アメリカ合衆国の軍服(アメリカがっしゅうこくのぐんぷく)は、アメリカ合衆国の軍人により着用される衣類であり、主に陸、海、空軍及び海兵隊の制服を指す。この項では建国から現在までのアメリカ合衆国における軍服の特徴と変遷について述べる。 18世紀後半にイギリスから独立したアメリカ合衆国の軍服は、旧宗主国のイギリスと独立以来民主主義の手本としていたフランスのデザインに影響が見られるが、早い時期から独自の進歩が見られた。アメリカにはヨーロッパ諸国のような王侯貴族が存在しないため士官の制服にも貴族的な装飾が必要とされず、全体に実用性が重視された。この事は20世紀の軍服に求められるコンセプトに通ずるものであった。また、19世紀初頭には世界に先駆けて既製服産業がアメリカで興り、1850年代にはミシンによる大量生産が行なわれた。このようにして、19世紀中にはアメリカが軍服に関して世界を主導する下地が出来上がっていたのである。そして、第一次世界大戦が国家の総力を挙げた近代戦となり、終戦によりヨーロッパの君主制が衰退したため、軍服に関してもアメリカの地位は確固たるものになった。 第二次世界大戦後はアメリカ合衆国が東西冷戦における西側陣営の盟主となり、東側陣営の盟主たるソ連軍とならんで、世界各国の軍服に最も大きな影響を与える存在となった。東側陣営が解体した1990年代以降は、この傾向がさらに強まって現在に至っている。 軍服以外の衣服やファッションに取り入れられた要素・与えた影響も大きなものがある。同様に日常の衣服に取り入れられたイギリス軍のトレンチコートなどと比べるとよりカジュアルな形で若年層に受け入れられている。 独立戦争は正規軍のイギリス軍に対して農民ら民兵ゲリラが戦った戦争であるため、アメリカ側の軍服はまちまちである。ただジョージ・ワシントンの親衛隊はワシントン自身になぞらえてブルーの服を着ていた[1]。 南北戦争は本格的な作戦に基づく戦闘からゲリラ戦まで様々な様相を呈したので両陣営とも軍服は様々であり、規定に基づいた軍服もあれば、平服とほぼ変わらない軍服もあった[2]。特に南軍は制服支給が困難だったため軍服の不統一が目立ち、戦場に混乱をもたらすことが多かった[3]。工業地帯が多い北軍は比較的優れた装備が行き渡っていたものの、それでも軍服はおろか装備品も各部隊でまちまちだった[3]。 ただ一般的なスタイルとして南軍はグレーのチュニックにブルーのズボン[4]、北軍はダークブルーの短い上衣とペールブルーのズボンだった[4]。
概観
陸軍の軍服陸軍軍服の変遷
独立戦争
独立戦争の大陸軍のヴァージニア連隊の軍服。歴史再現イベント
ニューヨーク砲兵の軍服を着たアレクサンダー・ハミルトン
左から第1ロードアイランド連隊
独立戦争で指揮を執るジョージ・ワシントンを描いた絵画
大陸軍を指揮するジョージ・ワシントン
バレーフォージの兵士とジョージ・ワシントンとラファイエット侯爵
ウィリアム・クロウフォード
米英戦争
参謀将校と佐官
将軍、参謀将校、歩兵
黒人兵
米英戦争中のアメリカ陸軍の歴史再現イベント(2016年)
セミノール戦争
1839年第2次セミノール戦争中の米陸軍。インディアン斥候の報告を受けている人物は腰に赤い帯を付けており、将校であることを示す。
セミノール戦争の歴史再現イベント
米墨戦争
チュルブスコの戦いを描いた絵画。左がアメリカ陸軍、右がメキシコ軍
ブエナ・ビスタの戦いの指揮を執るザカリー・テイラー将軍
第1竜騎兵連隊(英語版)を描いた絵画
ブエナ・ビスタの戦いのケンタッキアンズの突撃
メキシコ軍騎兵隊と戦う第155歩兵連隊(英語版)を描いた絵画
南北戦争
ビックスバーグの包囲戦を描いた絵画
北軍の黒人兵士(1864年か1865年)
北軍兵士のフィギュア
北軍の軍服(2019年の歴史再現イベント)
南軍の軍服(2001年の歴史再現イベント)
南北戦争中の軍服
19世紀後半の米陸軍将軍(シャーマン将軍)
19世紀後半の米陸軍将軍(南軍のリー将軍)
米西戦争
米西戦争時の軍服
米西戦争時の軍服
米西戦争で使われた帽子
米西戦争の米兵(1898年)
米西戦争の将校(1898年)