一般的な生物
(細胞)リケッチアクラミジア
ファイトプラズマウイルス
細胞構造ありなし
核酸DNAとRNAの両方を持つどちらか片方
増殖様式対数増殖(分裂や出芽)一段階増殖
暗黒期の存在
単独で増殖できるできない(偏性細胞内寄生性)
エネルギー産生できるできない
ウイルスは様々な点で他の生物と大きく異なる。
ウイルスは非細胞性で細胞質などは持たない。基本的にはタンパク質と核酸からなる粒子である。(→ウイルスの構造)
他の生物は細胞内部にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウイルス粒子内には基本的にどちらか片方だけしかない。
他のほとんどの生物の細胞は2nで指数関数的に増殖するのに対し、ウイルスは一段階増殖する。またウイルス粒子が見かけ上消えてしまう暗黒期が存在する。(→ウイルスの増殖)
ウイルスは単独では増殖できない。他の細胞に寄生したときのみ増殖できる。
ウイルスは自分自身でエネルギーを産生しない。宿主細胞の作るエネルギーを利用する。
なお4、5の特徴はウイルスだけに見られるものではなく、リケッチアやクラミジア、ファイトプラズマなど一部の原核生物にも同様の特徴を示すものがある。※ただしマイコプラズマは細胞外で自己増殖が可能である。
細胞は生きるのに必要なエネルギーを作る製造ラインを有しているが、ウイルスはその代謝を行っておらず、代謝を宿主細胞に完全に依存し、宿主の中でのみ増殖が可能である。彼らに唯一できることは他の生物の遺伝子の中に彼らの遺伝子を入れる事である。厳密には自らを入れる能力も持っておらず、ただ標識ドメイン(入場許可証のようなもの)を持っているだけであり、後はその生物の細胞が勝手に導き入れてウイルス蛋白を増産し病気になる。この事からウイルスはまるで、意思も増殖力も生命力もないただの分子機械との見方もある。
構造ウイルスの基本構造(上)エンベロープを持たないウイルス
(下)エンベロープを持つウイルス
ウイルスの基本構造は、粒子の中心にあるウイルス核酸と、それを取り囲むカプシド(capsid)と呼ばれるタンパク質の殻から構成された粒子である。その大きさは小さいものでは数十nmから、大きいものでは数百nmのものまで存在し、他の一般的な生物の細胞(数?数十μm)の100?1000分の1程度の大きさである。ウイルス核酸とカプシドを併せたものをヌクレオカプシドと呼ぶ。ウイルスによっては、エンベロープと呼ばれる膜成分など、ヌクレオカプシド以外の物質を含むものがある。これらの構成成分を含めて、そのウイルスにとって必要な構造をすべて備え、宿主に対して感染可能な「完全なウイルス粒子」をビリオンと呼ぶ。
ウイルスの核酸は、通常、DNAかRNAのどちらか一方である。すなわち、他の生物が一個の細胞内にDNA(遺伝子として)とRNA(mRNA、rRNA、tRNAなど)の両方の分子を含むのに対して、ウイルスの一粒子にはその片方しか含まれない(ただしDNAと共にRNAを一部含むB型肝炎ウイルスのような例外も稀に存在する)。そのウイルスが持つ核酸の種類によって、ウイルスはDNAウイルスとRNAウイルスに大別される。さらに、それぞれの核酸が一本鎖か二本鎖か、一本鎖のRNAであればmRNAとしての活性を持つか持たないか(プラス鎖RNAかマイナス鎖RNAか)、環状か線状か、などによって細かく分類される。ウイルスのゲノムは他の生物と比べてはるかにサイズが小さく、またコードしている遺伝子の数も極めて少ない。例えば、ヒトの遺伝子が数万あるのに対して、ウイルスでは3?100個ほどだと言われる。
ウイルスは基本的にタンパク質と核酸からなる粒子であるため、ウイルスの複製(増殖)のためには少なくとも
タンパク質の合成
ウイルス核酸の複製
1. 2.を行うために必要な、材料の調達とエネルギーの産生
が必要である。しかしほとんどのウイルスは、1や3を行うのに必要な酵素の遺伝情報を持たず、宿主細胞の持つタンパク合成機構や代謝、エネルギーを利用して、自分自身の複製を行う。ウイルス遺伝子には自分の遺伝子(しばしば宿主と大きく異なる)を複製するための酵素の他、宿主細胞に吸着・侵入したり、あるいは宿主の持つ免疫機構から逃れるための酵素などがコードされている。
ウイルスによっては、カプシドの内側に、核酸と一緒にカプシドタンパク質とは異なるタンパク質を含むものがある。このタンパク質とウイルス核酸を合わせたものをコアと呼び、このタンパク質をコアタンパク質と呼ぶ。
カプシド(capsid)は、ウイルス核酸を覆っているタンパク質であり、ウイルス粒子が細胞の外にあるときに内部の核酸をさまざまな障害から守る「殻」の役割をしていると考えられている。ウイルスが宿主細胞に侵入した後、カプシドが壊れて(脱殻、だっかく)内部のウイルス核酸が放出され、ウイルスの複製がはじまる。
カプシドは、同じ構造を持つ小さなタンパク質(カプソマー)が多数組み合わさって構成されている。この方式は、ウイルスの限られた遺伝情報量を有効に活用するために役立っていると考えられている。小さなタンパク質はそれを作るのに必要とする遺伝子配列の長さが短くてすむため、大きなタンパク質を少数組み合わせて作るよりも、このように小さいタンパク質を多数組み合わせる方が効率がよいと考えられている。
ヌクレオカプシドヌクレオカプシドの対称性(左)正二十面体様(中)らせん構造(右)構造の複雑なファージ
ウイルス核酸とカプシドを合わせたものをヌクレオカプシド(nucleocapsid)と呼ぶ。エンベロープを持たないウイルスではヌクレオカプシドはビリオンと同じものを指す。言い換えればヌクレオカプシドは全てのウイルスに共通に見られる最大公約数的な要素である。
ヌクレオカプシドの形はウイルスごとに決まっているが、多くの場合、正二十面体様の構造、またはらせん構造をとっており、立体対称性を持つ。ただし、天然痘の原因であるポックスウイルスやバクテリオファージなどでは、ヌクレオカプシドは極めて複雑な構造であり、単純な対称性は持たない。
ウイルスの中にはカプシドの外側にエンベロープ(外套:envelope)を持つ物がある。エンベロープは脂質二重膜であり、宿主の細胞から飛び出す(出芽する)時に宿主の細胞質膜や核膜の一部をまとったものである。エンベロープ上には、スパイクあるいはエンベロープタンパク質と呼ばれる糖タンパク質が突出していることがある。スパイクはウイルスの遺伝子から作られたそのウイルス独自のタンパク質であり、宿主細胞に吸着・侵入したり、宿主の免疫機構から逃れるための生理的な作用を持つものが多い。また、ウイルスによってはエンベロープとヌクレオカプシドの間に、マトリクスあるいはテグメントとよばれるタンパク質を含むものがある。