認証官(にんしょうかん)とは、日本国においては、官職への任免(任命と免官)をするに当たって天皇による認証が必要とされている官吏のことである。形式的とはいえ宮中で天皇から直接認証されるためその地位は重要なものとされる。日本国憲法第7条第5号において「天皇による官吏の任免の認証」が国事行為の一つとして定められており、具体的にどの官職が認証官に当たるのかについては憲法または個別の法律(例:内閣法、宮内庁法など)において規定される。日本国憲法の施行に伴い廃止された公式令(こうしきれい、明治40年勅令第6号)の規定の例に倣い、任命の認証をする書面を「官記」と、免官の認証をする書面を「辞令書」と呼ぶ。
目次
1 概要
1.1 新内閣発足時の親任式と認証官任命式の間隔
2 認証官の一覧
2.1 行政
2.2 司法
3 辞令の書式
4 過去に存在した認証官
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認証のための儀式は「認証官任命式」といい、認証を要する官吏を任命する必要が生じる都度、原則として皇居「正殿 松の間」にて行われる(皇居以外では、昭和天皇が静養先の那須御用邸で計31日、葉山御用邸で計12日、須崎御用邸で計2日、認証官任命式を行った例がある)。
同式では天皇(又は摂政若しくは国事行為臨時代行)の面前で、任命権者(内閣総理大臣等)から御璽の押された官記が伝達され、天皇から認証官一人一人に対し「重任ご苦労に思います」との言葉がかけられる(勅語を賜る)。このとき認証を受ける者は直答(「はい」等の返答)をしないで黙礼するのが慣例である。
なお、認証官任命式が執り行われるのは任命の場合のみであり、免官の場合は宮中への参内はせず、後刻内閣官房から辞令書を受領するだけとなる。
認証官の「任免」(任命と免官)をするのはあくまで憲法や各根拠法に規定された任命権者(内閣など)であり、天皇はその「任免の認証」をするだけである。
一方、内閣総理大臣と最高裁判所長官の二つの職だけは、任命に先立つ「指名」は前者は国会、後者は内閣からなされるものの、「内閣総理大臣に任命する」又は「最高裁判所長官に任命する」旨の任命行為は天皇が行う(当然認証の意味も含む)形となっている。このため、この二つの職についての宮中の儀式は「認証官任命式」でなく「親任式」と呼ばれており、内閣総理大臣と最高裁判所長官は認証官には含まれない。なお、大日本帝国憲法下では親任式で任命される官吏の区分呼称は「親任官」とされたが、現憲法下では式の呼称としては「親任」の文字が残ったものの官職の区分としての「親任官」は用いられないため、内閣総理大臣と最高裁判所長官を一括して「○○官」で表す区分呼称は存在しない。(報道等では「親任式」と「認証官任命式」を併せて俗に「皇居での認証式」などと表現することがあり、また「親任官」の表現が使えないこともあって、内閣総理大臣と最高裁判所長官が認証官に含まれるとの不正確な認識を生む一因となっている。)親任官の呼称は、日本国憲法が施行された1947年(昭和22年)5月3日以降は原則使用されなくなった。大蔵省、外務省、農林省では(周知徹底が不十分であったため)国内出張旅費支給に関する省令や訓令の条文中に「親任官」表記を含む規定が残されたが、いずれも同年7月7日に「認証官以上の職に在る者」という表現に改められたため、現憲法下の官吏に対する「親任官」表記の使用は同年7月6日限りで正式に消滅したものと認められる。ただし、直接的な行政権の行使でない場面においては、その後も宮内府・宮内庁が新年祝賀の告示文中などに「親任官」の表記を用いるという例もあったが、1951年(昭和26年)6月16日付け官報の皇室事項欄掲載の「皇太后大喪儀」(貞明皇后の葬儀)の式次第に関する報告を最後に使用されなくなった。なお、旧憲法下において親任官であった者への恩給など、過去の官吏に言及する場合については、当然のことながら今なお立法・行政・司法の公的な場で「親任官」の表現は使用され得る。
次節「認証官の一覧」での説明にあるとおり、定員が複数である認証官(国務大臣、検事長、特命全権大使、特命全権公使、高等裁判所長官)は個別の所属官署(補職内容)を特定しない「大枠の」官名としての認証のみが天皇の国事行為とされている。したがって、例えば新聞辞令などで事実上総務大臣を命ぜられることがほぼ確定している新閣僚であっても天皇は「国務大臣に任命する」部分のみの認証をしているのであり、高松高等検察庁検事長の後任になることが分かり切っている新検事長であっても天皇は「検事長に任命する」部分だけを認証している。このため、認証官任命式後に、当該閣僚・官僚等をどの省庁・官署に配属(補職)するかは任命権者の自由であり、例えば総務大臣を務める国務大臣を外務大臣に閣内異動させる場合や、広島高等裁判所長官を務める高等裁判所長官たる裁判官を大阪高等裁判所長官に配置換する場合のように官記上の官名に変動がない横滑り人事異動の場合は、天皇による新たな認証は行われない。ただし、副大臣については府省を特定した官名での官記であるため、内閣改造等で財務副大臣を務める政治家が内閣府副大臣になるような場合は(世間一般の認識では横滑りと受け取られがちであるが)、その都度新たに認証を受けることが必要となる。中央省庁再編前の政務次官は認証官ではなかったが、同再編後の副大臣は認証官に格上げされており、国家行政に参画する政治家の地位は高まったとされる。これに対し各府省庁の官僚の最高位である事務次官は認証官とされていない。自衛隊の統合幕僚長や陸海空の幕僚長などを認証官にすべきとの議論もある。
日本国憲法下において新たに内閣総理大臣が指名された場合、多くの例ではいわゆる組閣作業を済ませてから親任式、次いで認証官任命式を行うが、この場合は両式の間におおむね1時間程度の準備時間が生ずる。憲法第71条の規定により、前内閣(職務執行内閣)の全閣僚は親任式における新総理任命の時点でその地位を喪失するため、認証官任命式での新国務大臣の任命・認証までの約1時間は厳密には総理以外の国務大臣が不在状態となる(註)が、宮中にとどまっている(総理が事務的作業を控える)ため、総理が自らに対して(空位となっている)各省大臣の臨時代理や委員長・長官・特命担当大臣の事務取扱の発令はしないのが慣例である。ただし、組閣作業未了で親任式だけをまず行った場合(つまり一旦宮中を出て官邸で組閣作業後に宮中に戻って認証官任命式を行う場合)は、その間の措置として総理が自らに各省大臣の臨時代理と委員長・長官・特命担当大臣の事務取扱の発令をすることで行政権の空白を生まないようにすることとなっている。そのような臨代・事取の一斉発令の事例としては、期間の長いものでは片山内閣(親任式1947年5月24日、認証官任命式同年6月1日)が、短いものでは羽田内閣(親任式1994年4月28日午前8時55分、認証官任命式同日午後6時15分)などがある(一人内閣参照)。