警察学校(けいさつがっこう)とは、警察官を教育・訓練する機関。警察官の訓練機関は様々な国に設置されているが、本稿では特にことわりが無い限り日本の警察における警察学校について述べる。
警察学校には大きく分けて、都道府県警察本部直轄の警視庁警察学校および道府県警察学校と、管区警察局に属する管区警察学校の2種類がある。都道府県の警察学校は警察法(昭和29年6月8日法律第162号)第54条を、管区警察学校は同法第32条を設置根拠規定とする。この他、警察庁には警察大学校が(同法第27条)、皇宮警察本部には皇宮警察学校(同法第29条第4項)がそれぞれ設置されている。
「学校」と名が付いているが、学校教育法(昭和22年3月31日法律第26号)などに定める学校ではなく、あくまで警察組織内の教養施設であり、警察官・警察職員に対する研修事務が主内容である。入校中の初任学生も所属員であることから、地方公務員法に基づき給与が支給される。警察学校での初任教養・初任総合教養を修了し現場での職務に就いた後も、本人の希望や担当する職務により研修を受けることを命じられる場合がある(現任教養・専科教養などといわれる)。単に「警察学校」といった場合は、都道府県の警察学校を指す場合が多い。警察内部では「警校」、「警学」、「学校」などと略称される。
目次
1 都道府県警察学校
1.1 施設
1.2 都道府県警察学校の所在地一覧
1.3 初任科
1.3.1 初任科生の身分
1.3.2 初任科教養
1.3.3 警察学校での生活
1.3.4 卒業
1.4 初任補修(補習)科
1.5 一般職員初任科
2 皇宮警察学校
3 管区警察学校
3.1 管区警察学校での生活
3.2 管区警察学校一覧
4 海外の警察学校
4.1 アメリカ合衆国
5 参考
6 関連項目
7 外部リンク
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都道府県警察学校
都道府県警察学校は前述のとおり都道府県警察内の組織であるため、実際の組織形態や運用については各都道府県間で大きな差があります。従って、本項の内容は必ずしも全国全ての警察学校で共通した内容であるとは限らないことに留意してください。
都道府県警察の警察学校では、新任の警察官や職員(事務吏員・技術吏員)に対し警察業務上必要な知識、技能などを修得させるための教育訓練を行うほか、現任の警察官や職員に対して職務に必要な専門的知識や技能、指導能力、管理能力の教養、警察業務に関する研究を行う機関であり、各都道府県に1校置かれている。また、必要に応じて分校がおかれる場合もある。このうち、北海道警察学校だけは、北海道に管区警察学校が存在しないため、新任・現任の警察官や職員に対する訓練のほか、他の都府県では管区警察学校が行うべき幹部として必要な教育訓練も行うものとされている(警察法第54条第3項)。
都道府県警察により組織形態は若干異なるが、典型的には学校長(警視長、警視正または警視)が校務を掌理し、副校長・校長補佐・教頭(警視または警部もしくはこれらと同等の職にある吏員)が学校長の補佐を行う他、教官(主に警部補またはこれと同等の職にある吏員)、助教(主に巡査部長またはこれと同等の職にある吏員)など(都道府県により教授、教師、助教授などの職名の場合もある)が置かれている。また、部・課・係等の部署が置かれ、校務を分掌する。学校の組織については、都道府県の条例や規則で定められている。
専門的な科目の講義や講演などの場合にはしばしば講師が外部から招かれる場合もある。
警察学校には教場棟や管理棟、寮舎のほか、都道府県により規模や有無が異なる部分もあるが、概ね射撃場、武道場、体育館、講堂、運動場、プールなどが設置されている。
一部の警察本部では、射撃練習場が警察学校にしか設備されていないことから、射撃練習の為現場の警察官が日帰りまたは短期(通所または寮に滞在)で警察学校にやってくる場合がある。
管区都道府県所在地
(市区町村)
北海道警察学校札幌市南区真駒内南町5丁目1番7号
函館方面分校函館市
旭川方面分校旭川市
釧路方面分校釧路市
北見方面分校北見市
東北管区青森県警察学校青森市大字新城字天田内130番3
岩手県警察学校盛岡市青山1丁目17番1号
宮城県警察学校名取市愛島笠島字東台17番地
