翼型(よくがた、英: airfoil, aerofoil, wing section など)とは、翼の断面形状のこと。揚力や抗力の発生と密接な関係があり、この形状が翼の性能を大きく左右する。翼形と表記されることもある[1]が非常にまれ。翼型
目次
1 形状
2 用語
3 揚力の発生
3.1 よくある誤解
3.2 剥離を防ぐ形状
4 さまざまな翼型
4.1 理論的な翼型
4.2 NACA翼型
4.3 スーパークリティカル翼型
4.4 超音速領域に適した翼型
4.5 無尾翼機・全翼機の翼型
5 現実の翼における翼型
6 参考文献
7 関連項目
8 外部リンク
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一般によく挙げられる翼の断面形状は、前縁が曲線的で後縁が鋭くとがった形状をしている。このような形状をしている理由は「効率よく揚力を発生させるため」と説明することができる。ただ単に揚力を発生させるだけならば単なる板でも、回転する円柱でもかまわない。しかしこのような形状の場合、抗力が非常に大きくなるため、実用には耐えない。
現実にはレイノルズ数やマッハ数によって理想的な翼型は異なる。いわゆる「一般的な翼型」は人間がよく使用する航空機におけるレイノルズ数(Re > 106程度)の範囲、かつ亜音速領域(マッハ数 M < 0.8 程度)において適した翼型と言える。例えばレイノルズ数がきわめて低い虫の飛翔などにおいては昆虫の翅のように薄い翼の方が、超音速の領域においては前縁がとがっているレンズ翼やダイヤモンド翼の方が有利であることがわかっている。
用語
翼弦(chord, コード)
前縁 (leading edge, L.E.) と後縁 (trailing edge, T.E.) とを結ぶ線分。翼弦の長さは翼弦長(chord length, コード長)という。
迎角、迎え角 (angle of attack, AoA)
一様流の方向と翼弦とのなす角のこと。文字はα(アルファ)が使われることが多い。
キャンバー (camber)
翼弦と中心線の差。一般的にキャンバーといえば最大キャンバーのことをいう。
前縁半径
前縁に接するような円の半径のこと。
揚抗比 (lift-to-drag ratio, L/D)
揚力を抗力で割った値。理論的には揚力係数/抗力係数 (CL/CD) で求めることも多い。この値が大きいほど優れた翼型であるといえる。しばしば L/D(エルバイディー、エルパーディー、エルオーバーディー)とも呼ばれる。
いわゆる一般的な翼型では前縁が曲線的で後縁が鋭くとがっている。このような翼型を若干の正の迎角をつけて一様流の中においたとする(キャンバーがあれば迎角はなくともよい)。このとき、翼上面を流れる流れは翼下面を通る流れより長い距離を通ることになる。従って後縁には翼下面の流れが先に到着し、後縁を回り込み翼上面へ向かう。粘性がある実在流体の場合、翼上面に向かう点での逆圧力勾配により流れは剥離し、翼後方へ渦となって放出される。一方、翼周りにはこれと大きさが同じで回転の向きが逆の循環が発生する。一様流と循環の速度ベクトルが合成されることにより翼上面には一様流より速い流れが、翼下面には遅い流れが発生し、後方のよどみ点は後縁に移動する。
ここで流れに対してベルヌーイの定理を適用すると、速度が増加(減少)しているところでは圧力が減少(増加)していることがわかり、これにより翼の各面に働く圧力を計算できる。圧力は面に対して垂直に働くが、そのうち一様流に対して垂直な成分を翼全面にわたり積分することにより揚力が、流れに対して平行な成分を積分することにより抗力(圧力抗力)が算出される。実際には、これに摩擦応力による影響が加わる。
また揚力はクッタ・ジューコフスキーの定理を利用すると、発生した循環の大きさをΓ(ラージガンマ)、一様流の速度を U、流体の密度をρとして、単位長さあたりρUΓの大きさで一様流に垂直な方向に働く、と表現することもできる。
一方、流線曲率の定理を使って考えることもできる。
揚力の発生について以下のような説明がされることがあるが、誤りである(特に太字部分)。
翼は上面が緩やかにカーブし、下面は直線的となっている。翼の上下に分かれた流れは、後縁において同着しなければならない(または、する)。従って、より距離の長い翼上面の流れが加速され、気圧が下がり揚力が発生する。
翼の後縁で鋭いエッジを流れが回り込めず渦が生じ上面の流れが加速される。
一般的な翼型では前縁が曲線的で後縁が鋭くとがっている。また、翼の分厚い部分は前方に寄っている。これは流れが剥離しないように圧力勾配の正負を配慮したものである。翼面の前半部では、上流の方が下流よりも圧力が大きい順圧力勾配(圧力勾配が負)となっているため流れは安定である。一方、翼面の後半部では下流に進むにつれて圧力が大きくなる逆圧力勾配(圧力勾配が正)となっているため流れが不安定で、翼面の傾斜を緩やかにしないと流れが剥離しやすい。翼が全面的に剥離し、翼本来の機能を果たせなくなった状態は失速と呼ばれ、迎角が大きすぎる場合と同様に翼の不適切な設計も失速を招く。失速を避けるために近代的な飛行機の翼やプロペラなどはすべて後半部は緩やかな面となるように設計されている。ほとんどの翼で前縁が丸い理由は、何らかの理由で迎角が適正値から大きくはずれた場合でもすぐには翼の全面で剥離が起きないように配慮されているためである[2]。
同様の理屈は内部流れである縮小・拡大管路についても言える。たとえばエアインテイクやベンチュリ管、アフターバーナーや超音速風洞などでも、やはり圧力勾配を考慮した拡大/縮小率となっている。
すでに解かれている円柱周りにおける完全流体の流れを座標変換することにより、翼型の性能を算出しようとする考え方がある。