異教(いきょう)とは、二つの宗教または宗教教派が存在するとき、両者の「関係」について規定する概念である。二つの教派が、教義・信仰原理・神学思想・崇拝対象・宗教儀式等の内実の比較において、共通するものを殆ど持たないか、共通する内容を持つが、異なる宗教であると考えられるとき、この二つの宗教または教派は、相互に「異教関係」にあると云う。 ⇒古代ケルトの犠牲台岩 (Austria)
バシリカ聖堂の広場に現在位置する
目次
1 概説
1.1 民族宗教と世界宗教
1.2 シュンクレティズム
1.3 分派と異端
1.4 異教関係
1.4.1 成立的に自明な異教関係
1.4.2 分派過程の蓄積における異教化
1.4.3 シュンクレティズムの異教関係
1.4.4 グノーシス主義
2 ペイガニズムと異教
3 関連項目
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宗教の起源には諸説がある。地域的で民族に固有な宗教と、広い範囲に布教され、民族や国家や言語を越えて人間であれば誰でも信徒となれる宗教がある。前者を通常、民族宗教と云い、後者の広い領域に広がる宗教を世界宗教または普遍宗教と云う。
原始宗教が地域宗教や部族宗教となり、更に民族宗教として統一され、民族宗教が特定の民族を超越して、他民族や多様な地理的領域に布教拡大するとき、世界宗教となるとも言える。
原始宗教や部族宗教、民族宗教は、互いに地理的に接触することが普通で、このことから、ある宗教が他の宗教の教義や信仰原理、神学や宗教神話、あるいは崇拝対象としての神や霊格や宗教原理を模倣したり取り入れたりすることが起こる。
このような教義や宗教思想や神話や信仰対象の取り入れが大規模に起こり、二つあるいはそれ以上の宗教のあいだで、どちらの宗教とも付かない両方・複数の宗教の要素を併せ持った宗教が成立するような事態を「シュンクレティズム」という。習合はシュンクレティズム(シンクレティズム)の一種である。
世界宗教は通常、シュンクレティズム過程を経て成立することが一般である。民族宗教が世界宗教へと自己超越する契機は他の宗教との競合や融和や神学の導入などで、シュンクレティズムの結果として世界宗教が生まれるとも言える。
キリスト教はユダヤ教を母体としてヘレニズムにおけるシュンクレティズムによって生まれたものであり、イスラム教はアラブ族の民族宗教がユダヤ教・キリスト教・マニ教等の要素を導入して大規模なシュンクレティズムによって成立したとするのが妥当である。また仏教は、原始仏教段階では地域宗教であったが、ヘレニズムにおいて大乗派が成立するにおいて世界宗教となったと言える[要出典]。
宗教では同じ宗教内部で、信仰や神学の違いから「分派」が生じるのが普通である。宗教が自己発展過程で自然的に分派を生み出す場合もあるが、多くの場合、分派の形成にはシュンクレティズム過程が関係する。
宗教内部において分派が成立するとき、分派間でイニシャティブの争奪が起こることがある。このとき、古くからの伝統を継承すると称する分派が自己の教派を正統とし、争う相手の分派を異端とする事態が生じることがある。宗教が改革される場合、改革された新しい分派が自己を正統とし、旧弊な分派を異端とする場合もある。異端と正統は相対的な関係にある。
シュンクレティズム過程で新しい教派・分派が生まれたとき、この分派は異端とされることがある。しかし、シュンクレティズムの程度によっては、新しいシュンクレティズム宗教は、最初から自己は、元の諸宗教とは異なる「異教」だという自覚を持っていることがある。異教の自覚や認識には、様々な要因が関係する。
二つの宗教あるいは宗教教派が「異教関係」にあるということは、分派間の立場の相違や、異端と正統の争いのなかで、分派を相互に比較すると、事実上、信仰原理や教義・神学などにおいて、別の宗教と見なす方が正しい場合に、両者は異教関係であるという。
地理的伝統的に独立して成立した原始宗教や民族宗教などは、分派とか異端という概念以前に、自明的に「異教」であると認識されるのが通常である。
例えば、日本の神道と古代ギリシアの宗教は、自明的に異教関係にある。また地理的に近接していても、原始キリスト教やその後継のキリスト教は、西欧領域に布教されて行くにつれ、古代ギリシアやゲルマンやケルトの固有の民族宗教と出会い、これらと宗教的に争ったが、分派であるとか、異端であるという考えは、争い合った宗教相互で発想的にも起こらなかった。それらは互いに異教関係であることは自明であった。ただし、キリスト教が西欧の公認宗教となって以降、ゲルマン・ケルトや古代ギリシアなどの宗教要素などを取り込んだキリスト教の分派に対し、異端とする例は存在する。(これらは、後述するペイガニズムと関連する)。