高温超伝導(こうおんちょうでんどう、High-temperature superconductivity)とは、高い転移温度 (Tc)でおこる超伝導。”高温”の意味は、時代、状況によって異なるが、一般に高温超伝導と言えば、ベドノルツとミューラー(ミュラー)がLa-Ba-Cu-O系において1986年に発見したことから始まり、その後続々と発見された転移温度が液体窒素温度を越える一連の銅酸化物高温超伝導物質とその超伝導現象のことを指す場合が多い。高温超伝導を示す物質のことを高温超伝導体という。銅酸化物であるものは銅酸化物高温超伝導体という。
高温という語は、ふつうは人間が「熱い」と感じるほど温度が高いことをあらわすが、高温超伝導における高温とは-200℃〜-100℃くらいをいう。従来の超伝導体と比較するとこれでも高温なのである。
目次
1 歴史
1.1 定義
2 結晶構造
3 超伝導体の名前
4 性質
5 機構
6 応用
7 脚注
8 関連項目
9 外部リンク
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1985年、誘電体研究で著名なIBMチューリッヒ研究所のフェローとなっていたアレックス・ミューラーのもとで、ジョージ・ベドノルツはチタン酸ストロンチウムの研究を行っていた。この物質は強誘電体として良く知られている絶縁体であるが、電子ドープにより半導体から金属的となり、低い転移温度ながら超伝導を示す。ミューラーはヤーン・テラー型格子変形と超伝導との関係に興味をもっていた。ベドノルツはある日、図書室でLa-Ba-Cu-Oペロブスカイト系で液体窒素温度まで金属になるという論文を知り、早速作ってみると、試料は30K付近から抵抗が減少し、10K以下でゼロ抵抗になるように見えた。
彼らはドイツの会議でこの結果を発表したが、誰にも評価されることはなかった。そこでIBM T.J. Watson研究所に試料を送って真偽を鑑定してもらったが、比熱測定に超伝導転移による跳びが見られなかったことから超伝導ではないという結果が返ってきた。超伝導を認められなかったものの、1986年4月、ベドノルツとミューラーはとりあえずZeitschrift fur Physikというドイツの雑誌に論文を投稿した。
この論文が公表された1986年、少なくとも世界の数カ所で結果の追試が行われた。このうち東京大学の田中グループはこの物質の結晶構造の同定とマイスナー効果を確認し、誰もが間違いないと確信できるレベルでLa-Ba-Cu-O系で超伝導が起こっていることを証明した。田中研で超伝導の存在が判明したのが1986年11月13日であり、12月5日にボストンの材料研究学会においてこの結果が発表された。これ以後、数年間にわたり高温超伝導探索のフィーバーが続いた。1987年2月には、90K級で転移するY-Ba-Cu-O(Y系超伝導体)が発見された。短期間のうちにTcが60Kも高められたことになる。
超伝導転移温度は次々と塗り替えられ、2004年現在、水銀系銅酸化物において高圧下での160ケルビンの転移温度が最高記録である。
ただし、1987年前後をピークとして、研究論文の発表数は減少傾向を示している。学術データベースの統計から判断すると、高温超伝導に関する研究は、2010年から2015年までの間に行き詰まりを迎えるとする見方もある[1]。
また、2000年前後には、フラーレンなどでも高温超伝導が生じるとする論文が数編提出されたが、後にすべて研究者による捏造と判明して撤回された[2] 。
高温超伝導体は国際電気標準会議(IEC)の国際規定 IEC60050-815(2000)と日本工業規格 JISh7005(1999)により定義されており、「一般的に約25K以上の臨界温度(Tc)を持つ超伝導体」とある。しかし、転移温度が90Kを超えるものが一般的になった今では液体窒素温度(-195.8℃、77K)以上で転移するものを高温超伝導体と呼ぶことが多い。
YBa2Cu3O7-δ (Tc〜93K)やBi2Sr2Ca2Cu3O10 (Tc〜109K)といった銅酸化物高温超伝導体は全て、ペロブスカイト構造を基礎とした結晶構造をしている。
これら銅酸化物高温超伝導体の構造には以下のような特徴がある。
2次元正方格子CuO2面がシート状に広がっている。
多くの物質では、このシートの上下にはランタノイド等による電気伝導をブロックする層があり、CuO2面とブロック層が交互に積層する構造をとっている。ブロック層が存在しない無限層と呼ばれるものもある。
これらの超伝導体は、構成する元素の頭文字をとって呼ばれることが多い。たとえばYBa2Cu3O7-δはYBCOと呼ばれ、Bi2Sr2Ca2Cu3O10はBSCCO(ビスコ)と呼ばれる。 一方、構成元素の物質量比(モル比)で呼ぶこともある。たとえばYBa2Cu3O7-δはY123、Bi2Sr2Ca2Cu3O10はBi2223などである。
高温超伝導体にはキャリアがホールであるものと、電子のものの2種類がある。前者をホールドープ型、またはp型と呼ばれ、後者は電子ドープ型、またはn型と呼ばれる。
ホールドープ型の高温超伝導体はホール濃度と温度により、右図のような状態をとる。ホール濃度がゼロのとき、反強磁性となり、ドープをすると反強磁性が消え、擬ギャップと呼ばれる状態になる。さらにドープすると超伝導になる。 ドープを増やすと超伝導転移温度は上昇する。この領域をアンダードープ領域と呼ぶ。 さらにドープすると転移温度はさがる。この領域をオーバードープ領域と呼ぶ。 これ以上ドープすると超伝導は消え金属的になる。
高温超伝導においても従来型の超伝導と同様にクーパー対が形成されていることがわかっている。従来型超伝導では、BCS理論により、フォノンを媒介とするクーパー対の形成機構が解明されているのに対し、高温超伝導におけるクーパー対の形成機構に関しては、完全なコンセンサスは得られていない。 高温超伝導体の発見後すぐに行われた同位体効果実験から、高温超伝導機構はフォノン機構では説明できないとされている。