この項目は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
緊急避難(きんきゅうひなん)とは、緊急事態に際して取られる行動のことを言う。本稿では特に法律用語としての緊急避難を中心に解説する。
目次
1 一般用語としての緊急避難
2 法律用語としての緊急避難
2.1 刑法上の緊急避難
2.2 民法上の緊急避難
2.3 国際法上の緊急避難
3 関連項目
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一般用語としての緊急避難は、災害時などに安全な場所へ退避することをいう。自治体が指定する「緊急避難場所」などがその使用例である。また、やむを得ずに、とりあえずの措置として行われるもののことを緊急避難という言葉で表すことがある。例えば、「緊急避難的な措置として…」といった具合である。
法学における緊急避難とは、急な危険・危難を避けるためにやむを得ず他者の権利を侵害したり危難を生じさせている物を破壊したりする行為であり、本来ならば法的責任を問われるところ、一定の条件の下にそれを免除されるものをいう。刑法、民法、国際法においてそれぞれ意味が異なるので、以下、個別に検討する。
日本の刑法
刑事法
刑法
刑法学 ・ 犯罪 ・ 刑罰
罪刑法定主義
犯罪論
構成要件 ・ 実行行為 ・ 不作為犯
間接正犯 ・ 未遂 ・ 既遂 ・ 中止犯
不能犯 ・ 相当因果関係
違法性 ・ 違法性阻却事由
正当行為 ・ 正当防衛 ・ 緊急避難
責任 ・ 責任主義
責任能力 ・ 心神喪失 ・ 心神耗弱
故意 ・ 故意犯 ・ 錯誤
過失 ・ 過失犯
期待可能性
誤想防衛 ・ 過剰防衛
共犯 ・ 正犯 ・ 共同正犯
共謀共同正犯 ・ 教唆犯 ・ 幇助犯
罪数
観念的競合 ・ 牽連犯 ・ 併合罪
刑罰論
死刑 ・ 懲役 ・ 禁錮
罰金 ・ 拘留 ・ 科料 ・ 没収
法定刑 ・ 処断刑 ・ 宣告刑
自首 ・ 酌量減軽 ・ 執行猶予
刑事訴訟法 ・ 刑事政策
刑法における緊急避難は、人や物から生じた現在の危難に対して、自己または第三者の権利や利益(生命、身体、自由、または財産など)を守るため、他の手段が無いためにやむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、やむを得ずに生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合には犯罪とはならない(違法性が阻却される)というものである。刑法37条1項本文に規定されている。
もしも生じてしまった損害が避けようとした損害よりも大きければ情状によって刑が減免されうるに過ぎない。これを過剰避難(かじょうひなん)といい、刑法37条1項但書に規定されている。
以下、緊急避難の概念を、具体例を挙げて説明する。
船が難破して乗客のAとBが海に投げ出された。そこに一人ならつかまって浮いていられるが、二人なら沈んでしまう程度の大きさをした舟板が流れてきた。この板につかまって救助を待つよりほかに助かる術は無い。二人はこの板につかまろうとしたが、AはBを蹴り離して溺死させ、その後Aは救助された(いわゆる「カルネアデスの板」)。
Aが道を歩いていると、鉄パイプを持った暴漢に突如として襲われた。Aは逃げたが追いつめられ、仕方が無いので赤の他人であるBの家へ勝手に侵入し、ここに隠れて難を逃れた。
心臓発作を起こし路上で倒れたB。通りかかったAが救急車を呼ぶ一方で閉胸心臓マッサージを施したが、余りに強く押したのでBの肋骨にひびを入れてしまった。(=応急手当)
Aの行為は、通常ならば殺人罪や住居侵入罪、過失傷害罪として罰せられる。しかしこれらの行為は、生命身体という正当な利益が危険に晒されており、その危険を回避する手段が他に無いためやむを得ずしたものである。そして、生命身体への侵害を回避したことによって生じる損害の方が小さいか少なくとも同等であるので、Aの行為は緊急避難であるとして犯罪にはならないこととなる。
この緊急避難と似た概念として刑法36条1項に正当防衛が規定されている。