環論
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環(かん、ring)とは、加法と乗法と呼ばれる二つの二項演算によって定まる代数的構造を備えた代数系である。環の代表的な例として、整数全体のなす集合に対し普通の意味での加法と乗法を考えたものがあげられる。環の性質についての研究体系を総称して環論(かんろん)といい、おおまかに可換環論と非可換環論に分けることができる。特に可換環論は代数幾何学整数論における直接の応用を持つが、環という代数的枠組みは数学のほとんどの分野で様々なかたちで広く利用されている。
目次

1 定義

2 例

3 環についての諸概念

3.1 部分環

3.2 イデアル

3.3 環上の加群

3.4 環の準同型

3.5 積に関する構造

3.6 幾何的な描像


4 関連項目

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定義

環 R とは、加法と乗法とよばれる二つの二項演算を付与された集合で、加法 + についてアーベル群であり、更に乗法 * に関して任意の R の元 a, b, c が次の性質を持つものである。
結合法則
a * (b * c) = (a * b) * c
分配法則
a * (b + c) = (a * b) + (a * c)
右分配法則
(a + b) * c = (a * c) + (b * c)

乗法演算の記号 * は普通省略されて、a * b は、ab と書かれる。

更に R が乗法の単位元 1 を持つとき、すなわち R の任意の元 a に対して、a * 1 = 1 * a = a

を 1 が満たすとき、 R は単位的環(ユニタリー環、ユニタル環)と呼ばれる。単位的環のみに興味がある文脈ではしばしば「環」が「単位的環」をさす言葉として用いられている。

R が乗法について可換であるとき、すなわち R の任意の元 a,bがa * b = b * a

を満たすとき、 R を可換環という。可換でない(あるいは、は可換性を仮定しないということを強調する場合の)環を非可換環という。可換環のみに興味がある文脈ではしばしば「環」が「可換環」をさす言葉として用いられている。

環の加法や乗法に関する定義からの直接的な帰結として、整数における計算と同じようにして

任意の元aについてa0 = 0a = 0

乗法の単位元が存在するならばそれは一意に定まる

単位的環において 1 = 0 ならば、その環にはたった一つの元しか含まれない

乗法の単位元が存在するとき -a = (-1)a

(-a)(-b) = ab

などが成り立っている。




環論の歴史的な動機付けとなった例として整数代数的整数のなす環があげられる。

有理数全体の成す集合 Q、実数の全体の成す集合 R あるいは複素数の全体の成す集合 C はそれぞれ環をなす。実際、それらはでもある。

n を正の整数とするとき、 n をとする整数の集合 Z / nZ は環である(この記法については、以下の剰余環を参照)。

閉区間 [a, b] で定義されるすべての実数連続関数のなす集合 C[a, b] は環(さらに実数体上の多元環 )をなす。演算は関数の各点での値ごとに関する加法と乗法で入れる。すなわち、関数 f(x) および g(x) の和と積は、次のような値をとる関数として定義される。(f + g)(x) = f(x) + g(x)(fg)(x) = f(x)g(x)

係数をある環 R に持つ多変数の多項式全体の集合 R[x1,x2,...,xn] は環をなす。

A を環、 nを自然数とするとき、 A に係数を持つ n 次の正方行列全体の集合 MnAは(一般には非可換な)環をなす。

G がアーベル群(可換群)であるとき、 G の自己準同型全体のなす集合 End(G) は、加法を値ごとの和(関数の場合と形式上同じもの)で、乗法を準同型の合成によって定義することで一般には非可換な環をなす。。

S を集合とするとき、 S のべき集合 P(S) は次のようにして環になる (A, B ⊂ S):





これはブール代数の例である。


環についての諸概念

以下、R は乗法について可換とは限らず、単位元 1 を持つ環とする。


部分環

R の部分集合 S が単位元 1 を含み、加法や乗法について閉じているとき、S は部分環だといわれる。

R の元のうちでほかのどんな元との積も可換になっているようなものを集めた集合 Z(R) はRの中心とよばれる。Z(R) は R の可換な部分環になっている。


イデアル

R の部分集合 I が加法について閉じていて、x ∈ R, y ∈ Iならば xy やyxがかならず I に入っているとき、I を両側イデアルという。イデアル I が与えられているとき、x - y ∈ I で R に同値関係を定義することができる。されに同値類の間に自然な演算を定義できて、環になることが分かる。この環を R の I による剰余環といい、R / I と書く。


環上の加群

環Rに対し、R上の加群の概念が定式化される。とくに体上の加群とはベクトル空間のことになる。環Rはそれ自身 R 上の加群と見なすことができるが、イデアルとはRの部分加群だということになる。


環の準同型

環 R1 から環 R2 への準同型 f とは、
f(a + b) = f(a) + f(b)

f(ab) = f(a)f(b)

f(1) = 1'

が成り立つような R1 から R2 への写像のことである。ここで、1 は R1 の単位元、 1' はR2 の単位元をそれぞれ表している。準同型 f が全単射であるとき、同型(写像)と呼び、R1 と R2 は同型であるという。準同型のはイデアルになり、次の準同型定理が成り立つ;R1 / Ker f と Im f は同型である。

Aが可換環で f(X) が A に係数を持つ一変数多項式だとする。A を係数とする一変数多項式環 A[X] の、f(X) によって生成される単項イデアル (f) による商を R とすると、R から A への環準同型を考えるということはAにおけるfの根を考えることと同値になる。


積に関する構造

a が逆元を持つとき、すなわち aa-1 = a-1a = 1 となるような a-1 が存在するとき、a を単元あるいは可逆元という。 環 R が与えられたとき、R の単元の全体は R の乗法について群をなす。これを R の単元群と呼び、R× または R* のように書かれる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:Smilegreen