秋田県警察学校秋田市新屋勝平台9-2
山形県警察学校天童市大字荒谷字下川原820
福島県警察学校福島市蓬莱町1-1-1
警視庁警察学校(東京都)府中市朝日町3丁目15-1
関東管区茨城県警察学校東茨城郡茨城町大字上石崎字大高4667番地の4
栃木県警察学校宇都宮市若草2-3-76
群馬県警察学校前橋市元総社町805
埼玉県警察学校さいたま市北区植竹町1-804
千葉県警察学校東金市士農田28番地1
神奈川県警察学校横浜市栄区桂町22-2
新潟県警察学校新潟市西区小新西2-21-1
山梨県警察学校甲斐市西八幡4422-3
長野県警察学校長野市松代町西条3929
静岡県警察学校藤枝市下之郷1685-1
中部管区富山県警察学校富山市向新庄町8丁目2-46
石川県警察学校金沢市錦町6-104
福井県警察学校福井市荒木新保町5-9
岐阜県警察学校関市希望ケ丘町1番地
愛知県警察学校春日井市廻間町703番地
三重県警察学校津市高茶屋4丁目36番9号
近畿管区滋賀県警察学校大津市御陵町72-4
京都府警察学校京都市伏見区深草塚本町官有地
大阪府警察学校交野市東倉治4-7-1
兵庫県警察学校芦屋市朝日ヶ丘町40番10号
奈良県警察学校奈良市今市町585
和歌山県警察学校和歌山市木ノ本1445番地
中国管区鳥取県警察学校鳥取市伏野46-5
島根県警察学校松江市西浜佐陀町582-2
岡山県警察学校岡山市玉柏2756
広島県警察学校広島市南区霞1丁目3-53
山口県警察学校山口市仁保下郷1459番地
四国管区徳島県警察学校徳島市論田町中開52-5
香川県警察学校高松市郷東町587-138
愛媛県警察学校伊予郡松前町大字西古泉646
高知県警察学校南国市大嚶b1555番地の1
九州管区福岡県警察学校福岡市中央区平和5-14-1
佐賀県警察学校佐賀市日の出1丁目20-14
長崎県警察学校長崎市小江原5丁目1-1
熊本県警察学校熊本市渡鹿4丁目2-1
大分県警察学校大分市大字福宗2301-4
宮崎県警察学校宮崎市天満町6番1号
鹿児島県警察学校鹿児島市坂元町784番地
沖縄県警察学校うるま市石川3402
都道府県警察の警察官に採用された者は先ず、警視庁警察学校または道府県警察学校(以下、「都道府県警察学校」の項において「警察学校」という)に配属され、初任科生として一定期間の研修を命じられる。立場的にはまだ見習い警察官で現場へ出ることはほとんど無い(例外として、大規模な警備事案の際に後方支援(雑用)のために出動した事例もある。日本航空123便墜落事故や、あさま山荘事件など。)が、巡査の階級に任じられ、採用された当日から法律上の身分は警察官となる。それに伴い、都道府県の条例に基づき俸給額が決定され、採用当日から支給される。
警察官に採用された者は、入校式が執り行われた後、初任科の教養を受ける。採用時期は、採用人数の多くない警察本部では他の県職員と同様に4月に年1回、そうでないところでは採用試験の時期や成績により適宜の時期に、それぞれ採用される。したがって、後者の都道府県にあっては年間に複数回、採用された者の入校の時期に合わせて初任科教養が開始されることになる。初任科教養の期間は採用区分で異なり、大学卒業相当で採用された者(警察官I類・A種など。呼称は都道府県により異なる)は6ヶ月間、短期大学、高等学校等卒業程度で採用された者(警察官II類・III類・B種など)は10ヶ月間である。採用区分により、初任科教養の期間のほかに現場研修や初任総合科教養の期間にも違いがある(後述)。
制服や警棒・手錠・拳銃・警察手帳などの装備品は、都道府県の条例に基く員数が採用・入校時点で支給または貸与される。これらは職務を遂行するにあたり必要な装備なので、全て無償であり、警察学校での研修を終えた後も、条例に定める使用期間の終わらない装備品については現場で使用し続け、最初の期間満了で初めて交換となる。それ以外の、術科で使用する体操着・武道着や、テキスト・参考書籍類などの中には、個人負担となるものもある。
警察学校入校中は、地方公務員法(昭和25年12月13日法律第261号)第22条第1項に規定する「条件附採用」の期間とされ、その間に成績不振、素行不良などの事由があれば免職され、または条件附採用の期間終了後に正式採用されない場合もある(事件を起こせば“元警察官”としてマスコミネタになる)。なお、大卒程度の警察官にあっては同項本文の規定により6ヶ月間の初任科教養修了後に正式採用されるが、大卒以外の警察官にあっては、同項後段により初任科教養期間中は条件附採用の期間が延長される。
