遺伝子(いでんし)は生物の遺伝的な形質を規定する因子であり、遺伝情報の単位とされる。遺伝情報の実体は DNAの塩基配列である。例外としてRNAウイルスではRNAが遺伝情報を担っている。
目次
1 概念
2 機能
3 真正細菌での遺伝子発現
3.1 真正細菌の転写
3.2 真正細菌の翻訳
3.3 真正細菌の遺伝子発現調節
3.4 ラクトースオペロン
3.5 真正細菌遺伝子発現の実際
4 真核生物の遺伝子の一般的な働き方
4.1 真核生物の遺伝子発現
4.2 転写
4.3 mRNAの修飾
4.4 翻訳
4.5 遺伝子発現調節
5 古細菌での遺伝子発現
6 遺伝子研究
6.1 遺伝子操作の概要
6.2 クローニング
6.3 シークエンシング
6.4 過剰発現
6.5 遺伝子研究の応用
7 歴史
7.1 メンデルの法則発見から二重らせん構造発見までの歴史
7.2 二重らせん構造発見以降の歴史
8 参考文献
9 関連項目
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遺伝子は、遺伝情報の最小単位として捉えられ、通常は1つのタンパク質(蛋白質)の情報に対応する。ただし蛋白質をコードしない遺伝子も存在する。また、狭義の遺伝子はタンパク質のアミノ酸配列情報が書き込まれている構造遺伝子のことをさすが、その他に、そのタンパク質の発現時期と生産量を制御する、調節領域を含める場合もある(→オペロン)。
遺伝子という言葉は、「遺伝する因子」としての本来の意味を超えて遺伝子産物の機能までを含んで用いられる場合があり、混乱を誘発している。後者の典型例としては、遺伝しない遺伝子を使った遺伝子治療などがあげられる。
さらに遺伝子やDNAという言葉は、科学的・神秘的といったイメージが先行し、一般社会において生物学的定義から離れた用いられ方がされていることが多い。それらの大半は単に血縁や伝統を言い換えたものに過ぎない。「伝統」の場合、ミームが近い意味合いを持つ。また一般雑誌などでは疑似科学的な用法もしばしば見受けられる。
ある生物種の遺伝子の総和はゲノムと呼ばれる。ゲノムや染色体上の遺伝子の位置を示したものを遺伝子地図や染色体地図と呼ぶ。
遺伝子はDNAが複製されることによって次世代へと受け継がれる。複製はDNAの二重らせんが解かれて、それぞれの分子鎖に相補的な鎖が新生されることで行われる。
本質的には情報でしかない遺伝子が機能するためには発現される必要がある。発現は、一般に転写と翻訳の過程を経て、遺伝情報(= DNAの塩基配列)がタンパク質などに変換される過程である。こうしてできたタンパク質が、ある場合は直接特定の生体内化学反応に寄与して化学平衡などに変化をもたらすようになり、またある場合は他の遺伝子の発現に影響を与え、その結果形質が表現型として現われてくる。転写はDNAからRNA(mRNAやrRNAなど)に情報が写し取られる現象であり、翻訳はmRNAの情報を基にタンパク質が合成される過程である。この過程はセントラルドグマとも呼ばれる。
遺伝子の発現に関する多くの知見は真核生物ではなく真正細菌である大腸菌をモデル生物とした実験から得られてきた。大腸菌の遺伝子発現は基本的に以下のステップに分けられる。
転写
翻訳
遺伝子制御(発現の調節)
調節段階は再び別の遺伝子発現に影響を及ぼしたり、あるいは周囲の栄養条件などによっても調節を受ける。真正細菌の遺伝子発現様式は真核生物とは異なるところが多いものの、一般的な遺伝子発現として理解できる。