過払金(かばらいきん)とは、文字通り払いすぎた金銭をいうが、特に、利息制限法の定める利率を超える高利の借入れをした借主が、本来、借入金の返済は終わったのに返済を続けたため、払いすぎた金銭をいう。
本稿で、最高裁判所の判決を「最判」と略す。
目次
1 過払金が発生する理由
2 過払金返還請求訴訟の現状
3 過払金返還請求訴訟における問題点
3.1 みなし弁済
3.2 過払金の利息
3.3 取引履歴の不開示
3.4 過払金の充当
3.4.1 基本契約がある場合
3.4.2 基本契約がない場合
3.5 過払金と税
4 関連項目
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金銭消費貸借の利息は、利息制限法によって次のとおり制限されており、これを超える部分は無効となる(同法1条1項)。
元本が10万円未満の場合 年20%
元本が10万円以上100万円未満の場合 年18%
元本が100万円以上の場合 年15%
しかし、現実には、消費者金融業者による貸付けは、制限利率を超える利息が付されていることが多い。これは、出資法5条2項所定の年29.2%を超えない限り、刑事罰には問われないからである。このように利息制限法を超えるが出資法には違反しない範囲の利息をグレーゾーン金利という。
それでも、前記の利息制限法1条1項がある以上、制限利息を超える利息(制限超過利息)を支払ったときは、当然その返還を求めることができそうだが、同条2項で、制限利息を超える利息を任意に支払ったときは、その返還を求めることができないとされているため、問題は簡単ではない。
この問題を解決したのが、最高裁判所の2つの判例である。
最高裁昭和39年判決
最高裁は、制限超過利息を任意に支払ったときは、利息制限法1条2項により返還請求をすることはできないが、その利息は残存している元本に充当されるとした(最判昭和39年11月18日・民集18巻9号1868頁)。このように解釈した結果、金融業者側の計算では元本が減っていなくても、実際の元本は減少していくということが起こる。
最高裁昭和43年判決
最高裁昭和39年判決に従うと、返済を続けるうちに元本が減少していき、いずれ元本は完済されてしまう。しかし、金融業者側の計算では元本は残っているので、借主は返済を続ける。最高裁は昭和43年、このように元本完済後に超過利息の支払が続けられた場合、過払いになった金銭(過払金)を不当利得( ⇒民法703条)として返還請求できるとの判断を示した(最判昭和43年11月13日・民集22巻12号2526頁)。その理由は、利息制限法1条2項は元本が存在することを前提とした規定であって、元本が完済された後には適用されないというものだが、結局、実質的に、利息制限法1条2項を空文化するものといえる。
このように、最高裁昭和43年判決によって、過払金の返還請求が可能になったといえる。
消費者金融業者との間で、長期間にわたってグレーゾーン金利での借入れと返済を続けている場合、過払いになっていることが多い。
しかし、消費者金融業者は、訴訟外での過払金の返還には消極的なようである。
そこで、債務整理のため依頼した弁護士や司法書士を通して、過払金返還請求訴訟を提起することになる。もっとも、最近は弁護士や司法書士に依頼せずに本人訴訟により消費者金融から過払金を取り戻しているケースもかなり増えているようである。
最近、後述のみなし弁済について借主側に有利な判例が出ていることもあって、近年、過払金返還請求訴訟が全国で相次いで提起されている。消費者金融業者も、これを受けて業績の見直しを迫られている状況である。
昭和58年、貸金業の規制等に関する法律(現在の貸金業法)が制定された。同法は、貸金業者に対する登録、規制を強化するのと引換えに、貸金業者に対してみなし弁済(みなしべんさい)という恩典を与えるものであった。すなわち、同法43条は、次の要件を満たす場合には、制限超過利息の支払を有効な利息債務の弁済とみなすと規定している。
登録を受けた貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約であること
借主が利息として任意に支払ったこと
貸金業者が、借主に対し、消費貸借契約締結の際、遅滞なく、貸金業法17条所定の、契約の内容を明らかにする書面(17条書面)を交付したこと
貸金業者が、借主に対し、借主から返済を受けた都度、直ちに、貸金業法18条所定の受取証書(18条書面)を交付したこと
みなし弁済が認められると、前記の最高裁昭和39年による元本に対する充当が認められないので、貸金業者は自己の計算どおりの貸金を請求することができ、過払金も発生しないことになる。
判例は、この貸金業法が成立して以来、17条書面・18条書面に当たるかを厳しく解釈したり、「遅滞なく」、「直ちに」という要件を厳しく解釈したりすることにより、借主を保護しようとしてきたが、支払の任意性については緩やかに認める傾向にあった。
しかし、最高裁は、平成18年になって、期限の利益喪失特約(借主が約定利息の支払を怠った場合には期限の利益を喪失し、残元本を一括返済しなければならないとの特約)がある場合には、借主は期限の利益を喪失しないよう支払をせざるを得ないので、原則として支払の任意性がないとの判断を示した(最判平成18年1月13日・民集60巻1号1頁・ ⇒判例情報)。消費者金融業者の貸付けには通常期限の利益喪失特約が付されているので、この判決の影響は大きく、今後、みなし弁済の適用を主張することはほぼ不可能になったといえる。
この判決が一つのきっかけとなって、グレーゾーン金利見直しの論議が高まることになった。
過払金は民法上の不当利得の規定( ⇒民法703条)に基づくものであるから、貸金業者が悪意の受益者であれば、利息を付して返還しなければならない( ⇒民法704条前段)。