X線CTは短時間でほとんど苦痛なく検査ができ、それでいて多くの情報を得ることができることから、決して万能ではないものの、超音波検査と並び最もよく用いられる画像検査のひとつである。
あらゆる領域における多種多様な疾患のスクリーニング・精査目的の検査として適応がある。
造影剤を使用せずに撮影を行うものを単純CT (plain CT) と呼ぶ。脳内出血、組織の浮腫、骨の形態異常、肺の形態などは、造影剤を用いなくても(あるいは用いない方が)充分に観察できる。
臓器によっては腫瘍の存在をはっきり視認できないことも多いが、周囲の組織の圧排などから推測できることもある。
単純CTに対して、X線吸収率の高いヨード造影剤を血管内(通常は末梢の静脈内)に注射してから撮影を行うものを造影CT (contrast enhanced CT; CECT) と呼ぶ。
造影剤は注入された後、血流に沿って全身の血管に移動するほか、毛細血管からの拡散によりゆっくりと血管外の細胞外液にも移行し、各種臓器の実質を染める。
血管内や、血流が豊富な組織が濃く(白く)描出され、画像のコントラストが明瞭になる。多くの腫瘍は周囲の正常組織より血流が豊富であるため、観察しやすくなる。一部の腫瘍や、虚血部分は造影されない(黒く描出される)ため、これによっても病変を診断できる。単独で、または単純CTと併用して診断に用いられる。
撮影の目的によって、これらのどのタイミングで撮影するべきかが異なる。大まかにいえば、血管の評価が主な目的であれば早期相(注入開始後15秒?30秒)での撮影が、その他の臓器の評価が目的であれば遅延相(注入開始後120秒以上)での撮影が適する。造影剤の注入速度や造影剤のヨード濃度も検査の目的によって様々に選択される。
主な造影剤の種類 (非イオン性・陽性造影剤、主成分:ヨード)
オムニパーク(第一三共)
イオパミロン(バイエル)
イオメロン(エーザイ)
オプチレイ(タイコヘルスケアジャパン)
特殊な造影CT撮影法を以下に示す。
ダイナミック造影CT
造影剤を急速静注(毎秒3mL以上)したのち、複数のタイミングで同じ部位を反復撮影するもの。特に肝臓や膵臓腫瘍の診断に有効であり、腫瘍のタイプによって血液の洗い出し時間が異なることを利用している。例えば古典的肝細胞癌は、動脈相では周囲の肝実質より強く染まるが、遅延相ではむしろ周囲の肝実質より低吸収のパターンを示すことから診断可能である。
CT血管撮影(CTアンジオ)
造影剤を急速静注したのち、動脈内の造影剤濃度が最も高くなるようなタイミング(動脈相)でCTを撮影することで、動脈が明瞭に描出される。動脈瘤等の動脈疾患の診断に用いられる。
IVR-CT
カテーテル検査の最中に、動脈や静脈に直接造影剤を注入しながらCT撮影を行うもの。狙った血管や臓器のみを強く造影することができ、正診率が高まることが期待される。
ヨード以外の造影剤を用いるCTとしては、空気や水を陰性造影剤として消化管に注入したり、リピオドールなどの油性造影剤を注入後に撮影するCTもある。
体内の組織を取り出してその性状を調べる検査(生検)は、針を刺すだけで施行できれば切開するのに比べて侵襲をはるかに少なくすることができる。CTで位置を確認しながら穿刺部位を決定することで実現したものをCTガイド下生検と呼ぶ。肺腫瘍等の診断に用いられている。
その他CTガイド下にドレナージや薬剤注入を行う場合がある。
CTは極めて安全な画像検査であり、先進国ではほとんどの大病院に普及し日常的に施行されているが、人体への悪影響(副作用)として以下のようなものがある。
放射線による被曝
CTによる被曝線量は各種放射線検査のうちで、やや多い方に属する。被曝量は検査部位や検査方法、機器の性能や設定によって異なり、たとえばダイナミックCTの場合には1回のみのスキャンと比較して被曝が増える。検査によっては1回で数十mSv?100mSvを超えるX線被曝を受けることもある。ただし血管撮影をはじめとするX線透視下に行う各種手技(IVR)に比較すればCTの被曝量は総じて少なく、また放射線治療目的で使用される線量と比較すると、数十?数百分の1にとどまる。従って一般的に、放射線による健康被害のうち、確定的影響(ある閾値を超えれば誰にでも起き、逆にある閾値未満では決して起こらない影響)とされる急性期の放射線障害がCTで起こる可能性は皆無であり、考える必要はまずない(つまり白血球減少・脱毛・吐き気、あるいは大量被曝による死亡などが即座?数週間のうちに起こる可能性はない)。CTで問題となるのは、数か月?数十年後に初めて顕在化してくる悪性腫瘍のリスクの増加、あるいは子孫への遺伝的影響である。これらは確率的影響と呼ばれ、どんなに少量の被曝であってもリスクはゼロにはならず、少量の被曝なりに少量のリスクが存在するものと仮定されている(直線しきい値無し仮説。疫学的証明があるというよりは、安全のためにそのようなモデルが「想定」されている)。従って放射線検査は必要最小限のみ行い無駄な被曝をしないようとどめることが原則である。
CT被曝による具体的な健康被害のを統計的に見積もることは難しい。最低でも数年にわたる追跡が必要になるし、CTを受ける人は通常何らかの症状があり元々癌の可能性が高い。健康な成人をCTを施行する/しない群に分けて追跡するのは倫理的問題があり、またCTを施行するほど当然無症状の早期悪性腫瘍は余分に見つかるので、見かけ上の癌発生率は高まってしまう。
悲観的なデータでは先進国の発癌の原因の数%がCTによるものという見積もりもあり、何度かマスコミで報道され問題化したこともある。しかしこれらは日本の原子爆弾被爆者追跡結果との対照で推定された数値であり、前述の直線しきい値無し仮説じたいも悲観的仮定に過ぎない(被曝参照)ため、これらに依拠した見積もりの信頼性に疑問を呈する声も強く、専門家でも意見の一致はない。現状では1回のCT検査程度でとり立てて発癌を恐れる必要はなく、ほとんどの場合、リスクよりも得られる情報の方が遙かに高い有益な検査であるが、特に若年者で放射線感受性の高い部位(生殖器など)の撮影を繰り返す場合や妊婦の場合など、慎重な判断が必要である。
医療機器への影響
従来、心臓ペースメーカーへの影響はないとされていたが、2005年に一部の心臓ペースメーカーにおいて、CT検査中にリセットを引き起こす稀な事象が確認された。植え込み型除細動器の誤作動も報告されている。これらは生命に危険を及ぼす可能性があり、機器にX線を照射しないようにしたり、照射時間を減らしたりするなど、各病院で対応策が採られている。
閉所恐怖症者への心理的作用
CTはMRIと比較すると短時間で検査が済み、検査機器による圧迫感も少ないが、重度の閉所恐怖症患者においては恐怖やパニックを惹起し、施行困難となることがある。そういった場合、検査の有用性を考慮した上で、鎮静剤等の使用も検討する。