石器の材料として利用され、それ以外のさほど脆くない岩石からは磨製石器が作られたが、これらの石を材料に製作された石器が、様々な地域で普遍的に出土している。黒曜石や火打石・石英を含む岩石は、打撃を加える事で薄く鋭く剥離し、その外縁が刃物として利用できるだけの鋭さを持つ。鋭利さに注目すればこれらは砥石で砥いた金属製の刃物を凌駕するものである。
動物の骨や角は弾力性があり、また十分に硬いため、古くはナイフの材料に、現代ではナイフの柄の材料に用いられる。骨の主成分はリン酸カルシウムや炭酸カルシウムであるが、その他にも様々な成分が密接に関係して、十分な強度を持っている。このため磨製石器よりも更に精細なナイフを製作可能である。反面、鋭さに欠け、切れ味はあまりよくなく、また耐久性も鉱石に比べると経年変化に弱い。その他、材料となる骨の大きさで製作可能なサイズも決まるため、あまり大型の物を作る事が出来ない。
青銅は、融点が低くて比較的精錬しやすい金属である銅と錫等の合金であるが、そこそこの耐久性があり、また加工も容易であるため、長く使われた歴史を持つ。これら青銅器のナイフ類は石のナイフのように簡単に砕けたりせず、骨などよりも硬いため、非常に便利が良く、広く用いられた。しかし硬度の面で難があり、やがて鉄器が普及するにつれて、次第に姿を消していった。
鉄や、それを浸炭して作られる鋼は、近代に至るまで、広くナイフに利用され、その切れ味は研ぎ易さとあいまって、今日に至っても非常に高く評価されている。手入れさえ十分なら素材自体が入手し易く安価であるため、必要な機能を安価に実現できる。しかしこれらの素材は良く錆を生じるため、動物解体用や調理用の刃物にはあまり適さないことから、現在ではステンレス鋼が使われることも多い。
炭素鋼系がよいのかステンレス鋼系が良いのかはナイフの製造方法や使用方法を総合して考えると一長一短がある。ステンレス鋼も種類によって性質が異なり、いずれが良いかはユーザーのニーズと共にナイフメーカーの個別的選択にかかっている。そのため鋼材メーカーは幾つかの材料を取り揃えて販売をしている。ただ、機能性の高い鋼材はそれだけ高価な傾向がある。
一般向けに販売されているポケットナイフなどでは、グラインダーによる削り出し製法が主流になった関係で、炭素鋼(特に鍛造鋼)は少数派となりつつある。しかし研ぎ易く手入れさえよければ切れ味を維持することに向くため、ヨーロッパなどの伝統的なナイフメーカーが炭素鋼のナイフを製造している他、電工ナイフの中にもケーブル加工でビニール皮膜を切削する際「押し切る」という形で常に鋭さを求められる事から、炭素鋼のものが出回っている。
浸炭の過程で鍛造工程が入るナイフも多く、この鍛造工程如何でもナイフの性能・性質が左右される。鍛造工程の中にはダマスカス鋼のように、他の金属との重ね合わせで強度を付与する場合もある。日本刀のような複合構造をもつナイフも、ナイフビルダーによって製作されている。
ステンレス鋼は鋼材の一種であるが、一口にステンレスといっても、それを構成する金属元素の組成によって、様々な特性を持つ。ステンレスは一定の粘りがある事からグラインダーによる削り出し製法(R・W・ラブレスのストック・アンド・リムーバルが有名)に向き、大量生産する上でも有利である。また意匠を凝らしたナイフの製造も可能であることから、現代の主要なナイフメーカーから個人のカスタムナイフ製作者まで幅広い層に受け入れられている。
ステンレス製のナイフは多くの場合、鉄や鋼の刃物に比べ、研いだ時にバリが残りやすく、上手に研ぎ難い。これはステンレスがある程度、粘りを持っているために研いだ際に切っ先からバリが反り返って取れ難くなるためであるが、特にナイフに使われる素材では、耐衝撃性など耐久性が重視されるために、この傾向が強い。このバリを取らないと、刃物としての切れ味は格段に落ちる。これをきれいに取り除くためには熟練を必要とするが、簡単な方法としては、片側を重点的に研いで、反対側は刃先から峰の方向に砥石の上で軽く滑らせて数回、研ぎ落とす方法である。