酢酸鉛(II) 酢酸鉛(II) (さくさんなまり に)は鉛化合物の一種で、甘みを持つ無色の結晶である。リサージ(酸化鉛(II) PbOを主成分とする鉱物)を酢酸と反応させることによって得られる。他の鉛化合物と同様、毒性が強い。水やグリセリンに可溶である。水の存在下で3水和物 Pb(OCOCH3)2?3H2O を生じ、これは潮解性を持つ単斜晶系の結晶である。価数を付さず単に酢酸鉛、あるいは鉛糖 (sugar of lead)、土の糖 (salt of Saturn)、グラール粉 (Goulard's powder, トマ・グラール
Pb(OCOCH3)2
IUPAC名酢酸鉛(II)
別名
組成式C4H6O4Pb
式量325.29 g/mol
形状無色結晶または白色粉末
結晶構造
CAS登録番号301-04-2
密度と相3.3 g/cm3, 固体
水への溶解度44 g/100 mL (20 °C)
融点280 °C
沸点°C
出典 ⇒ICSC
目次
1 古代における利用
2 用途
3 危険性
4 関連項目
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甘い味を持つため、歴史的に催淫剤として用いられていた。古代ローマにおいては、蜂蜜以外に手に入る甘味料は少なく、ブドウの果汁(マスト)を鉛の容器で煮ることによって得られるサパ(sapa) と呼ばれるシロップが甘味料として好んで作られていた。このシロップは当時、ワインの甘み付けや果物の保存に一般的に使われていた。しかしながら、これには酢酸鉛などの鉛化合物が含まれるため、それを飲んだ者が鉛中毒となっていた可能性が否定できず、古代ローマの記録に残る有名な人物の発狂や死の原因ともなったと考える研究者がいる。
実際に、例えばかの作曲家ベートーヴェンが、その晩年にはほぼ耳が聴こえなくなってしまった原因として、近年の研究では鉛中毒が有力説とされている。それは、ワインを非常に愛飲していたベートーヴェンの毛髪から、通常の100倍近い大量の鉛が検出されたからであった。当時のヨーロッパにおいて、ワインの醸造過程の中では、やはり甘味料として酢酸鉛を含むサパなどの鉛化合物類が加えられており、鉛中毒は、ひとつに難聴をも引き起こすとされている(詳しくは「ベートーヴェン」の節「病気と耳疾」を参照)。
現代ではその毒性がよく知られているため、用いられることはない。
他の鉛化合物の合成や染料の媒染剤として用いられる。髪染め用の染料の主成分として低濃度で使われる。塗料やワニスの乾燥剤としても用いられる。また、有機化合物中の硫黄検出で金属ナトリウムを使用したときに生成する硫化ナトリウムを検出するのに用いられる。このとき硫化鉛(II) の黒色沈殿ができる。
酢酸鉛(II) などの鉛化合物は胎盤を通過して胚に達し、胎児の死亡をもたらすと報告されている。鉛の塩はある種の動物に対する催奇性も持つ。
関連項目
酢酸鉛(IV)
カテゴリ: 鉛の化合物 | カルボン酸
更新日時:2008年6月21日(土)20:40
取得日時:2008/08/17 18:52