位相空間(いそうくうかん、topological space)とは、数学において、集合に要素どうしの近さや繋がり方に関する情報(位相、topology)を付け加えたものである。この情報は関数の連続性や点列の収束といった概念の源といえる。ある集合に位相を与えて位相空間とみなすことを、しばしば「位相を入れる」という。位相空間論は位相空間の諸性質を研究する数学の分野である。
目次
1 位相空間を導入する意義
2 定義
2.1 閉集合・近傍
3 簡単な例
4 連続写像
5 同相写像
6 収束
7 位相空間の構成
8 閉包・内部
9 基本近傍系
10 閉包、基本近傍系と位相
10.1 閉包の操作の満たすべき条件
10.2 基本近傍系の満たすべき条件
10.3 閉集合の満たすべき条件
11 開基と準開基
11.1 開基の満たすべき条件
11.2 準開基の満たすべき条件
12 コンパクト性、連結性
13 分離公理
14 この他の諸性質
15 歴史
16 関連項目
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ユークリッド空間やその部分集合においては、点の間の距離をもちいて異なる点の間の近さを測ることができ、それに基づいた位相空間の構造が得られる。一般に、距離空間は最も想像しやすい種類の位相空間の例を与えているが、一方で距離空間の枠組みは柔軟性に欠ける面もある。幾何学においてはユークリッド空間(の開集合)と同相ないくつかの空間を基本的な部品とし、それらを張り合わせて得られるような空間が主な考察の対象となるが、この張り合わせはそれぞれの部品上に定まっている距離を保つとは限らない。例えば、二次元の球面は二つの平面(二次元ユークリッド空間に同相な空間)を、それぞれから一点を取り除いて得られる領域を張り合わせることによって得られる。この張り合わせはそれぞれの平面を「ゆがめて」しまい、下の平面で考えていた距離は通常のやり方による球面の部品としての距離とは異なったものになる。
このような場合にも位相空間の商空間を考えることで、部品を張り合わせて作った空間上の位相を自然に定式化することが可能になる。
この他にも、積極的に位相空間を考える理由は存在する。 無限次元ベクトル空間を扱う関数解析学の理論を見通しよく展開するにはベクトル空間に位相を入れて位相空間の一般論を用いることが必須であるし(位相ベクトル空間)、 代数幾何学で用いられるザリスキ位相は、通常、距離から定めることのできないような位相である。現在では数学の各分野において位相空間が独特の方法で応用されているが、本項目では最も一般的な部分について述べる。
集合 X 上の位相(いそう、topology)とは、X の部分集合からなる族 であって、以下を満たすもののことである。
ここで 3. の条件は、 の要素の任意個の和集合が再び に属するということを意味する(この記号法については和集合を参照されたい)。
位相空間とは、集合 X とその上の位相 との組 のことをいう。 ここでの の要素のことを位相空間 の開集合(かいしゅうごう、open set)といい、族 をこの位相空間の開集合系という。以下、位相空間 のことを単に位相空間 X と呼ぶ。なお、X の要素のことをしばしば位相空間 X の点と呼ぶ。
開集合をもとにして、位相空間の「閉集合」、および位相空間の点の「近傍」という概念が定義される。
A を位相空間 X の部分集合とする。A が閉集合(へいしゅうごう、closed set)とは、補集合 が開集合となることである。x を X の点とするとき、A が x の近傍(きんぼう、neighborhood)とは、開集合 U であって x∈U かつ U⊂A なるものが存在することである。近傍であって開集合であるものを開近傍、近傍であって閉集合であるものを閉近傍という。以下が成立する。
閉集合の補集合は開集合である。
開集合はその任意の点の近傍である。逆に、この性質をみたす集合は開集合である。
とくに、X 自身は X の任意の点の近傍である(近傍は必ずしも「小さくはない」)。
先の 1.-3. は、ユークリッド空間の開集合という(位相空間よりも先に考えられていた)概念のみたす性質を抽象化したものである。 ユークリッド空間 Rn において、その部分集合 U が開集合というのは、U に属する任意の点 x に対して、十分小さい正の数 ε をとると x の周りの半径 ε の開球体が U に含まれることであった。いま、このようにして定義されたユークリッド空間の開集合の全体を とすると、 は上の条件 1.-3. を満たす。よって、
ユークリッド空間 Rn は位相空間である。
もちろん、ユークリッド空間に上に述べたものとは違う方法で「開集合」の概念を定義しても、それが上の 1.-3. を満たしさえすれば、それは位相空間を定める。しかし通常の文脈でユークリッド空間と言った場合、上のように開集合を定義して位相空間と見なす