インフルエンザウイルス
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多様性の少なさ

B型インフルエンザウイルスのHAとNAには、A型に見られるほどの多様性がない。このため亜型による分類は行われないが、HAの抗原性の違いから、それぞれの流行株はB/ビクトリア/2/87と、B/山形/16/88という2つのグループに大別することができる。A型の流行期には全世界でほぼ同一の株が流行するのに対して、B型ではこの2つのグループに属する異なる株が世界中に混在した形で流行することが多い。しかしながら、それぞれの抗原の差異はA型に比べて小さいため、B型に対する免疫やワクチンはほぼ同一、すなわちB型の中の特定の株にのみ有効なのではなくB型のいずれかに感染、あるいはワクチン接種すれば、B型すべてに対してほぼ一定の効果を得られ、A型に比べて持続時間が長いことが多い。

B型はヒトには感染するが、他の動物に感染した例は報告されていない。このため種を超えた不連続変異の問題は少なく、B型のウイルス変異では連続変異が中心だと言われてきた。このことも本ウイルスにA型ほどの多様性が見られない理由の一つだと考えられている。しかしながら異なる株が同時期同地域に共存しており、少なくともヒトの間では不連続変異による組み換えが起きていることも明らかになったため、このことと疾患との関係が明らかにされつつある。


C型インフルエンザウイルス

C型インフルエンザウイルスは、構造や臨床症状の点でA型、B型との差異が大きい。


構造上の特徴と多様性

C型インフルエンザウイルスには、A型とB型が共通して持っている、HAとNAという二種類のスパイクがなく、その代わりにHE(ヘマグルチニン?エステラーゼ)と呼ばれる、HAとNAの両方の役割を演じる一種類のスパイクタンパク質を有する。またM分節の発現機構が、A型B型のどちらとも異なり、選択的スプライシングによりM1とP42という二種類のタンパク質を合成した後で、P42が宿主の酵素によってM1'とCM2に切断される。このCM2タンパク質が、A型のM2と同じようにイオンチャネルとして働くと考えられている。

C型インフルエンザウイルスのHEにもA型に見られるほどの多様性がなく亜型による分類は行われない。3-4グループが混在した形で蔓延していると言われており、このグループ間での組み換えと疾患との関係が調べられつつある。C型はB型同様にヒト以外の動物には感染しない。


C型インフルエンザ

C型インフルエンザウイルスはA型、B型とは異なり、主に5歳児以下の小児に感染して鼻汁過多を特徴とする鼻かぜ様の症状を呈する。これはC型インフルエンザと呼ばれ、A型やB型と異なり季節性がなく通年にわたって発生する。一度罹患すると免疫がほぼ一生持続し、二度かかることは極めて稀である。小児期にほとんど全ての人が感染するが、この時期に感染しなかった場合には成人にも感染することがある。成人ではさらに咽頭痛などを伴うことがあるが、ほぼ小児のC型インフルエンザと同様である。


公衆衛生

インフルエンザウイルスは、エンベロープを持つウイルスであり、石けん消毒用アルコールなどで処理することによって容易にエンベロープが破壊されて失活する。ウイルス感染は、空気中のエアロゾルだけでなく手や衣類についた飛沫からも起きることがあるため、手洗いが感染予防に有効である。特に石けん消毒剤を用いると効果が大きい。感染予防を目的としたマスクの着用は、ウイルス粒子そのものの侵入を完全に防御することは出来ないが、吸着によって若干の量を減らす効果と、それ以上に吸気の湿度を保って気道粘膜を保護する役割から、予防には一定の効果があると考えられている。また感染者のマスク着用は、周囲への伝染を防ぐために有効である。


抗インフルエンザ薬

インフルエンザウイルスには、その増殖を阻害する薬剤が数種類開発され、実際にインフルエンザの治療に利用されている、有効な抗ウイルス薬が実用化されているウイルスには、この他にヘルペスウイルスヒト免疫不全ウイルスB型肝炎ウイルスなどが挙げられるが、その数はまだ少なく、インフルエンザは化学療法が成功している数少ない感染症の一つであると言える。一方で、薬剤耐性インフルエンザウイルスの出現もすでに報告されており、医学上の問題になっている。

2006年現在、実用化されている抗インフルエンザ薬はアマンタジンザナミビルオセルタミビルの3種類である。このうち、アマンタジンはA型インフルエンザウイルスのM2タンパク質を阻害することで、ザナミビルとオセルタミビルはA型またはB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを阻害することで、それぞれウイルスの増殖を阻害する。詳細については、それぞれの薬剤の項目を参照のこと。

一方、これらの薬剤に対する耐性を獲得した、アマンタジン耐性インフルエンザウイルスや、ザナミビル(オセルタミビル)耐性インフルエンザウイルスの出現も既に報告されている。特にアマンタジンでは耐性ウイルスが出現しやすく、このことはB型に対して無効であること、中枢神経系への副作用が出ることとともに、本剤を使用する上での重要な注意点である。アマンタジン耐性は、主に連続変異によってM2タンパク質の構造が変化することによるとされる。またザナミビルとオセルタミビルの両薬剤に耐性を持つウイルスの出現もすでに報告されている。こちらの耐性機構については、まだよくわかってはいないが、ヘマグルチニンが変異して細胞との結合力が低下して、ノイラミニダーゼの働きが弱くても細胞からの放出が行われることによって耐性を獲得する場合があることが報告されている。このような薬剤耐性ウイルスの出現に対抗するため、新薬開発の取り組みも継続されている。


培養と実験技術

インフルエンザウイルスを患者から分離培養するには、ふ化鶏卵を用いた培養法が繁用される。インフルエンザ患者の咽頭拭い液などを細菌ろ過用のメンブレンフィルターを通した後にふ化鶏卵の漿尿液に接種して増殖させ、これを繰り返すことで分離培養する。ただし高病原性ウイルスではニワトリ胎児がすぐに死んでしまい、この方法を用いることができないため大量培養は困難である。

インフルエンザウイルスは、さまざまな動物の赤血球と試験管内で混合すると凝集する性質がある。これは(赤)血球凝集反応(HA反応, hemagglutination)と呼ばれ、ウイルス表面のヘマグルチニンが赤血球表面の糖鎖と結合し、複数の赤血球同士を架橋させて大きな凝集体を作ることによる。この性質を利用して、ウイルスを段階稀釈したときにどこまで凝集するかを調べることで、原液に含まれていたウイルス濃度を算出できるため、インフルエンザウイルスの定量に用いられている。またHA反応はヘマグルチニンに対する中和抗体によって抑制されるため、一定量のウイルスを患者血清と反応させた後でHA反応の有無を検査すれば、その患者血清中に抗体が存在するかどうかを検査することが可能である。これを(赤)血球凝集阻止反応(HI反応, hemagglutination-inhibition)と呼ぶ。血清中の抗ウイルス抗体の濃度上昇は、そのウイルスによる感染が起きたことの証拠であるため、感染の有無を診断するための診断技術として用いられる。


インフルエンザウイルスの技術的応用


インフルエンザワクチン

インフルエンザウイルスを人工的に培養して、インフルエンザに対するワクチン(インフルエンザワクチン)を作成することが可能であり、世界中でインフルエンザによる感染や重症化を予防するために利用されている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Mamenoki