構造
昇降路(シャフト)
昇降路は別名シャフトと呼ばれ、エレベーターが上下するための何らかの構造物で覆われた縦に長い空間の事である。シャフトを構成する材料は鉄筋コンクリート構造や鉄骨構造が多い。その他シャフト一体型と呼ばれるシャフト部材と機器本体を一体で工場にて製作し現場に据付するタイプも存在する。シャフト一体型は小規模集合住宅に適しており、昇降行程が低く小容量の後付用以外にはほとんど用いられない。
カゴ
人が乗るための箱状の構造物をエレベーターにおいてはカゴと呼ぶ。英語ではCARと呼ぶ(車の呼称と同じ)。これに人または荷物を乗せ上下させる。室内は乗客の安全を確保するためドアによって閉ざされている。なお、カゴのドアには挟まれを防ぐため、大きな棒状の安全スイッチが取り付けられている。このスイッチが押されるとドアが反転して開く仕組みになっている。時折り見かける光景として、エレベーターのドアを閉じさせまいとして手足をドアに挟む者がいるが、安全スイッチを押さない限り手足はドアに挟まれてしまうので注意したほうがよい。その他、室内には目的フロアを指定するボタンとドアを開閉するボタンが備え付けられていて、天井には換気扇が取り付けられていて通気性は確保されている。
ガイドレール
ガイドレールとはエレベーターを導く軌道である。材質は鋼でできており、形状は鉄道のレールとよく似ている。それを垂直方向につなげてエレベーターの軌道を構成していく。ガイドレールの役目はカゴが落下した際の緊急停止構造であると同時に、各階に設置されたドアやカウンターウエートなどの構造物とのクリアランスを確保するためにある。また安定した乗り心地を生む役目もある。ガイドレールとカゴが接触する部分にはガイドローラーやガイドシューと呼ばれる潤滑具などで摩擦や振動を低減させている。
釣り合い錘(おもり)
カウンターウェイトとも呼ばれ、つるべ式エレベーターで用いられる錘である。全体の形状は扁平で縦に長く、非常に重たい鉄の塊である。つるべ式はトラクション式とも呼ばれ、ワイヤーロープの両端にカゴと錘をぶら下げてバランスを取り、ワイヤーロープ折り返し中間地点に設置された電動機(モーター)と、それに連結された滑車(シーブ)に掛かる摩擦力によってカゴとウェイトを上昇下降させる方式である。この方式だとロープ両端の重量バランス良いため、比較的軽い力でロープに吊るされた物体を上昇下降させる事ができる。カゴとウェイトのバランスが均等にとれている状態だと、人の手でエレベーターを動かす事もできるほどにモーターに掛かる負担は小さくなる。カウンターウェイトの重さは無積載カゴ重量1.5倍程の重さがあるが、カゴ側の乗客が満員状態になるとカウンターウェイト側はカゴ側の3/4程の重量になるように設計されている。
ワイヤーロープ
ワイヤーロープはトラクション式エレベーターなどで用いられる巻上索である。材質は炭素鋼が用いられる。ロープの構造は、まずストランドと呼ばれる細い鋼線を撚り合わせたものがあり、さらにそのストランドを8本程撚り合わせて出来ている。柔軟性を保つためにロープの中心部にはマニラやサイザルなどの硬質繊維芯が入っている。太さは直径10ミリ、12ミリ、16ミリなどがあり、カゴ積載量に応じて使用する本数が増えたり、より太いものが使われる。トラクション式ではロープの両端にカゴとカウンターウェイトが吊るされていて、それらの連結部にはソケットと呼ばれる器具にバビットメタルを注入する末端処理が施されていて、連結強度を確保している。
高層ビルのエレベーターでは使用するワイヤーの量が多く、そのままの状態だと最上下階近辺ではカゴとカウンターウェイトがワイヤーロープの自重によってアンバランスになり、巻上機のシーブから滑り落ちてしまう恐れがある。そのアンバランスを解消するためにカゴ底部とカウンターウェイト底部の間にはコンペンセーティングロープ(或いはチェーン)と呼ばれるバランス調整用のワイヤーロープが渡されている。
