研磨材(けんまざい)は、相手を削り研ぎ磨くのに使う硬い粒ないし粉で、研削材ともいう。研磨研削作業には、古くから石榴石(ざくろ石)、 エメリーなど天然鉱物が使われてきたが、19世紀末にそれらよりも硬い人造研削材が工業生産され、現在は人造品が主流である。
こまかい研磨材は磨き粉に使える。ハートの形の穴を切り抜いたゴムシートを石材に貼り、研磨材をサンドブラストすれば、その形の窪みが彫れる。結合剤を加えて研削砥石に仕上げ、グラインダーで回せば、包丁の刃こぼれをなおせる。身近なところでは、炊事用のスポンジタワシの裏側にも研磨材が入っている。不織布の研磨布紙である。
目次
1 種類
1.1 基本的な4種類と使い分け
1.2 コランダム質研磨材の種類
2 製造法
3 いくつかの仕上げ処理
4 用途
5 関連項目
6 外部リンク
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現在使われている人造研削材は、次の4種類に大別できる。
表 人造研削材の種類名称化学式修正モース硬度ヌープ硬度(kgf/mm2)密度(g/cm3)
ダイヤモンドC157000〜80003.52
立方晶窒化ホウ素BN--4500〜47003.48
炭化ケイ素SiC132500〜32003.22
コランダムAl2O3121700〜25003.99
表の ヌープ硬度は単結晶の結晶面の値で、低純度の、あるいは焼結品の微結晶コランダム質研削材の硬度は、この値より低い。
ダイヤモンドは周期表のIV族の一番上の炭素が共有結合していて、最も硬い。立方晶窒化ホウ素は炭素の左隣のホウ素と右隣の窒素との化合物で、すこし硬度が低い。なお、同じ化学式でも常圧で安定な六方晶窒化ホウ素は、固体潤滑剤に用いられる軟らかいすべすべの物質である。
炭化ケイ素は、ダイヤモンドとケイ素との「あいのこ」で、ダイヤモンドより軟らかくケイ素より硬い。コランダムはIII族とVI族との化合物で、Al3+イオンとO2-イオンとが、イオン結合している。
物質を磨き削る研磨材は硬いほどよい、となればダイヤモンド万能となるが、経済的な事情がまずある。炭化ケイ素およびコランダム質研削材の1kg当たりの価格は、ダイヤモンドおよび立方晶窒化ホウ素の1カラット当たりの価格と同じ桁である。カラットは0.2gである。
次に、ダイヤモンドと炭化ケイ素とは、鉄と鋼の研削研磨には向かないという化学的な宿命がある。磨きあるいは削る仕事は、むしる側とむしられる側との激しい接触のもとに行われ、鉄鋼は、銑鉄の組成の4.25%まで炭素を含有できるので、ダイヤモンドや炭化ケイ素の砥石で研削研磨すれば、鉄鋼は炭素を吸収し、砥石を急激に減耗させる。鉄鋼は炭化ケイ素中のケイ素も吸収する。量的に重要な相手先である鉄鋼に対しては、立方晶窒化ホウ素とコランダム質研磨材の出番となる。
表の4種類のほか、ラッピングなどの磨きの作業には、湿式に析出させた粉末状の、酸化クロム、酸化鉄II、アルミナなども使用される。
なお、立方晶窒化ホウ素がボラゾン(Borazon)、炭化ケイ素がカーボランダム(Carborundum)、コランダム質研磨材がアランダム(Alundum)と呼ばれることがあるが、それらはそれぞれを最初に工業化した会社の商品名である。
コランダム質研磨材にはいくつかの種類がある。
白色電融アルミナ
粉末のアルミナをアーク炉で融解後、冷却し凝固させ、その塊を粉砕整粒する。酸化クロムなどを加え、ピンクないしルビー色を付けたのもある。
褐色電融アルミナ
ボーキサイトをアーク炉で融解し、還元してアルミナ分を高めたのち、冷却し凝固させ、その塊を粉砕整粒する。Tiイオン、Mgイオンほかの固溶により、いくぶん強靱になる。
アルミナ-ジルコニア
Al2O3- ZrO2二元系は、たがいに若干の固溶限を持つ共晶系で、共晶点に近いジルコニア約40重量%と、ジルコニア約25%との、2種類の電融研磨材がある。共晶の微細組織を持つため、強靱である。
解砕型アルミナ
アルミナ質原料をアーク炉で融解し冷却凝固させるが、その際、粉砕機にかけずに、結晶粒ごとに解砕できるよう、工夫する。粒の破壊の起点になる傷を持たないため、減耗しにくく、精密仕上げ用砥石の原料に使われる。
焼結アルミナ
アーク炉で融解せず、粉末のアルミナあるいはボーキサイトを粒状に焼結させる。硬度は低いが、微晶の粒なので、減耗しにくい。樹脂結合の砥石にして、圧延前のステンレス鋼の傷とりに、もっぱら使われる。必要な粒度ばかりを製造できる利点がある。
研磨材用のダイヤモンドと立方晶窒化ホウ素とは、主に 静的高温高圧法で、炭化ケイ素は抵抗型の電気炉で、電融コランダム塊はアーク炉で、製造される。
そうして作った素材には、未反応原料、副産物、装置材料などの不純物が混ざるので、相応する選別、精製処理を行う。
研磨材は、数mmから数?mの範囲で数十種類の粒度に分けられた粒体ないし粉体であるから、大きい素材は、そのサイズに応じて階梯的に、各種の粉砕機で細かくしてゆく。細かい粒度の粉砕では、たとえば、コランダム質の粉をつぶすのにコランダム質のライニングとアルミナ質ボールとのボールミルを使う、というような汚染防止もできるが、それに先立つ粗い粒はほとんど鉄鋼の刃板の粉砕機で粉砕するので、混入する鉄分を除去する工程が、付帯的に必要となる。磁力選別、酸洗などである。
研磨材の重要な性状のひとつは、粒度の正しさである。粒度がずれていると削る作業の勝手が狂う。粗い粒が混入していると、磨く表面に致命的な傷をつける。
炭化ケイ素およびコランダム質研磨材につき、[JIS R6001:1998 研磨材の粒度]は、径約4mm強から径約50?mまでの「粗粒」の範囲で26段階、径約50?m強から径約3?mまでの「一般研磨材用微粉」の範囲で11段階、径約60?mから径約1?m強までの「精密研磨用微粉」の範囲で18段階、の粒度を定め、それと別に、「JIS R6010:2000 研磨布紙用研磨材の粒度]は、径約2mmから径約60 ?m強までの研磨布紙用研磨材「粗粒」の範囲で15段階の、粒度を定めている。