雨氷(うひょう、あめごおり, 英語:Freezing rain)は、空から過冷却の水滴が落下する天候のこと。過冷却の水滴は、樹木、岩、地面などの物体に付着するとその衝撃で瞬時に凍結して氷の結晶となる。従って雨氷は、付着前は液体であり、付着後は固体に変化する。このとき付着する氷の結晶のことも「雨氷」と呼ぶ。降水現象、着氷現象の一種。
目次
1 概要
2 発生から付着までの過程
2.1 発生
2.2 逆転層の形成
2.2.1 低気圧と前線の影響
2.2.2 地形の影響
2.3 付着形態
3 雨氷の予測
4 雨氷による災害
4.1 山地での被害
4.2 居住地での被害
4.3 航空機への被害
5 雨氷と景観
6 過去に起こった雨氷の例
7 天気記号
8 脚注
9 関連項目
10 参考文献
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着氷現象の一つであるため、気象学の分野では着氷性の雨、着氷性降水とも呼ぶ。雨と霧雨が雨粒の大きさで区別されているのと同様に、雨氷も雨粒の大きさが0.5mm以上のものを「着氷性の雨」(雨氷)、0.5mm未満のものを「着氷性の霧雨」(着氷性霧雨)と区分することがある[1]。
付着前(落下時)は液体、付着後は固体であり、付着前(落下時)は雨との区別ができないが、付着後は硬く透明な氷の層を形成し、ここで初めて雨氷であることが分かって雨と区別される。この氷を他の雪氷現象(着氷現象は雪氷現象の1種である)と比較すると、雪・霧氷・樹霜(霜を含む)・雪あられは不透明・半透明の結晶である点、細氷(ダイヤモンドダスト)・凍雨・氷あられ・雹は落下時も固体である点、氷霧は落下しない点、粗氷は過冷却の水滴からなる霧によって発生する点、氷柱は付着後しばらくしてから凍結する点が、それぞれ異なる。霙は雨と雪(霰・雹・凍雨・細氷を含む)が同時に降る状態であり、これも雨氷とは異なる。
硬く透明な氷の層を形成する雨氷は、非常に密度が高く頑丈である。大量に付着すると非常に重くなり、樹木を折り曲げ倒したりするなど、被害を発生させることがある。一方、樹木などに付着した雨氷が美しい景観を作り出すという側面もある。
日本では、"glazed frost"の訳に当たる「凝霜」が、近代ごろより雨氷を表す言葉として用いられていた。しかし、霜ではないため誤解を生みやすいとされていたため、中国語の「雨淞」をより平易にした「雨氷」が1915年(大正4年)から使用されるようになった[2]。日本語では、降っているものも、物に付着して凍ったものも、雨氷だと分かっていればすべて「雨氷」と呼ぶことが多い。しかし英語では、雨氷により付着した氷にもいくつかの名前がつけられており、上薬のように物の表面を覆ったものをGlazeまたは ⇒Glaze ice、透明・半透明の氷や光沢のある氷を ⇒Clear iceと呼ぶ[3][4]。
上空の大気の気温の分布がある特殊な条件のときにのみ発生する(次節で詳しく解説)。高山では比較的多く見られるが、平野部ではあまり見られない。ごくありふれた現象である雨や雪と比べて、目にする機会が少なく、発生頻度も低いため、珍しい気象現象とされている。日本国内では、被害をもたらすような雨氷は10年に1回程度の頻度で発生し、それも中部地方以東に多く見られる[2]。一方、世界的に見て雨氷が多いセントローレンス川沿岸に位置するカナダのモントリオールでは、年間約12〜17回、時間にして年間計約45〜65時間という頻度で雨氷が降る[5]。
雨氷の発生時期には多少の地域差はあるものの、北半球では1月を中心として冬に多く発生する[2]。ちなみに、雨氷は冬の季語となっている[6] [7]。
通常、上空の大気(空気)は上に行くほど気温が下がるが、大気が風によってかき混ぜられると、気温が0℃以下の冷たい空気の層(冷気層)の上に気温が0℃以上ある暖かい空気の層(暖気層)がかぶさる状態になることがあり、これを逆転層が発生した状態という。
この状態で、地上付近の冷気層の厚さが薄いときに、暖気層より上の層にある雲から雨や雪が落下すると、次に挙げるようなプロセスを経て雨氷として落下する。この冷気層が厚い場合には、雨粒が落下途中に過冷却を経て凍結してしまい、凍雨となって落下する。雨氷よりも凍雨のほうが発生頻度が高い。
雲から落下した雨や雪は暖気層を通過する際に溶けて雨となる。
その雨が下の冷気層を通過する際に過冷却の状態となる。
過冷却の雨が地上に落下する。落下した衝撃で雨滴は凍結し氷晶となる。