ウイルスの分類上のインフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科に分類されるウイルスのうち、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルスの3属を指す。 オルトミクソウイルス科の特徴は以下の通り。
エンベロープを持つ。
マイナス鎖の一本鎖RNAをゲノムとして持つ。ゲノムは分節性である。
RNA依存RNAポリメラーゼをウイルス粒子内部に含む。
RNAの複製が宿主細胞の核内で行われる。
以前はオルトミクソウイルス科には、このA、B、C型インフルエンザの3属だけが分類されており、オルトミクソウイルス=インフルエンザウイルスとして扱われていたが、2005年現在、トゴトウイルス属と感染性サケ貧血ウイルス(イサウイルス)属という、ヒトに対する病原性が見つかっていない2属が新たにオルトミクソウイルス科に追加されているため、インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルスのうちの一部という位置づけに当たる。
A型、B型、C型の違いは、ウイルス粒子を構成するタンパク質のうち、M1蛋白とNP蛋白の抗原性の違いに基づく。また、これ以外にも病態的、形態的、遺伝子的にも違いがあり、特にC型とA、B型とでは違いが大きい。型ごとの違いを以下に示す。
抗原性の違い
A型、B型、C型では、M1蛋白とNP蛋白の抗原性がそれぞれ異なり交差反応しない(例えばA型のM1やNPに対する抗体はB型、C型のものとは反応しない)
病態的な違い
A型、B型は毎年冬期(まれに春期)に流行を繰り返し、ヒトのインフルエンザの原因になる。
A型は特に内部での変異型が多く世界的な大流行を起こしやすい。ウイルスに対する免疫の持続も短いと言われる。ただしA型インフルエンザウイルスに分類されるもののうち、ヒトに感染するものは少なく、残りは水鳥などの野生生物を宿主とする。
B型はA型に比べると流行の規模は小さいが、世界的・地域的な流行を毎年繰り返す。ウイルスに対する免疫はA型よりは長く持続すると言われる。ヒトだけを宿主とする。
C型は季節によらず4歳以下の小児に感染する。ほとんどのヒトが乳幼児期に感染するが症状が現れないことも多く、病態的にA、Bとの違いが大きいため、C型インフルエンザという別の疾患として区別して扱われることが多い。免疫は長期間に亘って持続し、一度かかると一生持続する場合も多い。ヒトだけを宿主とする。
形態的な違い
C型のウイルス粒子では、電子顕微鏡下でエンベロープ上の分子であるHEが6角形に配列するのが観察される。A型、B型ではこれが認められず、A型とB型は形態上では見分けがつかない。
C型ではウイルス粒子の繊維状形態が特に顕著に観察される。
遺伝子上の違い
A型、B型のゲノムは8分節(HA, NA, PA, PB1, PB2, M, NP, NS)、C型のゲノムは7分節(HE, PA, PB1, PB2, M, NP, NS)
A型のNA分節にはNA一遺伝子のみがコードされているが、B型ではNAとNBの2つの遺伝子がコードされている。
A型のM分節からはスプライシングによってM1とM2の2つのタンパクを生じるが、B型ではM1とBM2というそれぞれORFを持った2つの遺伝子がコードされており、スプライシングを起こさない
また、同じA、B、C型のウイルス同士であっても、エンベロープ表面上の分子であるヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の(C型ではヘマグルチニン−エステラーゼ, HE)抗原性の違いから、それぞれ複数の亜型と株に分類されている。
A型インフルエンザウイルスは特に型の内部でのHAとNAの違いが大きい。抗原性の大きな違いからこれまで16種類のHAと9種類のNAが報告されており (1999年にスウェーデンで捕獲されたユリカモメからそれまで知られていた15種類とは異なるHAが見出され、2005年に16番目のHAとして報告された)、その組み合わせによってH1N1〜H16N9までに分類される。この分類を亜型と呼ぶ。A型インフルエンザウイルスでは亜型が異なると、宿主となる生物種が異なる場合がある。B型のHAとNAおよびC型のHEは、A型に比べると多様性が低く、亜型による分類は行われない。
同じ型、同じ亜型の内部であってもHAとNAには小さな変異がある。流行を起こすウイルスには地域や年度によって違いがあり、株として分離された場所と年度によって命名・分類される。この分類によってインフルエンザウイルスのウイルス株は「A/ニワトリ/香港/258/97(H5N1)」「A/ワシントン/1/33(H1N1)」「B/上海/361/2002」のように、「A、B、Cいずれの属か」「分離された生物種(ヒトの場合は省略)」「分離された場所」「分離された順番」「分離された年度(1999年までの場合は西暦の下2桁、2000年以降は西暦の4桁)」の順に表記し、A型の場合は、最後に括弧内にHAとNAの抗原型を書くかたちで表わされる。
A型インフルエンザウイルスは、毎年流行する亜型や株が異なるが、一シーズンについて見ると流行しているウイルス(流行株)は、世界各地でほぼ同一であり、同時に流行しているのは数種類にとどまる。この特徴は、ワクチンによる予防を行う上でも重要であり、発生が早かった地域でのウイルス検出情報から、その年に流行する株に有効なワクチンが予測され接種されている。一方、B型インフルエンザウイルスにはこのような特徴はあまり見られず、変異の幅が少ないながら多種類の株が同時に流行する傾向がある。