エントロピーは物や熱の属性で、それらに対する拡散の程度を表す示量性状態量である。
エントロピーが増加するために、熱エネルギーのすべてを他のエネルギーに変換することはできない。したがって、熱エネルギーは低品質のエネルギーとも呼ばれる。
化学反応や電場・磁場等の影響がない時、熱力学第一法則よりdU = d'Q + d'W(U: 系の内部エネルギー、Q: 系に与えた熱量、W:系に与えられた仕事)と表すことができる。平衡状態であれば、d'W = ? PdV(P: 系の圧力、V: 系の体積)であることと、エントロピーの定義を変形したd'Q = TdSより、dU = TdS ? PdV
と、内部エネルギーを完全微分の形で表すことができる。
似た用語のエンタルピーとは別ものであり、注意を要する。
熱平衡状態に達した孤立系の取りうる微視的状態数をΩとして、ボルツマン定数をkBとした時、エントロピーSはS = kBlnΩ
で表される。
また、等確率の原理より、ある微視的状態をとる確率Pはを満たすことから、
と表すこともできる。 すなわち、統計力学におけるエントロピーは情報理論におけるエントロピーと定数倍を除いて一致する。
ブラックホールのエントロピーは表面積に比例する。
ここでAはブラックホールの事象の地平面の面積、はディラック定数(割られたプランク定数)、kはボルツマン定数、Gは重力定数、cは光速度そしてSがエントロピーである。
シュレーディンガーは、生命をネゲントロピー(負のエントロピー)を取り入れエントロピーを排出することで定常状態を保持する開放定常系とした。この負のエントロピーというのは、光合成の反応がエントロピー増大にならないように見えたことによって作られたものである。しかし、このような誤解は光合成の際にブドウ糖合成に使われる約49倍の光エネルギーが熱となりエントロピーの発生になっていることを見落としているために起きたものである。ちなみに、このときに発生する熱の多くを、植物は蒸散として外部に処理している。 このように負のエントロピーなどという特殊なものは存在せず、生物も他の熱機関と同じように開放定常系として扱うことができるが、生物が違うところは自らを修復することにより積極的に物質循環を維持することである。例えば、エンジンにおいてそれを構成する主要な部品のどこかが不良になると、そこから物質循環が破壊されエントロピーが蓄積されるか、燃料など活動に必要な物質が供給されず、停止してしまう。しかし、生物の場合は、欠損した物質を外部から取り入れ、細胞などの構造を復元することにより物質循環を復活させることができる。これができなくなったときに生物は死を迎えるのである。
ルドルフ・クラウジウスは1854年にクラウジウスの不等式として熱力学第二法則を表現していたが、彼自身によって「エントロピー」の概念が明確化されるまでにはそれから 11 年を要した。 非可逆サイクルで 0 とならないこの値をクラウジウスは仕事と熱の間の「変換」で補償されない量として、1865年の論文においてエントロピーと名付けた。 エントロピーという言葉はギリシャ語で「変換」を意味するトロペー (τροπ?) に由来している。
その後ボルツマンやギブスによって統計力学的な取り扱いが始まった。 情報量としてはクロード・シャノンが1948年にジョン・フォン・ノイマンの勧めに従って命名している。
脚注^ いくつか例を挙げる。分子が自由に動き回る気体は、分子が結晶格子に束縛されている固体よりも、エントロピーが大きい。砂糖を水に溶かして水溶液中で拡散させると、砂糖のエントロピーが大きくなる。 しかし、本が本棚に並んでいるのと床に散らばっているのとではエントロピーは変わらない。どのような本の並び方(巻数順に並べるか、大きさ順にするかなど)はどちらが乱雑かということは議論できないからである。一般に、エントロピーが乱雑さを表すというのは、原子・分子のレベルでの話であり、我々の暮らしている大きさの世界の話と混同してはならない。
^ ⇒IUPAC Gold Book - entropy, S
関連項目
情報理論におけるエントロピー
コルモゴロフ複雑性
シャノンの定理
散逸構造
エンタルピー
ネゲントロピー
ギブズのパラドックス
外部リンク
⇒(百科事典)「Entropy」 - スカラーペディアにある「エントロピー」についての項目。(英語)
カテゴリ: 統計力学 | 熱力学
更新日時:2008年9月15日(月)03:20
取得日時:2008/10/10 08:38