吊り掛け駆動方式(つりかけくどうほうしき)は、電車・電気機関車等の電気車において、モーターから車輪に動力を伝達する(モーターを台車に装架する)方式の一種。手法としては単純で、すでに古典的な方式である。
釣り掛け、吊掛、釣掛とも表記するが、絶対的な統一表記はない。英語では nose-suspension drive 。
日本では、電車の駆動方式としてはカルダン駆動方式に取って代わられ、現存例は多くないが、電気機関車の駆動方式としては21世紀初頭現在でも広く使われている。
目次
1 基本構成
2 長所・欠点
2.1 長所
2.2 欠点
3 歴史
3.1 日本での歴史
3.1.1 電車分野での衰退
3.1.2 車体更新車
3.1.3 路面電車
3.1.4 電気機関車
4 脚注
5 関連項目
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基本構成ノーズサスペンション方式の吊り掛けモーターの例(営団1800形電車(地下鉄博物館展示物))路面電車用バーサスペンション方式の吊り掛けモーターの例(筑豊電気鉄道2000形電車)。手前に軸受が見える。回転軸の右側にある棒状の部分を台車枠に取り付ける点検蓋の数が点検、給脂箇所の多さを物語る(名鉄6750系電車)吊り掛け駆動音の一例
ファイル|ヘルプ(三岐鉄道三岐線601系 伊勢治田?東藤原)それぞれの車両の音は台車や製造時期などの条件で多少異なる。
モーターは車軸と平行に配置され、モーター軸から平ギアで車軸を駆動する。モーターの車軸側には軸受が設けられており、この軸受部分を車軸に乗せる。車軸と軸受の間にはアクスルメタルを挟む。
車軸と反対側の部分は台車枠に取り付ける。この取り付け部分の支持方式はノーズ・サスペンション方式とバー・サスペンション方式の2種類がある。
ノーズ・サスペンション方式とは図のようにモーターの片端に設けられたノーズを台車枠に固定する方式である。台車枠とノーズの間にはバネを挟む。大形の鉄道車両に多く用いられている。
バー・サスペンション方式はモーターの片端に棒状の部品(バー)を付け、このバーを台車枠に固定する方式である。台車枠とバーの間にはバネを挟む。軸距の短い台車の場合に有利である。主に路面電車、軽便鉄道で多く用いられたほか、江ノ島電鉄、箱根登山鉄道など比較的小型な車両を使う鉄道で使用されたが、大型電車では少数派である[1]。
どちらの方式でも、モーターは車軸と台車枠の間に橋渡しされた状態、すなわち車軸と台車枠に吊り掛けられた形になる。「吊り掛け」の呼称は、ここから来ている。車軸とモーターの位置関係がアクスルメタルで固定されるので、相対的な偏位は起こらない。
長所
構造が非常に簡単である。
大型モーターにも使用しやすい。
最小限の構成であるため、スペースに制限のある狭軌鉄道でも使用しやすい。
欠点
モーター重量の50%が車軸に直接かかり、バネ下重量が大きい。このため線路・台車・モーター自体への衝撃が極めて激しい。従って高速運転には本質的に不向きである[2]。乗客にとっては乗り心地も悪くなる。発車の際には猛烈な騒音と激しい振動がおこる。
吊り掛け駆動用モーターは、衝撃に耐えるため、頑丈に作らざるを得ない。結果として重量は増え、バネ下重量も増加してますます衝撃が強まる。悪循環である。
高回転化は困難である。このため低回転・大トルク型のモーターを用いることになるが、このようなモーターとの組み合わせでは、山・谷の大きな、歯の粗い頑丈な歯車と組み合わされるため、歯面同士の打音は大きくなりがちで、走行時には吊り掛け式特有の激しい騒音を発する。
アクスルメタルや歯車などが、大トルクによる負荷や、大きな重量による衝撃のために消耗しやすく、又、ギアボックスを密閉できないため、メンテナンス上の配慮を要する。メンテナンスサイクルもカルダン駆動方式に比して短い。ただしトータルランニングコストに関しては、軌間や軌道の状態によっては必ずしもカルダン方式が優位とはいえない場合もある。
これらの問題点は近年改善が進んでいる。車軸架装ベアリングにおいてはプレーンメタルに代わってローラーベアリングが導入されるようになり、アクスルメタルやノーズがゴム緩衝されたり、歯車においても材質、焼入れ、歯の形や角度、バックラッシュの最適化等が為されている。この結果、摩耗・消耗・騒音の抑制が図られるようになっているが、バネ下重量が大きくなる構造という根本的な制約を克服するまでには至っていない。
エジソン研究所出身のアメリカ人発明家フランク・ジュリアン・スプレーグ(Frank Julian Sprague、1857年 - 1934年)が、1887年に架空電車線方式と共に考案、バージニア州リッチモンドに路面電車を運転開始したのが最初。このため「スプレーグ方式」と呼ばれることもある。
簡潔なシステムで当時においては信頼性が高かったことから、世界各国に早期に普及した。