胃切除術(いせつじょじゅつ、英 : gastrectomy )は胃の一部もしくは胃全体を切断し取り除く手術的治療法である。おもに胃の腫瘍のほか、胃潰瘍、胃の損傷などに対して行われる。
主に全身麻酔で行われる手術で、切除範囲により胃の部分切除と全摘出に大別される。通常手術時間、出血量ともに多くはなく、手術としては中規模の手術といえ、輸血の必要性も少ない。術後に出現する障害として特有の症状が知られており、胃切除後症候群と呼ばれている。 近年では腹腔鏡下手術も行われるようになっている。
目次
1 対象となる疾患
2 歴史
2.1 胃切除術の黎明
2.2 胃癌の治療方法として
2.3 内科的治療の進歩と胃切除術
3 手術
3.1 切除範囲
3.2 手術の手順
3.3 胃切除後の再建法
3.4 縮小手術
3.5 手術時間・出血量
3.6 手術の危険性と合併症
4 手術後
4.1 術後の経過
4.2 手術後の障害
5 議論が分かれる項目
6 年表
7 脚注
8 参考文献
9 外部リンク
//
対象となる疾患
胃潰瘍
十二指腸潰瘍
胃穿孔(胃潰瘍によるものや外傷による損傷など)
胃の腫瘍(内視鏡的切除が不可能なもの)
胃癌
胃悪性リンパ腫
GIST
胃の肉腫
などである。変わったところでは減量のためにこの手術を受けたサッカー選手のディエゴ・マラドーナの例がある。
健胃会が2002年に行ったアンケートでは、胃切除術を経験した126名中、原因となった疾患は
胃癌 : 72%
胃潰瘍・十二指腸潰瘍 : 22%
(『胃を切った仲間たち』より簡略化して引用。詳細は参考文献を参照) となっており、胃癌がトップとなっている。ただしこの数字は2002年中ではなく、2002年までに胃切除術を受けた人が対象であることに注意されたい。
胃の手術の歴史は古く、消化器外科手術のうち最も長い歴史を持つと言っても過言ではない。1879年、フランスのジュール・ペアン ( ⇒Jules P?an) が、1880年、ポーランドのルドヴィク・リディギエール ( ⇒Ludwik Rydygier) がともに胃癌に対して幽門側胃切除を試み失敗している。初めて胃切除術に成功したのはドイツのテオドール・ビルロートで、これも胃癌に対して行われた幽門側胃切除であった。1881年のことであった。同年リディギエールが消化性胃潰瘍に対し幽門側胃切除を行っている。いっぽう、胃全摘を初めて行ったのはスイスのカール・シュラッターで、1897年である。また、日本においては1897年(明治30年)、近藤繁次が日本初の胃切除を成功させている。
第二次世界大戦後、周術期の患者管理の進歩、自動吻合器の発明、抗生物質の普及などさまざまな要因により外科手術の成績は飛躍的に向上した。このことを背景に胃癌手術においては拡大手術が主流となる。一方、1980年代よりとくに早期胃癌を対象に縮小手術が試行され始めた。これは手術後の治療成績に関するデータが蓄積されてきたことと手術後の生活の質(QOL)の向上、医療経済の面からの要請が大きい。
現在では胃・十二指腸潰瘍に対して待機手術として胃切除術が施行されることは激減している。ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬の発明、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌といった内科的治療法の進歩により手術を要するほど重症、難治性の消化性潰瘍は少なくなったからである。潰瘍が出血や穿孔を起こした場合も内視鏡的止血が進歩したこと、手術方法も穿孔部の閉鎖術が第一選択になったことから緊急の胃切除を必要とする症例は減少している。