調速機
調速機はガバナー又は非常止め装置とも呼ばれ、万が一主ロープが切断された場合でもカゴを緊急停止させる機能を持つ。通常、調速機は機械室やピットに設置される場合が多い。
調速機の仕組み:調速機はカゴとロープ(主ロープとは別)を伝って連動しており、カゴが動くと調速機のプーリーが従動して回転する。調速機ロープの終端部はカゴ側に位置し、その終端部に鋭いクサビ型の金属片が装着してある。万が一、主ロープの切断などにより一定の速度(建築基準法の規定では定格速度の1.4倍)でカゴが落下すると、調速機が遠心力によって機能し調速機ロープをロックさせる。ロープがロックされるとクサビ型の金属片はカゴの落下とともにカゴとレールの隙間に挟まり込み、カゴを停止させる仕組みになっている。
緩衝器
サスペンションとも。最下階のさらに下部および最上階の上部(ピットと呼ぶ)には緩衝器(バネや油圧ダンパー等)が付いており、非常止め装置を使用しても減速しきれない場合の衝撃をやわらげる仕組みになっている。
ドア
ドアはかご側と乗場側とにあり、乗場側はインターロックと呼ばれる装置で施錠され、外部からの解錠は専用の器具を使用しない限りできない。その上、かご側及び全階の乗場側に戸閉めを検出するスイッチがあり、全ての扉が閉じていなければ起動できないように回路が構成されている。縦開き式など特殊なエレベーターを除き、かご側のドアのみに駆動装置がある。停止階に到着したエレベーターは、かごドア側の解錠装置と乗場ドアのインターロックがかみ合い、乗場のドアはかごドアの力によりインターロックによる施錠が解放され、開閉する。また、外観としては横方向に動くサイドスライドドアが主流となっている。サイドスライドドアにはサイドオープン式(片開き)とセンターオープン式(真中開き)がある。なお、ドアを開かせるには昇降路面積が余分に必要になるため、マンションなどの小型機種では小面積で済むサイドオープン式が好まれており、デパートや大規模施設などでは見た目の良さや、乗り降りのし易さなどからセンターオープン式が好まれているようである。特大貨物用にはドアが上下方向に動くアップスライド式ドアが採用されている場合がある。その他のドアとしては、円形のカゴに対応する円弧状ドアや、格子状の折りたたみ式ドアなどがある。
地震感知器
エレベーターの地震感知器には地震波の検出で大別して3段階ある。
初期微動(P波:たて揺れ)あるいは低レベルの本震を検知して最寄階に停止後、震度4以上(目安)の大きな横揺れがなければ一定時間後に自動復旧するもの
震度4以上の揺れを検知して、最寄階に停止し運転を休止するもの(この場合保守会社の作業員が機器の安全を確認後地震感知器を復旧する)
更に大きな揺れ(震度5クラス)を検知した場合でなおかつ最寄りの階まで数階離れている場合(急行ゾーン)は途中で急停止させる(保守会社またはビルの技術者の指示により釣り合い重りと反対方向の最寄階まで極低速で運転する)。
ただし、いずれも地震の揺れにより機器が損傷し地震感知器とは別の安全装置が働いた場合(乗場側の戸閉検出装置がかごの接触により誤動作する場合が大半)は、閉じ込められることもある。この場合には途中で急停止するため、かご内に閉じ込められることになる。一度この状態になると、エレベーターの保守会社が現地に出向かないと復旧することができないため、救出(主に保守会社か消防のレスキュー隊による)に数時間から丸一日以上を要することもあり、地震が発生する度に大きな問題になっている。(だからといって、天井の救出口から自力で出ようとしない事。あれは中から出るのではなく、外から引き上げるための物であるため、外からボルトで固定してあったり施錠がされている。むやみに自力で外部へ出ようとすると停電復旧などで突如エレベーターが動き出す事もあるので大変危険である。