初任科教養では、警察官としての基本の心構えや一般教養、警察実務(警務、捜査、警備、交通など)・職務遂行に必要な法学(刑法、刑事訴訟法、警察法、警察官職務執行法など)などの理論の他、拳銃操法・武術・教練・部隊(集団)活動などの実技を学ぶ。また、体育実技の授業も行われ、警察官として必要な体力の養成も図られる。教場での実務や法学の教養を「座学(ざがく)」、実技の教養を「術科(じゅつか 発音は“じゅっか”)」と呼ぶ。
教養科目のうち、公安警察に関する項目については、警察が日本共産党やその関連団体だとみなした団体について、同党の過去における破壊活動とみなした事実及びその当時(この辺りの詳細は「所感派」を参照のこと)から党綱領が現在まで改められていないことを根拠に「依然として暴力革命路線を執り続けている」との見解をもっており、同党の綱領や決定について、極めて批判的な見解で講義がなされている。
武術に関しては、逮捕術を全員履修するが、その他柔道・剣道・合気道(合気道は女性警察官のみ)などの中から1?2科目を選択履修する場合や、あらかじめカリキュラムで指定されたいくつかの武術を全員が履修する場合などがある。どちらのケースでも、卒業までに初段以上を取得することが推奨ないし義務付けされている。都道府県によっては、昇段試験で行われる試合の結果により段位を判定するために、必ずしも全員が初段位を取得できるとは限らないため、段位の取得が卒業の要件とはされていない場合もあるが、昇任試験の内申には段位が考察項目となっているため、卒業後も段位まで到達しないと後の昇進に影響することがある。なお各都道府県警察組織内で段位認定を行うことがほとんどであり、柔道なら一般的な講道館、剣道なら全剣連といった全国的な組織による認定段位とは異なるため、後に事務手続きにより移行を行う者もある。
拳銃操法に関しては、警察官等けん銃使用及び取扱い規範(昭和37年5月10日国家公安委員会規則第7号)第14条に定める「けん銃の安全規則」を暗誦させるなど、安全管理については特に厳しく指導される。射撃の腕前についても訓練が行われ、試験で一定水準の成績を残すことを求められるが、射撃の成績の不振のみを理由に卒業が認められないということはない。
警察学校に特有の術科として、先述のけん銃操法以外では、出動服(機動隊の制服として一般に知られている制服)やジュラルミン製の大盾などの装備を着装して暴動や違法デモを鎮圧する為の部隊行動等を訓練する「警備実施」や、出来るだけ犯人を死傷させずかつ警察官自身の受傷を防止しつつ逮捕するための技術である先の「逮捕術」が挙げられる。
教養期間中の数日間、警察署での実務研修が行われる場合もある。実際に交番等において、現場の警察官に付いて職務を見学・実践するというものである。ただし、身分はあくまで警察学校の学生であるし、職務上必要な知識等を十分には有していない状態なので、実務研修中は指導役の警察官の職務を見学するか、その指示により手伝い程度の仕事をすることが主な役目となる。
これ以外に、社会人としての教養を高めるため、外部の各界から講師を招いて講演が行われたり、華道・茶道・手話・英会話など警察実務と直結するものではない講座などが行なわれたりする。また、課外の余暇時間を用いて部活動を行なっている学校もある。
警察学校では、入校時期と採用区分により、学生を「期」と呼ばれるグループに分ける。多くの場合、入校順に数字を「期」の前に付し、それらを「初任科第○○期」と呼称する。1つの期をさらに、小隊規模の(30人)の小グループに分け、それらを「××教場」「××班」と呼称する。教場や班の名に冠する「××」には、担任教官の姓名や番号など、都道府県により異なる名称が入る(小規模県警では、期を教場ごとに分けない)。警察学校入校中、学生は教養や寮生活のあらゆる場面でこの期・教場を1つの単位として行動することとなり、他の期・教場と競争し切磋琢磨しながら学んでいく。警察学校の教養課程を修了し現場に出た後も、苦楽を共にした同期・教場の結束は“同じ釜の飯を食った仲間”と長期にわたり持続する。